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行事等報告

「2006年度牛臨床寄生虫研究会・北海道シンポジウム」の開催

本好茂一(帝京科学大学生命環境学部教授・牛臨床寄生虫研究会会長)

先生写真  牛産業(酪農と肉牛)の分野で,その生産性の向上を目指して牛の寄生虫病対策を対象に発足した牛臨床寄生虫研究会の活動は,本研究会の前身の牛寄生虫病対策研究会の活動を含め今年で9年目を迎えた.牛臨床寄生虫研究会の主催で,2006年度牛臨床寄生虫研究会・北海道シンポジウムが2006年11月9日(木)に札幌市で70人前後の参加者により開催されたので報告する.
  シンポジウムは,第1部・山根義久先生(日本獣医師会会長,東京農工大学教授)の「日本の畜産と生産獣医療を考える」と題した基調講演に始まった.
 第2部では教育講演として,[1]「寄生虫感染と消化管粘膜の免疫病理」堀井洋一郎氏(宮崎大学教授),[2]「乳用牛:駆虫プログラム実施による,子牛の下痢大幅改善効果についての考察」臼井 章氏(北海道獣医師会),[3]「乳用育成牛:タイレリア汚染牧野における,アイボメックトピカルとバイチコールのサンドウィッチ投与による予防効果について」(山科秀也氏(北海道農業開発公社十勝育成牧場長)の3題の発表が行われた.
 本研究会の対象は,疫学関係,牧野における問題,舎飼いにおける問題,臨床と基礎との関係,といった大きく4つに類別できる.
 今回の教育講演も,疫学を除くカテゴリーから1つずつ演題を決めて臨床現場に携わる先生方に情報提供を行ったところである.
教育講演終了後に福本真一郎氏(酪農学園大学教授)の司会のもと,総合ディスカッションが行われ,大学人,家畜保健衛生所,農業共済団体及び開業獣医師が各分野の観点から 共通の問題点として,コクシジウムの臨床現場の問題,コクシジウムの基礎的な考察,子牛の全般的な下痢問題と対応策,そしてピロプラズマ症に関連したマダニ・対応策関連等々が活発に論議された.本研究会のシンポジウム活動は臨床現場の獣医師が自由闊達に発表論議できる状況があること,そして日本独自の生産獣医療についての提案があり,新しい方向付けが感じられた.それは,『病気→個体→群』といった従来の獣医師の視点の対極にある,『群管理→個体管理→病気コントロール』といった生産者と一緒に取り組む獣医師の視点があったからである.



† 連絡責任者: 本好茂一(帝京科学大学生命環境学部)
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