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野生動物におけるカドミウム,タリウムおよび 鉛汚染の実態調査 |
佐藤 至1),3)† 辻本恒徳4) 山下竹治5) 齋田栄里奈2),3) 渡辺 元2),3)
田谷一善2),3) 世良耕一郎6) 津田修治1),3)
1)岩手大学農学部(〒020-8550 盛岡市上田3-18-8) 2)東京農工大学農学部(〒183-8509 府中市幸町3-5-8) 3)岐阜大学大学院連合獣医学研究科(〒501-1193 岐阜市柳戸1-1) 4)盛岡市動物公園(〒020-0803 盛岡市新庄下八木田60-18) 5)岩手県猟友会(〒020-0024 盛岡市菜園1-6-3) 6)岩手医科大学サイクロトロンセンター(〒020-0173 岩手郡滝沢村滝沢字留が森348-58) |
要 約
野生動物の鉛中毒は古くから知られていたが,近年はカドミウムやタリウムなどによる汚染も報告されている.このため本研究では,ツキノワグマ,ホンシュウジカ,ニホンカモシカ,トウホクノウサギおよびカワウの肝臓および腎臓のPIXE分析を行い,これらの重金属による汚染状況を調査した.カドミウム濃度はツキノワグマとトウホクノウサギの腎臓で高く,ツキノワグマで74頭中27頭,トウホクノウサギで16羽中5羽が10mg/kgを超えていた.鉛はツキノワグマとカワウで高く,5頭のツキノワグマが鉛汚染の目安となる肝臓鉛濃度の2mg/kgを超えていたが,カワウではこれを超えるものはなかった.タリウムはすべての試料で検出されなかった.これらの結果は,ツキノワグマとトウホクノウサギは比較的高度のカドミウム暴露を受けており,さらにツキノワグマでは鉛汚染が散発的に発生している可能性を示唆している.
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