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学術・教育

─ 獣医学における学位の取得(V)─
酪農学園大学大学院獣医学研究科獣医学専攻博士課程

種池哲朗(前酪農学園大学大学院獣医学研究科研究科長)

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 1 歴史,沿革
 本研究科のルーツは,昭和39年(1964)4月酪農学園大学酪農学部に獣医学科が増設,昭和53年(1978)の入学者から適用されることとなった修士課程2年積み上げ方式による獣医学教育6年制に対応するため設置された酪農学園大学大学院獣医学研究科獣医学専攻修士課程に遡る.その後,多様化,高度化する獣医学と関連領域の研究及び教育のニーズに応えるため博士課程が,昭和56年(1981)基礎,臨床,応用獣医学の専門分野,担当教員27名(教授17,助教授4,講師6),入学定員3名,収容定員9名,修業年限後期3年で設置された.その後学制上,昭和59年(1984)の入学者から獣医学教育が学部6年制に移行し,その完成年度の平成2年(1990)に大学院獣医学研究科博士課程における修業年限が3年から4年に,また平成3年(1991)に大学設置基準の大綱化に伴い学位の呼称が獣医学博士から博士(獣医学)に変更された以外は,順調に経過し平成18年度末で26年を迎えている.

 2 理念と目標
 酪農学園創立の基本精神に基づいて,獣医学とその関連科学を創造的に研究・発展させ,その成果を人類の福祉及び人と動物そして環境との調和と共存に寄与させることを本研究科の理念としている.本研究科は,獣医学と関連科学の研究・教育と普及活動を通して,上述の理念を実現するために以下の目標を掲げている.
 (1)本学の特色である生産動物獣医学に重点をおいた研究・普及活動の成果を進展させるとともに,基礎生命科学,疾病とその制御,診断・治療,環境・生態系にわたる学術研究分野の進歩に貢献する研究者を育成する.
 (2)独創性と新規性の高い研究成果をあげるために必要な能力を高め,その基礎となる精深な学識と高度な技術を修得し,国際的視野に立った独走的研究活動を展開しうる研究者を育成する.
 (3)獣医学と関連領域の研究・教育機関においてリーダーシップを発揮し,広く学術・文化の向上ならびに産業の発展や環境の保全に寄与する研究者及び高度専門技術者を育成する.

 3 入学試験と大学院生数
 獣医学研究科獣医学専攻博士課程,修業年限4年,募集定員3名,4月入学で例年,第1期(10月)と第2期(2月)試験が実施されているので,選抜方法,筆記試験科目,出願書類,入学検定料,ティーチングアシスタント制度,研究指導分野などの詳細は入学試験要項(入試部)を参照のこと.この他,同専攻・同課程,同修業年限,募集定員若干名,4月入学及び10月入学で,外国人留学生選考を実施している.また,平成19年度より,出願時までに獣医学とその関連分野の民間企業,官公庁,教育研究機関,団体等において正規の職員として3年以上在職し,出願時及び入学後もその身分を有し,所属する機関の長の承諾のある者を対象とした社会人特別選考を再開し2名(民間企業)の社会人大学院生を受け入れた.なお,平成19年度4月現在の大学院生数は,1年生7,2年生2,3年生6,4年生1,合計16名が在籍している(内女性8,外国2;モンゴル1,フィリピン1).

 4 研究指導分野
 専門分野として,基礎(獣医解剖学・獣医生理学・獣医薬理学・獣医病理学・獣医寄生虫学・獣医微生物学),臨床(生産動物医療学/内科学・外科学・獣医臨床繁殖学,伴侶動物医療学/内科学・外科学),応用(獣医伝染病学,獣医衛生学,獣医公衆衛生学,放射線獣医学,実験動物学,獣医毒性学)があり,27教授,13准教授,2講師が配置されており活発な研究が展開されている.各教員の研究内容,論文活動などは,毎年発行の大学院要覧と研究科年報,5年毎の学術研究動向などに公表している.最近の研究科の活動で特筆すべきは,大型の競争的研究資金『「平成10〜14年度文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業酪農学園大学学術フロンティア共同研究プロジェクト:家畜の感染病,生産病の分子・遺伝子レベルでの病態解析と診断・治療法の開発」,「平成15〜19年度文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業酪農学園大学学術フロンティア共同研究プロジェクト(継続):新興・再興感染症の近縁要因の分子疫学的,生態学的検討」,「平成15〜19年度文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業 酪農学園大学ハイテクレサーチセンター共同研究プロジェクト:環境汚染物質・感染病原体分析監視システムの開発研究」』が導入され,研究活動が活性化されていることである.

 5 課程修了認定による博士(獣医学)の学位授与
 本研究科の修了要件は,大学院に4年以上在学し,演習,研究実験,特殊講義より30単位以上を修得し,博士論文の審査と最終試験に合格することである.特に課程修了認定には,博士論文内容の全部または一部を含む投稿論文が1編以上(短報では2編以上),レフリー制度のある学術雑誌に申請者が筆頭著者の原著論文(英文)として公表済み,あるいは掲載を許可されていることが必要である.また,優れた研究業績を上げた者には3年以上の在学で修了できる修業年限短縮制度(飛び級)がある(これまで1年短縮1名,半年短縮1名).また,本研究科に所定の修業年限以上在学し,所定の単位を修得したのみで退学した者が,退学後3年以内に学位論文を提出する場合は,課程博士として取り扱われる(論文審査手数料免除,参考論文数1編以上).平成18年度修了認定した学位論文題目は,以下の9件である.
  • Total intravenous anesthesia with ketamine-medetomidine-propofol combination (KMP-TIVA) in horses
  • Studies on monocarboxylate transporter 1 (MCT1) in the gastrointestinal tract of ruminants
  • イヌの正常卵巣と卵巣嚢胞及び卵巣腫瘍における病理組織学的ならびに免疫組織化学的検索
  • 獣医学分野における遺伝子疾患のDNA診断法と適用に関する研究
  • Babesia microti グループ原虫の野生動物における疫学とヒト赤血球感染の潜在能力に関する研究
  • Monocarboxylate transporter 1(MCT1)とHigh Mobility Group Box 1(HMGB1)を腫瘍マーカーとしたイヌの黒色腫の免疫組織化学的評価法の検討
  • 外来種アライグマの内部寄生蠕虫の保有調査と群集構造の解析
  • 犬の網膜・脈絡膜の病態を解析する蛍光眼底造影検査法に関する研究
  • ウマの浅指屈筋腱のコラーゲン細線維構造

 6 論文提出による博士(獣医学)の学位授与
 学位の授与申請は,獣医学と関連分野における学歴と研究歴を有し,本学に1年間研究生として在籍し,引き続き研究生として在籍期間中に論文を完成した者なら,申請できる.ただし,獣医学,医学,または歯学の課程を卒業または修了した者とそれらの課程を経ない者の申請資格,研究歴の算出はそれぞれ異なっているので,詳細は研究科あるいは入試部に問い合わせること.
 参考論文は,レフリー制度のある学術雑誌に公表済み,あるいは掲載を許可された論文5編以上である.そのうち1編以上は,学位論文の全部または一部を含み,申請者が筆頭著者の原著論文(英文)であることが必要である.ただし,短報では2編以上である.申請者が筆頭著者でない論文を学位論文に使用する場合には,他の共同研究者の承諾書を添付することが求められる.なお,学位の授与は年4回(6月30日,9月30日,12月25日,3月25日)である.平成18年度論文提出による博士(獣医学)の学位論文題目は,以下の5件である.
  • 新しいラット完全静脈栄養モデルの作製とそれを用いた1,25-dihydroxyvitamin D3による血清カルシウム濃度上昇作用の解析
  • 牛ネオスポーラ症の血清疫学と経済評価に関する研究
  • 育成期サラブレッドのトレーニングによる有酸素運動能力及び骨塩量の変化に関する研究
  • 日本列島離島部に棲息するアカネズミ属Apodemusと線虫類の宿主―寄生体関係をモデルにした動物地理学的研究
  • 1,25-dihydroxyvitamin D3の膣内投与による乳牛の分娩性低カルシウム血症予防の基礎的研究

 7 学位授与者数と進路
 本研究科は昭和56年開設後,昭和59年3月(1984)に2名の修了生に獣医学博士号(甲第1号・酪博獣第1号と甲第2号・酪博獣第2号)を授与して以来,平成18年度(2006)後学期(平成19年3月)までに博士(獣医学),酪博獣第71号が授与されており,すべて自校出身者(外国人除く)である.なお,課程博士は平均すると年間2.7名である.一方,論文提出による博士(獣医学)酪論博獣(2007年3月まで)は,第65号が授与されているので,合計すると136名が獣医学博士あるいは博士(獣医学)を授与されており,年平均すると5.7名である.
 また,博士課程修了者(71,うち女性14)の進路内訳は,公務員16,大学教員13,小動物医療15,生産動物医療3,企業4,団体3,その他7,外国人10.学位論文提出による博士号取得者(65,うち女性8)の所属は,公務員21,生産動物医療13,大学教員11,企業9,団体4,小動物2,外国人5,出身大学別では自校33,他校25,専門学校2であり,本学の特徴が垣間みれる.外国は中国,韓国,エジプト,ザンビア,ナイジェリア,フィリピンである.

8 連  絡  先
〒069-8501 北海道江別市文京台緑町582
電  話:大  学 011-386-1111(代)
獣医学部事務室(内線4111)
入試課 011-388-4138
研究科長 011-388-4743(DI)
FAX:獣医学部事務室 011-387-5890
大学HP:http://www.rakuno.ac.jp
E-mail:入試部 rg-nyusi@rakuno.ac.jp
獣医学部事務室 rg-gakmr@rakuno.ac.jp

 


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