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会長挨拶

新 年 の ご 挨 拶

社団法人 日本獣医師会
会長 山 根 義 久
 
山根会長写真 恭賀新年
 会員の皆様におかれましては,ご家族お揃いで希望ある新しい年をお迎えのことと心からお慶び申し上げます.
 例年の毎く,新年を迎える度に身の引き締まる思いがいたします.昨年も今年こそはとスタートしたつもりでしたが,多事多難でありました.
 ここ数年,国民を震撼させたBSEは,一応の小康状態となったとはいえ,昨年も強毒性の高病原性トリインフルエンザが発生しました.しかし,お陰様で関係各位の御努力により最小の被害で忽ちのうちに終息宣言にまで至りましたことは大いに安堵するところであります.さらに,大変記念すべき嬉しいこともありました.わが国に明治21年に発生して以来,養豚産業に多大なる被害をもたらしてきました最重要疾病の一つであります豚コレラの撲滅が達成され,国際獣疫事務局(OIE)の規約により,本年4月1日に我が国は清浄国に認定されました.本疾病は,昭和44年に速効性と安全性に優れた豚コレラ生ワクチンが開発,実用化されたことを契機にその発生は激減し,清浄化に至った次第です.この清浄化を記念し,昨年9月に(社)全国家畜畜産物衛生指導協会をはじめ,(社)日本獣医師会,さらに(社)日本動物用医薬品協会,(社)日本養豚協会の四団体で豚コレラ清浄化記念大会を盛大に開催したところであります.その席上で,本会が農林水産大臣より感謝状を授与されましたことは,誠に栄誉なことであり,かつ,これまで豚コレラ撲滅活動に関係された獣医師をはじめ,行政当局,農業団体,生産者の御尽力の賜であると厚く御礼を申し上げる次第です.
 一方,食に対する安全・安心の確保につきましては,これ程までに社会より注目をあつめたことは無かったのではないかと思います.
 その背景には,新聞紙上やテレビ等を通じて報じられてきた中国の生鮮食品の残留農薬等の問題をはじめ,国内では今年に入ってからでも白い恋人をはじめミートホープ,比内地鶏の偽装,老舗赤福や吉兆さらに不二家における捏造等は枚挙にいとまがない程であります.因みに,農林水産省への食に対する告発は一気に増え,2007年も6月〜9月は前年同期の2.7倍に当たる1,241件に達し,食品等による製品の自主回収も,本年1月〜9月で昨年一年間の2.2倍の527件に上がっていることが報じられています.これでは国民は何を信じてよいのか戸惑うのは当然といえます.このような背景を考える時,食の安全・安心に関与することの多い獣医師の責務は大なるものがあり,また,一方で獣医事審議会における獣医師の行政処分の増加傾向を考える時,痛切に獣医師という職責の重さを感じるところであります.
 昨年も各地区大会により決議された多くの改善・改革の要望書が日本獣医師会に提出されてきました.しかし,日本獣医師会には何等許認可権はないことを考える時,その解決のためには以下のような対応が必要不可欠かと思います.
  1. 行政サイドへの説明と理解
     獣医事の多くは,農林水産省をはじめ厚生労働省,文部科学省,環境省のいずれとも関連があり,問題解決のためには一省庁のみの理解では無理なことがあり,四省庁の共通理解が必要不可欠となります.そのような背景のもと,効率的な獣医事推進のために,はじめての試みとして関係四省庁の担当責任者である課室長を一同に会し,日本獣医師会とで昨年9月18日に「獣医師需給対策等に係わる関係者懇談会」を開催し意見を交換し,相互理解を深めた次第です.お陰様で意義ある会議になりました.今後も定期的に開催し理解を深める必要があるかと思います.
  2. 国民(納税者)への対応と理解
     また,国の税金を使っての獣医学術振興をはじめ各般の獣医事の問題解決には,先ず納税者(国民)の理解も重要です.例えば,何故,獣医学教育の改革・充実が必要かを国民に理解していただかないことには,獣医学系大学の再編は不可能であります.10月7日に日本獣医師会主催で東京都庁広場でWVAのイベントWorld Veterinary Dayの一環として開催しました2007“動物感謝デー”in Tokyoでは多くの市民参加のもと盛大に開催することができました.国民の理解を得るこのような努力は,是非とも継続したいものであります.各会員獣医師会におかれましても地域の協力のもと地方での開催を希望するものであります.
  3. 政治サイドへの説明と理解
     次いで,何を行うにも政治家の先生の理解を得ることも重要であります.そのためには日本獣医師政治連盟を盤石の体制にし,獣医師問題議員連盟との関係を密にし,理解と支援をしていただくことが肝要かと思います.一昨年よりお陰様で議員連盟総会を2回開催していただき,獣医事問題を説明し,ご理解を求めたところであります.
  4. 獣医師及び獣医師会サイドの意識改革
     以上,行政や国民,政治サイドの理解を深めることは必要不可欠でありますが,何と言っても重要なことは我々獣医師(会)サイドがしっかりとしたストラテジーを持つことが肝要かと思います.
 現状に横たわっている多くの課題の一つに,喫緊に対応を求められる事項として公益法人制度改革があります.日本獣医師会をはじめ各会員諸士,それぞれ状況は異なるかと思いますが,目的は公益法人の職能団体として今後とも広く公益活動の推進を通じ,社会に貢献することであります.そのためには我々自身が意識改革のもと現状の体制を見直す必要があります.日本獣医師会も重要課題の一つとして,その目標に向かって最大限努力する所存です.
 また,文部科学省の発表によると国公私立を問わず複数の大学が合同して新学部を設立することが可能になるようです.我々はこの機会をチャンスと捉えて,獣医学系大学の再編を目指し,獣医学系大学とともに行動を展開する必要があります.
 いずれにしましても,時代の流れに対し的確かつ,俊敏に対応する必要があります.このことは,獣医師需給問題にも大きく関与することであり,後世に禍根を残すことがあってはならないと思います.さらに,動物看護師制度や学校獣医師制度に向けた対応の推進,さらには狂犬病予防体制の見直し等,社会に役立つ方向での解決が求められます.
 複雑化する社会の中で獣医事問題の改善・整備発展のためには,会員諸士の団結と共通した認識が必要不可欠であります.どうかこの新しい年が皆様の努力により意義ある一年になりますことを期待して,新年の挨拶といたします.