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─獣医学における学位の取得(III)─
麻布大学大学院獣医学研究科の紹介
麻布大学大学院獣医学研究科は今,変わりつつある.21世紀の新しい時代に向けて,硬直化してきた今までの殻を打ち破り,新しい大学院の構築に向けて動き始めている.2006年春から始まった新体制の下,大学院獣医学研究科 獣医学専攻・動物応用科学専攻の新しい理念と目標づくりから始まり,大学の建学の精神である「学理を討究し,その誠実なる実践」に当たるにふさわしい優れた大学院担当教員を選抜するために,教授の大学院委員会委員への就任,再評価の厳格な運用ばかりか,エネルギー溢れる優れた准教授の活用の道も広げ研究指導の強化を図る.また,昨年末に大学院担当教授の再評価実施に踏み切り,外部の2名の評価委員の先生にも加わっていただき,教授の再評価が終わったところである.この結果にどう対処するかが今後の大学院委員会のあり様に大きく影響してくる.また,研究資金についても大学院高度化推進研究経費の大学院生分の獲得の他,従来のTA制度・RA制度のさらなる充実を図り,また社会人への門戸を開き(RAとしての採用),大学院生の生活支援,研究支援を念頭に,彼らが研究に専念できるよう研究環境の整備充実に向けて進行中である. |
名 称: 麻布大学大学院獣医学研究科 獣医学専攻・動物応用科学専攻 歴史沿革: 明治23年(1890) 麻布大学の母体となる東京獣医講習所を開設 |
研究科の理念と目標: |
獣医学専攻博士課程の教育目標と目的: |
募集定員: 獣医学専攻 第1期 10名 第2期 若干名 |
受験資格: |
入試日程: |
選抜方法: 試験は筆記試験と面接試験で,試験科目は英語,専攻しようとする専門科目(平成20年度から変更されることもある)及び小論文となる.英語は英和辞典持込可. |
入学検定料: 30,000円 初年度納入金: 1,205,500円. 2年次以降からは800,000円 |
RA制度: 本研究科獣医学専攻に在学し,建学の精神をよく理解し,人物・見識が優れ,成績優秀な学生で研究の補助業務の必要性を認識し,熱意と能力を備え,行動力のある者は,リサーチ・アシスタント制度に応募することができる.この制度は社会人入学者にも適用される. |
奨学金制度: 大学院には日本学生支援機構奨学金の制度がある.平成18年度入学者の奨学金の金額は第一種奨学金の場合,無利子で月額122,000円の支給があり,このほか第二種奨学金(有利子)もある. |
専門分野と研究指導分野: 専門分野としては,基礎獣医学健態系,基礎獣医学病態系,臨床獣医学系,応用獣医学系の4つ系があり,それぞれに5〜7科目,合計23の専門科目が用意されている.これは獣医学専攻の大きな特色となる.また,学内で開催される大学院特別講義(下記参照)や生物科学総合研究所ゼミナールのほか,学外でのゼミナールなどにも積極的に参加することによって,社会で幅広く活躍するために必要な科学に接することができるように指導している.平成18年度獣医学研究科の大学院特別講義は以下のとおりである. |
獣医学研究科獣医学専攻の専門分野・専門科目: 基礎獣医学健態系― 獣医解剖学,獣医組織・発生学,血液生理学,神経生理学,獣医生化学,分子生物学基礎獣医学病態系― 獣医病理学,病理生物学,病原微生物・ウイルス学,寄生虫学,獣医薬理学臨床獣医学系― 獣医内科学,実験外科学,臨床外科学,獣医放射線学,臨床繁殖学応用獣医学系― 家畜生産衛生学,予防衛生学,家畜感染病学,獣医栄養学,公衆衛生学,実験動物学,応用動物学 |
教 員:大学院獣医学研究科委員(委員会は平成19年度から教授と准教授で構成) |
研究内容: 専攻科目と研究テーマ(代表的なもの) 獣医解剖学―イヌの腹膜腔からのリンパの吸収機構と排導路 他3件 獣医組織・発生学― 胎生期及び出生前後の子の内分泌腺の機能的分化に関する研究 他2件血液生理学―炭酸脱水酵素アイソザイムに関する研究 神経生理学―ラット超音波発信反応を用いた情動発現機構の研究 他2件 獣医生化学―動物の体脂質の変化に関する研究 他2件 分子生物学―多能性細胞の分化における遺伝子発現制御機構の解明 他3件 獣医病理学― 飼育下野生動物やエキゾチックアニマルの感染症に関する研究 他4件病理生物学―コプラナーPCBsの次世代への生体影響に関する研究 他4件 病原微生物・ウイルス学― ブタ胸腺肺炎由来菌の分子遺伝学的解析,ネコの呼吸器病ウイルスに関する研究 他2件寄生虫学―鶏コクシジウムの薬剤耐性に関する研究 他1件 獣医薬理学―除草剤パラコートの毒性に関する研究 他2件 獣医内科学― 犬の自己免疫疾患と免疫寛容に関する研究,牛の第四胃疾患に関する研究,繁殖母豚における臨床内分泌学的研究 他5件実験外科学―先天性及び後天性心疾患の診断と治療 臨床外科学―小動物の脳神経外科内科に関する臨床学的研究 他2件 獣医放射線学―各種動物に対する総合画像診断法に関する研究 他4件 臨床繁殖学―犬の乳腺腫瘍,前立腺肥大症に関するin vitro 研究 他3件 家畜生産衛生学―畜産環境の保全に関する研究 他4件 予防衛生学― 動物におけるStaphylococcusの生態と皮膚炎発症に関する研究 他2件家畜感染病学―イヌBabesia gibsoni症に関する研究 獣医栄養学―哺乳期子牛の水分出納に関する研究 他3件 公衆衛生学― 人獣共通感染症原因菌の生態と病原因子の研究,環境中の発ガン関連物質への曝露調査法に関する研究 他3件実験動物学―腫瘍血管の病理学的特性 他2件 応用動物科学―応用動物科学専攻の学生が専攻する獣医学専攻分野 |
獣医学研究科が主催した平成18年度特別講義: 演題と講演者 [1] 乳牛の代謝・泌乳特性の解明と酪農生産技術開発への応用に関する栄養生理学的研究 小原嘉昭先生(明治飼糧(株)水戸研究牧場 研究顧問) [2] 創薬初期段階におけるin vitro 毒性試験の有用性 堀井郁夫先生(ファイザー製薬(株) 中央研究所安全性研究統括部 統括部長) [3] 哺乳類におけるゲノムインプリンティングによる個体発生制御 河野友宏先生(東京農業大学 応用生物科学部バイオサイエンス学科動物分野動物発生工学研究室 教授) [4] 人獣共通感染症としてのモノネガウイルスと研究の現状 甲斐智恵子先生(東京大学医科学研究所 教授) [5] 毒性病理学の最前線 三森国敏先生(東京農工大学 農学部獣医学科 獣医病理学研究室 教授) |
現在在籍数: 獣医学専攻1年 2人 |
修了要件: 博士課程の修行年限は4年.専攻した分野において自立的研究活動を行い,将来的にその分野の研究活動のリーダーシップを発揮できるようになることが期待される.授業科目の講義,演習及び実験をあわせて30単位以上修得し,学位論文の審査及び最終試験に合格することによって修了する.ただし,優れた研究業績を上げた場合は,3年以上の在学で修了可能.修了者には「博士(獣医学)」の学位が授与される. |
修了者の進路: 本専攻が開設されてからこれまでの修了者の進路は,次のとおり. b私立大学教員(麻布大学を含む) b国立大学教員 b地方公務員 b公的研究機関 b企業研究所 b動物臨床開業 ほか |
課程博士(獣医学)及び論文提出による博士(獣医学)の学位授与状況,外国人数: 課程博士:112名 うち外国人6名 論文提出による博士:413名 うち外国人46名 |
現在,大学院重点化大学向けての構築委員会を設置し,その活動を開始した. |
(2007年5月1日現在) |
† 連絡責任者: | 赤堀文昭(麻布大学大学院獣医学研究科) 〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71 TEL 042-754-7111 FAX 042-754-7661 E-mail : akahori@azabu-u.ac.jp |