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解説・報告

農場管理獣医師協会について(その2)
農場管理獣医師協会が展開する食肉生産情報認証
システム事業の特徴

北村直人(日本獣医師会顧問・農場管理獣医師協会会長)

先生写真 1 は じ め に
 前回は農場管理獣医師協会の概要について,理念と目的,実施する事業,会員及び人事,初年度の事業計画等を報告した.
 今回は農場管理獣医師協会が展開する食肉情報認証システム事業の特徴について報告する.その前に日本獣医師会の産業動物臨床部会(部会長近藤信雄職域理事・岐阜県獣医師会会長)に設けられている個別委員会「第1回食の安全を担う産業動物臨床検討委員会」が開催され農場管理獣医師協会から中村陽二先生が委員に就任し冒頭,私から概要を,詳細について中村委員から説明し,日本獣医師会として検討を開始したことを報告する.

 2 食肉生産情報認証システムの特徴
  1. システム購入や加入料等の初期費用がない.
  2. データはインターネット経由でSVRのサーバーに蓄積するのでデータ保守が万全であるうえ,インターネットを使用する環境があれば全国どこでも利用が可能である.
  3. サーバーへの接続は各人に割り当てられたIDとパスワードでセキュリティが確保される.しかし,農獣協会員で農場の管理を行う獣医師(農場管理獣医師)は自己の管理する農場すべてにアクセスできる.
  4. システム内の牛のデータ管理は牛トレサビ法の個体識別番号を使用している.農場が識別センターHPから「自農場のデータをダウンロード」することで,そのデータをそのまま「3sdbnシステム」に取り込め,個別に個体情報を入力する必要がない.
  5. 農場で牛の出生や導入,出荷等の移動があっても上記のデータ取り込み機能と移動チェック機能で常に識別センター登録情報と「3sdbnシステム」の記録情報を一致させることができる.
  6. 牛トレサビ法の個体識別番号で管理しているため牛が売買され,飼養場所の移動があってもデータの継続が可能である.
  7. 入力作業は農場管理獣医師と農場がすることを前提に極力簡素化してある.例えば,薬品はあらかじめ薬品名と休薬期間,要指示の有無をマスターファイルに登録しておく.飼料は給与ステージごとにメニューを作成しておき,メニュー名を入力すればメニューにある飼料原料が個体の情報に反映すること等である.
  8. 肉牛の場合には薬品使用や飼料給与は群もしくは牛房単位で行われることが多いので,個体別の入力のほか牛舎,牛房単位で一括入力ができる.
  9. 「3sdbnシステム」を利用するには必ず農場と農場管理獣医師が対でなければならないが,その理由は正確で信頼できる情報を蓄積するためである.農場と農場管理獣医師が共同で適正な飼養管理を行い,さらに入力する情報について農場管理獣医師の点検を受けることで間違いのない情報の蓄積ができる.
  10. 農場管理獣医師は動物用医薬品指示書作成システムを無料で使用できる.
  11. 農場は健康管理証明書付き牛肉をそれぞれでブランド化することも可能であるし,既存のブランドにこれまでにない「安心」を加えてブランド価値を高めることができる.
  12. 個体ごとの薬品使用歴と飼料給与歴が明確であるので生産情報公表牛肉JAS,ポジティブリスト制度への対応が可能である.
  13. 消費者に対しては小売店頭に農獣協が認証した「FMVA健康管理証明書」を掲示し,“安心・安全”をアピールする.
  14. 小売店はインターネットを介して農獣協が認証した「FMVA健康管理証明書」を直接印刷できる.
  15. 消費者は「FMVA健康管理証明書」に記載のない詳しい農場情報を農獣協のHPで閲覧できる.
  16. 農場は消費者向けのHPを農獣協の用意するスタイルでSVRのサーバーに低価格(3万円程度)で開設できる.
  17. 農獣協の課す利用料金は農場に対して管理料として70円/頭/月であり,出荷までの合計は多くても2,500円程度である.
  18. 農獣協の課す健康管理証明書の発行料は牛肉卸売業者に対して1頭当たり3,000円であり,枚数に関係なく定額である.
  19. 農場から小売店の店頭に健康管理証明書を提示するまでにかかる費用の合計は5,000〜6,000円であり,生産側,流通側でおおよそ半々の負担となるが,シール等をパッケージに貼り付けする費用より低額である.
  20. 農場管理獣医師は農獣協から農場管理料と健康管理証明書発行料のうち一定額の還付を受けられる.
《関連ホームページ》
農場管理獣医師協会
URL : http://www.svr.3sdbn.com/fmva/index.html
E-mail : bwz15489@nifty.com 「FMVA」で検索可
〒367-0035
埼玉県本庄市西富田大久保山1011-3
V207号
TEL・FAX 0495-23-7777
下記は見本用の健康管理証明書の発行準備済み個体識別番号である
1175405492 1203809308 1204132429
1208490525 1208811290 1209037279
1209037293
3sdbnシステム
URL : http://www.svr.3sdbn.com/svr/
E-mail : nccet@nifty.com

 3 ま と め
 以上,農場管理獣医師協会の概要と食肉生産情報認証システムの特徴とを二回に分けて報告した.これをキャッチコピー風にいえば「獣医師が安心の絆を農場から消費者へ」ということである.しかし,これに取り組んでも牛肉が高く売れるという保障は残念ながら今のところない.
農場管理獣医師協会は昨年12月に臨時総会を開催して,社団法人に準じた取扱いがされる民法上の権利能力なき社団(人格なき社団)の条件を備えた組織に衣替えし,日本獣医師会の産業動物臨床部会個別委員会で検討され,日本獣医師会の事業となるまでの間,コンプライアンスを重視し消費者,生産者,流通業者,動物,環境及び地域社会との共存を理念として掲げ,日本獣医師会,地方獣医師会,行政及び関係各機関と連携し会員相互の情報を共有,交換することを目的として普及啓発して行く覚悟である.会員諸兄のご理解とご意見を賜れば幸いである.

 


† 連絡責任者: 北村直人(日本獣医師会)
〒107-0062 港区南青山1-1-1
TEL 03-3475-1601 FAX 03-3475-1604