聴性脳幹誘発電位による聴力推定で中耳炎と内耳炎が
診断された咀嚼筋萎縮を併発した犬の1例
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川崎安亮1)† 池田耕夫2) 三好宣彰1) 坂本 紘1)
1)鹿児島大学農学部獣医学科(〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-24)
2)鹿児島県 開業(〒890-0016 鹿児島市新照院町28-7)
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(2006年11月27日受付・2007年6月7日受理)
要 約
重度の咀嚼筋萎縮を呈した犬(ウエルシュコーギー,雌,3歳7カ月齢)において,CT検査および聴性脳幹誘発電位(BAEP)検査により片側性の中耳炎および内耳炎が診断された.外耳炎の既往歴がないことから,咀嚼筋萎縮による嚥下困難に起因するものと推測した.聴力をBAEPで推定したところ,患側の閾値上昇は健側に比べて20dB上昇し,各波の頂点潜時は健側に比べて明らかに遅延していた.90dBHL刺激音圧では,I
- III および I - V 頂点間潜時(IPL)は健側刺激に比べて患側刺激で短縮し,強度-潜時曲線の傾きはV波では患側で明らかに増大しており,人の内耳性難聴に類似の所見が得られた.本症例は中耳炎による伝音難聴だけでなく,前庭障害の症状は認められなかったものの,内耳炎の併発による蝸牛レベルでの感音難聴も引き起こしていたと考えられる.
―キーワード:聴性脳幹誘発電位,内耳炎,中耳炎.
------------------------------日獣会誌 61,145〜149(2008) |
† 連絡責任者: |
川崎安亮(鹿児島大学農学部獣医学科基礎獣医学講座生理学分野)
〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-24
TEL
・FAX 099-285-8715
E-mail : kawasaki@agri.kagoshima-u.ac.jp |
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