7月参議院議員の選挙があった.その結果はご存知のとおりだが,それについての論評はここでは避けたい. ただどうしても腑に落ちないことがあるので,些か触れておきたい.実は,参議院は良識の府といわれるように,衆議院と性格も機能も異る筈なのに,近頃は政党化し,理の論理が数の論理に変わりこれが気に入らない. そもそも参議院の前身は,明治23年帝国議会の一院として設置された貴族院で,当時の議員構成は,皇族,公候爵全員,伯子男爵の互選による者,勲功者・学識者から勅任された者,これに全国多額納税者から互選された者を加えた各界の識者で構成されていた.それが戦後昭和22年新憲法で今の参議院になった.そして議員も全国区と地方区に分けて,国民の直接選挙となったが,近年比例代表制なる制度が導入され,間接選挙まがいの政党化が顕著になり,実より名が売れていれば有利だ. そして貴族院もそうだったが,衆議院とは一線を画し独立性が保障され,解散もなく衆議院の牽制役の筈だ.先の郵政民営化法案の否決は,結果的にはこの立場の現れだったが,政党色が強かった.衆議院のコピーで参議院不要論もある.今回の与野党逆転で元の姿になるか. 世界を見ると,隣の韓国や北欧諸国は一院制であり,二院制をとっている国でも非直接選挙制が多く,英国の貴族院は世襲任命制であり,ドイツのそれは各州の首相閣僚の経験者だといい,米国の上院も直接選挙であっても州代表の性格が強いと聞いている.日本の場合は二院とも直接選挙で珍しく,両院の位置付け性格の区分が実際上困難になっている.更に日本の両院議員の数も多過ぎる.米国の上院は下院の435人に対し100人,フィリピンの上院は下院の250人に対し僅か24人だ. そして更に困ったことに,議員も政党もなぜそんなに金が必要か,何に使うのかもよく分からない.高級飲料水を買っても5万円以下に小分けすれば,領収書添付の必要がないとか.国からの政党交付金は,赤ん坊を含め国民1人250円を負担する計算で,年間約317億円だといわれている.最近政治資金団体への寄付も減少傾向にあるものの,それでも06年,日本医師会や日本薬剤師会は,1億円を超える寄付だと聞いている. それぞれ数年前に比し半減しているというが相当な金額である.まずは先立つものは金次第ということか. さて,昨今「私の内閣」が「美しい国」づくりをする計画だったが,先月突然これが駄目になってしまった. ところで議員諸公よ,永田町の高窓から,庶民の竈の煙が見えるか.平和と豊かさのために尽力あれ.
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