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資 料

全国食肉衛生検査所協議会病理部会研修会(第49回)
における事例報告( II )

片 山 雅 一

千葉県東総食肉衛生検査所(〒289-2504 千葉県旭市ニ5908-3)


Proceedings of the Slide-Seminar Held by the National Meat Inspection Office
Conference Study Group(49th)Part II

Masakazu KATAYAMA
Chiba Tousou Meat Inspection Office, 5908-3 Ni, Asahi, 289-2504, Japan

(2005年6月28日受付・2006年12月1日受理)

10 牛の副腎の腫瘤
〔下ノ原 望(埼玉県熊谷食肉衛生検査センター)〕
症例:牛(ホルスタイン種),雌,78カ月.
臨床的事項:特記事項なし.
肉眼所見:テニスボール大に腫大した左副腎と,鶏卵大に腫大した右副腎を認めた.左副腎割面には髄質部分に乳白色,淡褐色を呈する柔らかい腫瘤を認め,内側から皮質を圧排するようであった.右副腎割面では髄質部分に茶褐色の腫瘤を認め,中心部は暗赤色であった.
組織所見:左右副腎髄質を占拠するように腫瘍細胞が大小の胞巣状,索状に増殖しており,充実性増殖や渦巻状配列も認めた.ほとんどの腫瘍細胞は楕円形〜紡錘形で,広狭の比較的明るい細胞質を有する細胞であり,少数の暗調に染まる細胞が混在していた.核は大小不同で円形〜楕円形で,クロマチンは粗であった.著しく大型で異型性の強い核を有する細胞も散見されたが,核分裂像はまれであった.グリメリウス染色で腫瘍組織の大部分を占める大型の明るい細胞が弱陽性,少数の暗い細胞は強陽性を示した.アドレナリン顆粒はホルマリン液中に溶出してしまうことから,大部分の明るい細胞はアドレナリン分泌細胞と考えられた.腫瘍組織中に毛細血管や静脈からなる間質が発達しており,頻繁に出血がみられた.特に右副腎腫瘍組織中には静脈の拡張や出血傾向が強かった.本例のホルマリン固定液が茶褐色に着色したのは,腫瘍細胞からアドレナリン顆粒が溶出したためと考えられた.
診断名:両側性副腎褐色細胞腫

 

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※詳しくは日本獣医師会雑誌Vol.60 No.5をご覧下さい。
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† 連絡責任者: 片山雅一(千葉県東総食肉衛生検査所 細菌検査課)
〒289-2504 旭市ニ5908-3
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