要 約
9歳齢,日本猫,去勢雄に食欲廃絶,嘔吐,粘膜蒼白,右腎領域の疼痛が認められた.単純X線検査で胸腔内尾側に腫瘤が認められ,右腎は腫大していた.排泄性尿路造影検査では,右腎の造影効果は認められなかった.第10病日に右腎の切除,胸腔内腫瘤の切開生検を実施した.右腎頭側は腫大し,胸腔内腫瘤は黒味を帯びたやや硬いものだった.病理組織学的に右腎と胸腔内腫瘤は類似しており,ともに血管肉腫と診断された.症例は第15病日に状態が急変し,死亡した.剖検は実施されず,死因および詳細な腫瘍の病態は特定できなかった.本症例では腎臓領域の腹部触診による疼痛および血液一般検査による非再生性貧血が認められており,同様の症状を呈する症例では腎臓の血管肉腫を考慮する必要があると考えられた.
―キーワード:猫,血管肉腫,腎臓.
------------------------------日獣会誌 61,377〜381(2008) |
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