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学術・教育

─ 獣医学博士取得のすすめ(その2) ─
学位取得者からのメッセージ

三宅陽一(帯広畜産大学畜産学部教授)

先生写真 昨年,著者は本誌の第60巻第4号(242〜243頁)に『獣医学博士取得のすすめ』と題した原稿を寄せ,それが掲載された.その主旨は[1]獣医師免許を与えられた技術者がその職域でさらに技量に磨きをかけて社会的に認知されることは獣医界にとって重要な課題であり,そのためには科学者でもある獣医師が「博士」という一段高い免許を取得する必要があることを問うたものであった.また,[2]個々の獣医師にとって学位を取得することが,取得に至るまでの過程も含めて,そのモチベーションの昂揚に効果的であるとともに,臨床や公衆衛生分野における学術の向上に大いに貢献できる人材が養成されることを示した.さらに,[3]研究材料は足下にいくらでもころがっていて,成功あるいは失敗に関わらず常に「疑問」をもつ姿勢が求められることを強調した.
 とはいってもこのお題目・気合いだけで,学位が取得できるはずがない.そこで,第60巻第5号からは国内の獣医系大学に設置されている10大学院の関係者に依頼して,それぞれの大学院でどのようにして学位の取得が可能なのか,それぞれの大学での受け入れの条件,さらには大学院での研究に従事して学位を取得することがどのような意味をもっているか,これまでにどのような学位取得者を輩出しているか,それぞれの大学院の特徴や目標をアピールしていただいた.5号では山口連大,6号では麻布大,7号では日獣大,8号では酪農大,9号では岐阜連大,10号では東大,11号では北里大,12号では大阪府立大,第61巻第1号では北大,そして最後に2号では日大からの紹介が掲載されている.
 この連載は「現在どのような仕組みで学位が取得できるか」という多くの獣医師がもっている疑問に答えるものとなったものであり,幸いなことに,それぞれの大学院に課程博士の募集要項の取り寄せや論文博士としての学位取得の問い合わせが幾つか舞い込んでいると聞いている.是非とも,これを機会に多くの獣医師諸兄が学位所得の準備を始められることを大いに期待したい.
 しかし,大学からの一方的な情報だけでは,学位取得の持つ意味や苦労や喜びの軌跡,その成果は直に触れることはできない.そこで,これまでに獣医系の大学院で課程博士として,あるいは論文博士として学位を取得された獣医師に登場いただいて自らの体験,学位取得の意味等について原稿を寄せていただくことにした.幸い,既に数人の博士(獣医学)の学位を取得した獣医師諸兄から原稿が寄せられ,準備は整っている.そして,その中で学位を取得することによって,仕事に自信が持てるようになり,仕事の幅と関連世界が大きく拡がったこと,学位取得とはとんでもない苦労を伴うものであるが,達成感に満ちあふれた一大事業であること等が生々しく語られている.さらに自らの経験を後進の指導の糧として活用し,学位の取得を勧めたいという意気込みは,これから学位取得に挑戦しようとしている獣医師諸兄の励ましとなるものと期待したい.どうか,『獣医学博士取得のすすめ』第2弾連載シリーズ,「学位取得者からのメッセージ」を楽しみにしていただきたい.

 


† 連絡責任者: 三宅陽一(帯広畜産大学畜産学部獣医学科臨床獣医学講座)
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