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馬耳東風

 「スイキンチカモクドッテンカイ」.ご存知太陽系惑星を水星から海王星まで,太陽から近い順に並べた覚え方である.昔はこの8個だったが後に冥王星が加わり,昨年は10個目が見つかったといい,更に小惑星を加えて12個にするとの説が出たが,今年の国際天文学連合総会で審議され,惑星の定義を決めて元の8個になった.
 でも,ここに月はない.月は地球を廻る衛星だから.しかし月は,兎が餅を搗いてるし十五夜だの三日月などといって,一番親しみ易い天体である.1年を12カ月として生活に密着している.間もなく新年の1月を迎えるが,どうして1年が365日で12カ月なのか.
 紀元前4,000年の昔,古代エジプトではシリウス歴が既に生まれていたと.毎年ナイル河が氾濫する夏至の頃,太陽とシリウス星が東の空から同時に出てくる時を基準に1年の長さを計ったという.後に古代ローマ時代紀元前45年,シーザーはこれを改良したユリウス歴を制定したが,既に1年の長さを365.24218…日としていた.エジプトのソシゲネスという天文学者が計算したのだと.ところがこの端数のために,15世紀頃になるとキリストの復活祭が,暦で決めた日と季節が大巾にずれてきた.そこで1582年ローマ法王グレゴリオ13世が,4年毎に端数を1日として加え閏年を置くと決めた.グレゴリオ歴といわれ今の暦の原形になっている.
 では,この調整をなぜ今の2月にもってきたのか.推理するに,ユリウス歴の古代ローマ時代は農耕社会だったので,新しい生命が芽生える春分の頃を1年の始まりの1月とし,作物の収穫が終る冬至の頃を10月にして,残りの2カ月は冬ごもりの月として1年の長さにした.月の満ち欠けで1カ月の長さも決めていたのだろう.
 そして1月をMartius,2月をAprilisというように10月まで神の名を借りて名づけた.ところが冬ごもり2カ月に月名も日付けもなく不便だった.そこでこの2カ月に,JanuariusとFebruariusと名づけたが,後で考えたら,Janusは全ての行動の始めを司る神だったので,これを1月にもってきて,以下ずらして旧1月は3月にした.これらが今の英語読みに変わる.
 で,今まで冬ごもりの最後の月で閏年を調整していたから,これが今の2月になったと考えられるのだが.また日本には旧暦というのがあって,農事や風習に用いられている.このずれは明治5年,中国伝来の暦を改め欧米並みの太陽暦を採用するため,12月3日を同6年1月1日にしたからだ.盆踊りも十五夜も旧暦の方が趣がある.そして日本には月の異名がある.1月は睦月,家族睦まじく新年が始まる.どうぞよいお年を.

(寅)