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市民参加シンポジウム
「今,狂犬病対策を考えよう」開催される
平成19年2月25日,大宮ソニックシティ・大ホール(埼玉県さいたま市)において,市民参加シンポジウム「今,狂犬病対策を考えよう」が約500名の参加者を得て盛大に開催された. 狂犬病は世界各国で今なお発生が見られ,毎年3〜5万人が死亡している.特に近隣の中国ではペットブームを背景に,近年,狂犬病がまん延し,毎年2,000〜3,000人規模の死亡者が報告されている.また,日本においては国内における狂犬病が撲滅されて50年が経過したが,昨年,フィリピン旅行からの帰国者2名が,狂犬病を発症・死亡するという事態となり,狂犬病の恐ろしさを再認識させられたところである. このような状況下,日本獣医師会では,厚生労働省の共催,農林水産省,環境省,外務省,国土交通省,埼玉県,さいたま市の後援,さらに社団法人ジャパンケネルクラブ,日本ヒルズ・コルゲート株式会社,ロイヤルカナン・ウォルサム,財団法人化学及び血清療法研究所,社団法人北里研究所,共立製薬株式会社,日生研株式会社,株式会社微生物化学研究所,松研薬品工業株式会社の協賛,そして狂犬病臨床研究会の協力を得て,平成19年度学会年次大会(さいたま)に併せ市民参加のシンポジウムを開催し,狂犬病対策の重要性について一般市民へ啓発することとした. 当日は,本会山根会長から,このシンポジウムで市民ともに狂犬病の対策を考えたい旨主催者挨拶が行われた後,パネルディスカッションへと続き,総合司会の兼島 孝氏(みずほ台動物病院院長:埼玉県獣医師会)から,パネリストである,源 宣之氏(岐阜大学名誉教授),井上 智氏(国立感染症研究所獣医科学部第二室長),高山直秀氏(東京都立駒込病院小児科部長),佐藤 克氏(佐藤獣医科院長:東京都獣医師会)が紹介された.
第1部では,源氏から,ウイルス,媒介動物等,狂犬病の総論について,次に井上氏から世界における狂犬病の発生状況について,続いて高山氏から人の狂犬病について,佐藤氏から犬の狂犬病について,各々スライドを用い,貴重な映像とともに一般市民にもわかりやすく説明がなされた. 第2部では,パネラーによる講演が行われ,井上氏から,「狂犬病を防ぐためには」と題して,狂犬病予防体制の確立の重要性が,高山氏から,「日本に侵入した場合の問題点」と題して,実際の発症例を示すとともに危機感を共有することの必要性が,さらに源氏から,「犬へのワクチンの有効性」と題して,感染源となる犬への予防注射の有効性が,佐藤氏から,「国内飼育犬のデータ」と題して,国内の犬の登録,予防接種の状況に基づく危険性が訴えられた.
最後の総合討論では,予防対策の継続,狂犬病の伝播経路,ワクチンの接種法等,会場からの質問に対し,パネラーが一つ一つ丁寧に回答された後,兼島氏から,「本日報告された,正しい知識をもって今後とも狂犬病の対策を考えてほしい.」との閉会挨拶が行われ,シンポジウムは盛会のうち終了した. なお,日本獣医師会では,本シンポジウムを収録したDVDを製作し,今後の狂犬病予防のための普及啓発に活用することとしている. |