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学術・教育

─獣医学における学位の取得(II)─
山口大学大学院連合獣医学研究科での博士(獣医学)取得

林 俊春 (山口大学大学院連合獣医学研究科研究科長)

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1 は じ め に
 本研究科では,発足以来,一般学生(学部からの進学)の他,外国からの留学生及び社会人を積極的に受け入れてきた.在学生の比率はそれぞれ25%,25%及び50%であり,社会人の院生が半数を占めている.なお,獣医師会会員の皆様は,仕事をお持ちと推察されるので,大学院に席を置き,研究を各職場で行う社会人学生を対象とした説明にさせていただいた.

2 背  景
 本大学院は平成2年4月山口大学を基幹校として構成4大学(鳥取大学,山口大学,宮崎大学,鹿児島大学)で設置され,現在までに課程博士198名,論文博士26名を輩出してきた(平成18年度現在).

3 本研究科のポリシー
 アドミッションポリシーとして,[1]豊かな人間性と倫理性を備えた社会の多方面で活躍と貢献ができる高究技術者または研究者としての明確な目的意識とモチベーションを有し,[2]目的を達成するために向上心と強い意志を持ち続け,さらにチャレンジング精神や好奇心の旺盛な院生の入学を希望している.さらに,本学が義務を負う教育は,4通りのタイプの人材を輩出することを目的としている.[1]動物の健康を通して動物及び人類の福祉に寄与する人材の育成,[2]生命科学の発展に寄与する創造的人材の育成,[3]国際的な視野から獣医学の発展に寄与できる人材の育成,[4]豊かな人間性,高い倫理性・社会性を持つ人材の育成である.

4 本研究科の特徴
 本学は4つの大学から構成されていることから次の特徴がある.西日本唯一の獣医系大学院であり,それぞれの大学の沿革と,立地条件に対応した研究内容がある.たとえば,鳥取大学では鳥インフルエンザや公衆衛生と関連した研究,山口大学では感染症診断や繁殖発生工学に関する研究,宮崎大学ではトランスレーショナルリサーチあるいは家畜生産や生活習慣病に関連した研究,さらに鹿児島大学ではBSE等の研究を含めた食の安全・安心と環境保全に関連した研究等があげられる.この4大学獣医学科の連携・協力により,これらの特色を十二分に活用し,単一の大学では達成できない多彩な教育研究に取り組んでいる.
 さらに,平成18年度から助教授(平成19年度から准教授及び講師)にも主指導教員の資格が付与されることになり,4大学総勢で59名の指導体制を整えることができるようになった.このように従来までの教授を主体とした研究指導,研究内容の制限を取り払い,若手の助教授陣を積極的に登用することにより,さまざまな研究分野に対応する準備を整えた.若手の獣医師会会員においても,年齢の近い准教授・講師の指導の下,学位を取得できる体制である.

5 入 学 方 法
 入学を希望される場合の手続きについて説明する.最初に,会社等に勤務しながら学位を取るためには相当な苦労があるので,ご家族及び勤務先での了解等が必要と思われる.そこで決心したら,まずはホームページ(http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~renju/)をご覧いただきたい.ここでは役職員等のサイトで指導を受けたい研究内容をもつ主指導教員を検索していただく.次に教員とコンタクトを取られることを勧める(連絡先は研究科事務に問合せ).そこで,教員から受け入れの承諾が得られれば,入学試験準備に入る.大学を卒業している獣医師の先生方には,ここで“いまさら入学試験とは”と思われるだろう.
 本研究科の入学試験は想像するより容易である(合格率は事務に問合せ).試験は,英語の基礎学力を問う医学辞書付き筆記試験と,これまでの研究内容(卒業論文,修士論文,研究業績,症例発表等)についての発表審査のみである.試験時期は9月と2月の2回に限られているが,平成19年度からは4月入学に加えて9月入学(9月受験合格者のみ)も選択できるようになった.

6 大学院での教育
 入学されると,各主指導教員からの研究指導に加え,さらに特別講義,特別演習,特別実験,共通ゼミナールを4年間で計30単位を履修していただくようになる.特に,共通ゼミナールは留学生を含む学生との交流及び研究テーマの進捗状況の発表を目的に3泊4日の合宿形式で(4年間で3回参加),毎年7月に開催している(4大学持ち回り).発表は3年次の学生と各担当大学の教員が行うが,基本的に英語でのプレゼンテーションや質疑応答で英語づけになる.さらに,各大学配属の学生や背景の異なる学生との交流によって研究以外の充実した数日をおくれることと思う.さらに来年度からは,社会人学生を対象とした実質的な教育の充実に努める考えであるので,勤務されている獣医師の先生方には4年間みっちりと勉強していただくことになる.

7 修了に要する条件
 学位を取得するための一番の難関が,学位論文提出時に論文2報の掲載もしくは受理されていることが必須条件となっている.論文の要件は,Pub Med,カレントコンテンツに掲載されている雑誌であること.さらに,日本語雑誌としては日本獣医師会雑誌のみ認められる.このように,本研究科では非常に厳しい要件を満たした者のみに対して学位を授与している.

8 修了1年短縮制度
 さて,授業料を1年間分だけ払わなくても学位を取れる方法がある.3年短縮と呼んでいるが,3年間で上記単位を取得し,論文2報を揃え学位論文を提出した学生には,4年目を待たずに学位を授与できる制度がある.これまでに24名の学生がこの短縮制度を使って修了していった.
 現在,手持ちの貴重なデータをまとめ,論文として発表する事は獣医学の発展に大きく貢献する事となる.その成果をもとに獣医学博士号を取得されてはいかがだろう.
現在,動物病院で勤務している社会人学生でも3年短縮での卒業を目指して頑張っている学生は多い.私どもの教員がお手伝いできることを心より期待している.
具体的内容については,研究科事務 (TEL 083-933-5936/5937)連絡いただきたい.



† 連絡責任者: 林 俊春(山口大学大学院連合獣医学研究科)
〒753-8515 山口市吉田1677-1
TEL 083-933-5936 FAX 083-933-5938 
E-mail : ag291@yamaguchi-u.ac.jp