【別 紙】 |
平成19年7月6日 |
地方獣医師会会長 各位 |
日本獣医師会
会長 山根義久 殿
私立獣医科大学協会
日本大学生物資源科学部長
会長 酒井健夫
日本獣医生命科学大学獣医学部長
副会長・幹事 清水一政
酪農学園大学獣医学部長
幹事 林 正信
北里大学獣医学部長
幹事 伊藤伸彦
麻布大学獣医学部長
幹事 有嶋和義
日本大学生物資源科学部獣医学科主任
幹事 佐藤常男 |
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要 望 書 |
私立獣医科大学協会は,これまで会員各校の自助努力によって獣医学教育体制の整備・充実を図り,さらに高度専門職業人養成課程としての点検・評価を怠らず,質の高い獣医学教育の確保を優先課題として対応してきた.特に近年,会員各校は臨床教育の要である動物病院をはじめ教育・研究施設の新築並びに改築に着手し,入学定員に応じた施設・設備と教員を確保するなど教育環境の改善を図ってきた.また,会員校の総意の下で平成12年から相互評価システムを導入し,教育改善を.積極的に推進することにより,社会的ニーズに応えることはもとより,国際的に通用する獣医学教育の実現に向けて努力してきた.
一方,今日のわが国における獣医師は,家庭動物や家畜の健康管理と保健衛生の向上,動物愛護と福祉の推進,畜産業並びに関連産業の振興,食の安全確保や人獣共通感染症対策の推進などに携わり,健全で豊かな国民生活を確保し,その向上に寄与してきている.この獣医師に対する社会の期待に応えるためには,需給の動向を的確に捉えた適正数と資質の高い獣医師の養成が求められている.このような事情の中で獣医師の需給は,獣医師の就業に地域間や職域間に偏在があることが明らかであり,獣医師就業の受け皿である関連機関は偏在の是正に努力するため,特に処遇を抜本的に改善し,不足職域とされる産業動物獣医師や公務員獣医師の確保に努めることが緊急の課題である.
去る3月,獣医学教育に係わる大学の入学定員の増加について政府が検討している旨の報道があったが,記者の事実誤認によるものと判明した.また,5月には,農林水産省の獣医師の需給に関する検討会報告書が公表され,この報告において今回初めて獣医師の需給の見通しについて本格的な推計が行われた.獣医師需給については,これまでに文部科学省に設置された国立大学における獣医学教育に関する協議会が平成16年7月に取りまとめた報告書の中で,獣医師の需給に関して「農林水産省による産業動物診療獣医師の需給推算では,必要獣医師数はほぼ充足しているとの結果が出ている.また,小動物分野についても,診療施設当たり,あるいは獣医師当たりの診療頭数が減少している状況にあり,養成規模を拡大すべき状況ではないとしている」とされている.
今回公表された農林水産省の獣医師の需給に関する検討会報告書においても,「新規参入する獣医師の過半数が小動物診療分野を活動分野として選択し,産業動物診療や保健衛生分野,さらには公衆衛生分野等の活動分野における獣医師の確保に支障が生じる傾向にあること等,獣医師の職域間や地域間に偏在が存在する要因や獣医師免許保有者の一定割合が獣医事に従事していない要因を分析し,必要に応じてこれを是正する取り組みを強化すべきである.」と結論づけている.現在,獣医師総数のうちに12%は獣医療に従事していないとされており,これらの獣医師免許を取得している人材を本来任務の獣医療に就業させれば,容易に解決すべきことは明白である.すなわち,獣医師の処遇の改善を図ることにより,職域偏在や地域偏在に関する問題は解決する.獣医学教育課程における入学定員の増加は,職業選択の自由の中で適切な対応とならないばかりか,ひいては獣医学教育の質的低下を招くことが危倶される.
以上,わが国において毎年新規に輩出される約1,000名の獣医師の養成規模は,国民が求める必要数を充足しており,獣医学教育においてはこれまで同様に現行の入学定員は変更せず,関係機関の協力を得て一層の獣医学教育の整備・充実に向けた努力を優先課題とすべきである.関係各位は,この点を十分理解され,私立獣医科大学に対するさらなるご指導とご支援を賜りたく強く要望する. |
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