早いもので,いつの間にか正月が終わった.今年の干支は亥,「美しい国」に猪突猛進して欲しいがどうかな. 先日呑み仲間の新年会があった.久しぶりに元気な顔が揃って,互いに久闊を謝して酔いが廻り,誰からともなく世間話に花が咲いたが,今の世相に話が及ぶと,松坂の契約金以外はどうしても暗い愚痴ばかりになった. 曰く,親子の殺し合い,いじめと自殺,増税に負担増,格差社会などなど,なんか世の中おかしくないかと. 一人がバーチャル社会を突く.子供向けのコミック本や家庭ゲームは低俗で,なかには暴力的なシーンが攻撃行動を煽る.一方テレビのドラマといえば殺人事件ものが多く人の命を売りにしている.これじゃ子供の教育にもよくないと悲憤慷慨しきり.他の一人が話を引き継いだ. 教育基本法を改正したが,理念はそれとして具体策はどうする,と政治に矛先を向けた.第10条に家庭教育,第11条に幼児教育が大事だと規定したが,言わずもがなで今更なんだと.大体今の親は子供の躾が下手だ.躾は仕付けと同意語で,前者は礼儀作法をいい,後者は着物の本縫いの前に形を整えておく仮縫いのことで,転じて何れも社会に出る前の幼児期に親が教えておくべきことだ.今の親はどうも腰が引けて厳しく育てない. 子供にものを教えるには,順序と適した時期がある.始めに,子供のとき習得しておかないと,大人になってからでは難しいもの.例えば挨拶の仕方,箸や鉛筆の持ち方などで,癖になると大人になっても直らないのだ. 次に大きくなってからの方が容易に覚えられるもの.数学も英語も学校に入ってから本格的な勉強で間に合う.真の友達付き合いも覚える.そして,学校で教えなくても自然に覚えるものもある.今のゆとり教育は失敗だと彼は蘊蓄を傾けた.これは教育の原点と共感者が多かった. 日本人の伝統的躾は,フランス人のマナーやイギリス人のエチケットというように,日本人の美徳なのだからこれを法律に書いてもどう実践するかが問題なので,果たしてこの先うまくいくか心配との意見もあり一同頷く. ここで幹事から発言,もうひがみばかり言うな,料理が余ってるぞと.しかし今度は,あっちが悪い,こっちが痛いと情けない話に変わる.そこで私から昔聞いたことのある健康十訓を披露した.即ち「少肉多菜,少塩多酢,少糖多果,小食多咀,少衣多浴,少車多歩,少煩多眠,少忿多笑,少言多行,少欲多施」を守れと.付言してボケ防止に,汗かき,恥かき,文字書きの三かきもした方がいいぞと.一同それはいいことだと納得した. 幹事は頃合いよしと閉会し,次回は花見で明るくやることにした.酔いに如月の夜風は冷たかった.
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