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原 著

国内の狂犬病組織培養不活化ワクチン接種犬の
抗体保有状況とワクチン接種後の抗体応答

安田博美1)†   山中盛正1)   江副伸介2)   大森崇司3)   草薙公一3)
西條加須江4)   瀧川義康4)   天野健一5)

1)(株)微生物化学研究所(〒611-0041 宇治市槇島町24-16)
2)(財)化学及血清療法研究所(〒860-8568 熊本市大窪1-6-1)
3)日生研(株)(〒198-0024 青梅市新町9-2221-1)
4)(社)北里研究所生物製剤研究所(〒364-0026 北本市荒井6-111)
5)松研薬品工業(株)(〒184-0003 小金井市緑町5-19-21)

(2006年11月30日受付・2007年8月3日受理)

要   約

 不活化狂犬病ワクチン接種犬における抗体応答を中和試験によって検討した.試験には2005年に東京都,静岡県,岐阜県,京都府,宮崎県および熊本県で飼育されていたワクチン接種犬100頭と未接種犬25頭の合計125頭のペア血清を用いた.過去1年間にワクチン接種歴のある犬100頭のうち90頭が有効抗体価25倍以上の中和抗体を保有しており,8倍以上の抗体価を有する個体の幾何平均抗体価(geometric mean titers; GMT)は251倍であった.このような犬にワクチンを追加接種すると,1カ月後には全頭の抗体価が25倍以上に上昇し,GMTは750倍に達した.いっぽう,今までに接種経験のない25頭にワクチンを接種すると,23頭が中和抗体を産生したが,2頭からは抗体が検出されなかった.ワクチン接種1カ月後の抗体価は8倍未満から256倍に分布し,GMTは43倍であった.これらの成績により,ワクチン接種により確実な免疫を付与し,それを維持するためには,現行の接種プログラムである年1回の追加接種が重要であると考えられる.
―キーワード:狂犬病不活化ワクチン,中和抗体価,血清学的調査,ワクチン接種.

------------------------------日獣会誌 61,311〜314(2008)

 

† 連絡責任者: 安田博美 (株)微生物化学研究所)
〒611-0041 宇治市槇島町24-16
TEL 0774-22-4518 FAX 0774-24-1407
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