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日獣政連からのお知らせ

獣医師政治連盟の地方における政治活動
(狂犬病予防対策の整備,充実に関する国への意見書)

日本獣医師政治連盟幹事長 
福岡県議会自民党県議団会長 
 福岡県議会議員
 藏 内 勇 夫

 

福岡県議会代表者会議
福岡県議会代表者会議
 自民党県議団,福岡県政クラブ,緑友会・新風,公明党,自民党議員会の5会派の代表者が出席して開催される.
1 は じ め に
 日本獣医師会は,獣医師を巡る様々な問題への対応として,国の機関等へ要請活動を実施するとともに,日本獣医師政治連盟を通じて関係議員等にも支援要請している.
 このたびの国内での狂犬病発生に係る対応についても,厚生労働省との折衝,獣医師問題議員連盟総会における要請等,中央段階ではさまざまな活動が行われているが,これらの活動を実りあるものにするためには,地方においても支援活動を適切に行うことが必要になる.
 福岡県議会では,平成18年12月21日,「狂犬病予防対策の整備,充実に関する意見書」【別紙】を国(内閣総理大臣と厚生労働大臣)に提出し,狂犬病予防対策の強化を求めた.

【別 紙】

平成18年12月21日

内閣総理大臣 安倍 晋三殿
厚生労働大臣 柳澤 伯夫殿
福岡県議会議長 藤田 陽三
狂犬病予防対策の整備,充実に関する意見書
 本年11月,フィリピンからの帰国者が相次いで狂犬病を発症した.我が国では,昭和45年以来36年ぶりの狂犬病の発症だけに,世間を震撼させた.
 狂犬病は,ほ乳類動物のすべてが感染し,有効な治療法がないため,人が感染,発症すれば,ほぼ死亡すると言われている.世界では,毎年5万人程度の死亡が報告されていて,人類にとってはいまだ脅威の感染症の一つである.
 我が国の狂犬病予防対策は,「狂犬病予防法」に基づき行われてきたが,今日,犬の登録の実施率は5割,定期予防注射の実施率は4割程度にまで低下しているという.
 このため,我が国においても万一の事態が生じた場合,蔓延は避けられず,大きな社会混乱を引き起こすことになりかねない.
 よって,政府におかれては,早急に左記事項について実現が図られるよう法整備を初め所要の措置をとられるよう強く要望する.
  1.  「狂犬病予防法」に基づく犬の登録及び定期予防注射に係る自治体業務が円滑に推進されるように,自治体と各地域関係団体との地域ネットワーク体制の整備を図ること.
  2. 自治体が行う犬の登録事務に関し,現行の鑑札の装置については不備が多い.現在,動物の個体識別装置としては,マイクロチップ(MC)による個体番号管理方式が国際標準化されている.したがって,このMC化に変更し,登録の実行の確保を図る一方,他の動物関係行政における個体識別装置と一元的な運営が確保されるように所要の法整備を図ること.

 右,地方自治法第99条の規定に基づき,意見書を提出する.

 

 県議会の国への意見書は,本会議での議決を得て,ただちに県議会議長名で国の関係機関等へ福岡県の意見として伝えられる.この意見書は,私のほか5名の福岡県議会の各会派代表者が意見書案を提出し議会の承認を得たものだが,時宜に適い,効果的な地方からの支援活動であったと自負している.

2 地方議会が国に提出する意見書及び住民が地方議会に提出する請願
(1)地方議会が国に提出する意見書
 地方議会は,国に対して「意見書」を提出して意見を述べることができる.意見書案は,地方議会で議決され,議長名で国会(衆・参議院議長)や関係行政庁(内閣総理大臣や関係大臣)に提出される.この意見書の提出権は,地方自治法第99条に規定されている.
 福岡県議会では,本会議に提出する前に,各会派が提出した意見書について,あらかじめ「意見書等調整会議」(座長:自民党県議団政審会長)において,各会派間で協議・調整することになっている.
(2)住民が地方議会に提出する請願
 一般住民が地方議会に対して要望や意見を述べる「請願」という制度がある.請願の内容は,「その地方公共団体が所管する事項に関するもの」ということになるが,国政のことであっても,「国に対して地方公共団体から意見書を提出してほしい.」という内容であれば,「意見書の提出」は前述したように地方自治法に規定された地方議会の権限の一つであるので,地方公共団体で十分対応することができる.
 請願の提出要件は,地方議会によって若干違いがあるようだが,たとえば福岡県議会では,請願要旨,提出年月日,請願者の住所を記載し,署名又は記名押印した上で,議員の紹介(署名又は記名押印)を受け,議長あてに提出すれば,請願として受理される.
 請願が受理されれば,関係委員会に付託され,審査されて,最終的には本会議で採択とするか,不採択とするか,又は継続審議とするかが決定される.採択ということになれば,願意実現のため「議会として」努力するということになる.
 なお,地方自治法第125条で,採択された請願は,次の議会で行政側がどのような対応をしたか報告しなければならないことになっている.

3 今回の狂犬病予防対策の意見書
 「狂犬病予防対策の整備,充実に関する意見書(案)」は,12月の定例会で「意見書等調整会議」の場に提出されて各会派の賛同を得た後,本会議に提出され,全員賛成で可決承認されたものである.
 本会議では,9件の意見書案が提出され,この狂犬病に関する案件を含む5件が可決され,4件が否決された.
 可決された意見書はただちに関係行政庁に,送付された.

4 お わ り に
 地方において,中央段階の政策に働きかけるにはいくつかの手法がある.各地の選出国会議員に意見を述べ,適正な政策運営を要請するのも一つの手段であるが,今回紹介した「意見書」は地方議会の総意として,文書化されたものを,関係行政庁等に提出するところに意味がある.先に述べたように,願意実現のために「議会として」努力するという意思の表明であるがゆえに,受理する行政庁等にも一定の拘束力をもたらすものである.ましてや,同様の趣旨の意見書が全国各地から提出されたとなれば,その効果は絶大なものとなろう.
 全国構成獣医師の意見を集約して,中央での強力な活動に結びつけることが重要であることはいうまでもないが,各地方獣医師会が各地でそれぞれの力を発揮して,地方公共団体や地方議会を動かし,国に働きかけることが政策を実現する上で重大な要素になりうることを各位にご理解いただきたい.ここでは,その具体的な方法としての「意見書」と「請願」について紹介した.今後の各地方獣医師会における活動が一層実りあるものになることを期待するものである.

 

12月の定例会で可決された意見書一覧
12月の定例会で可決された意見書一覧

 


† 連絡責任者: 藏内勇夫(日本獣医師政治連盟)
〒107-0062 港区南青山1-1-1
TEL 03-3475-1601 FAX 03-3475-1604