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マーフィーの法則というのがある.30年ほど昔,アメリカでベストセラーになった本のタイトルだ.今ではアメリカ人に限らず,世界中の多くの人が知っている.小説や雑誌のコラム欄で,「マーフィーの法則によれば」とか「マーフィーの法則のとおり」という言い回しに出会った方は多いと思う.しかし,どの辞書にも,教科書にもマーフィーの法則とは何かについての記載はない.ベストセラーになった初版本の最初に出てくるのが,If anything can go wrong, it will.(失敗する可能性のあるものは,失敗する)というもので,マーフィーの法則の基本原則である. 出かけようと思ってドアに鍵をかけたとたん電話が鳴り,あわてて電話まで駆けつけると,とたんにベルは鳴りやんだり,久しぶりに車を洗ったら雨が降り出したり,私自身が,俺の人生はマーフィーの法則そのものではないかと何度思ったかしれない.「ほかの列の方が早く進む」とか,「別の列に移動すると,元いた列の方が早く進む」などは,身近なところではスーパーのレジでしょっちゅう経験しているし,高速道路でレーンを変える都度味わわされている.たまに外国へ出かけると,出入国のパスポート審査窓口で何度も経験している.いつもくじ運の悪い私は,しようがないこれは俺の運命だとあきらめていたが,違う,これは宇宙の大原則だったのだ. 「会議時間は,参加者の2乗で長くなる.」や,「会議の効率は,参加者数と討議に要する時間に反比例する」などは,思わず笑い出したくなるほど当(的)を得ている.モーゼの十戒をもじって,第十一戒汝会議をするなかれという表現もある.もっとも委員になりたがらない人物が委員長にさせられる,という記載もあり,へ〜あれもマーフィーの法則だったのかと感心させられる. 日本の言葉に,「降れば土砂降り」というのがある.きっとマーフィーの法則にもあるに違いないと探したら,あったあった,マーフィーの法則に対するザイマージの第7例外という副題付きで,When it rais, it poursというのがあった.降れば土砂降りそのものではないか. マーフィーの法則は皮肉やジョークを込めた格言集と言ってもいいかもしれない.それでは,なぜこれらを「マーフィーの法則」と呼ぶのだろうか? この言葉の生い立ちはアメリカ,カリフォルニアのエドワード空軍基地で働いていたエンジニア,エドワード・マーフィー大尉であると信じられている.生みの親は科学者の端くれだったのだ. あの陽気なアメリカ人に,何故このような悲観論者が生まれたのか不思議でならない. |
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(子) |