「モンキードッグ」なるものが現れた.猿による農作物の被害を,犬を使って防ごうというものである. 猿を見たら吠えたてて追い払うように訓練され,すでに全国各地で活躍し相当の効果をあげているという.人里で人間の顔色を窺いながら危険を侵してまで餌を漁るより,山で暮らした方がより安全と学習させるため,犬を使って山に追い上げ,反復して猿と我慢比べする. この2月頃たまたまテレビを見ていたら,たしか長野県内だったと思うが,飼い主が綱をつけた犬と一緒に,猿を追いかけて林の中を走り廻っていた.これを見たかどうか分からないが,去る3月の衆議院予算委員会で,民主党の篠原議員が農作物被害防止の質問をしていた. 犬は繋いで飼うよう規制しているようだが,こういう場合は繋留義務を免除してはどうか.現に県によっては野獣を追う場合は除外していると.これに対して若林環境相は,繋留義務は狂犬病予防法には規定がなく,自治体が危害防止のため規制しているが,飼い主が十分管理できるという条件のもとに除外規定を設けていると答弁していた.このモンキードッグになるには,飼い主の命令を聞く,人に危害を与えない,猿を撃退したら戻ってくるなどドッグスクールで訓練を受けるのだと. ところで昨年末,36年ぶりに2人が狂犬病で亡くなり,そのせいか今年の狂犬病予防注射頭数は増加傾向と聞くが,現在国内の登録頭数は約640万頭で,狂犬病予防注射頭数は約480万頭といわれているから,接種率は75%程度となり,WHOがいう70%以上には達している.しかし問題は無登録犬が同数以上いて,ある民間調査では1,300万頭を超える総数と推計する. そうとすると,無登録で潜っている犬は予防注射をしてないかも知れないから,接種率は半減してしまう.近年家庭犬は小型化し,室内で飼育されているのが殆どで,まして集合住宅になると外からは犬が見えない. 昔無登録犬を探し出すのに,新聞や郵便の配達,電気や水道の検針の人達に情報を貰ったことがあったが,今では個人情報の保護が厳しいからとんでもないことだ. 因に,登録数からみると全国平均で,約8世帯に1頭の割合で犬を飼っていることになるが,前述の推計によれば単純に4世帯に1頭は飼っている計算になる. さてこのたび日本獣医師会は,国に登録と狂犬病予防注射の推進方を提言要請している.しかし行政にそれを期待するのもいいが,逆に国からの協力依頼にどう応えるのか.獣医師会として何をすべきか,それより今何ができるかだ.もう一つ積極な指針が見えない.
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