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4 階 部 分
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5 階 部 分
ここまでは病院の中の間取りにそってご紹介させていただいたが,このほかにもさまざまな工夫がなされていた.たとえば,建物の中は室内の冷暖房の熱を逃がさない換気装置で24時間持続的に換気され,伝染病診察室や入院室,歯科診療室,臭いの強い動物を扱う診察室などは陰圧に,受け付け回り,手術室や治療室は陽圧にすることで生じる気圧差によって,細菌やウイルス,そして臭いのコントロールがなされていた.また,ビルの外側には建物を覆うように,波打った特別注文のコンクリートボードで壁が作られ,外壁のない各階の窓はペアガラスの内側にさらに障子を入れて空気層による断熱効果を持たせていた.外断熱によりビル内部の温度は外界にあまり左右されることがないようにしていた.さらに,入院動物が発散する熱量までも想定して冷暖房の効率が考えられているとのことであった.ベランダと屋上も拝見したが,床面にはゆるやかな傾斜がついており,屋上やベランダに降った雨は水はけを考えるだけでなく,その場に少し貯めて,その気化熱でビルを冷やす効果を出していた.余分の雨水は地下の大きな貯水槽に蓄えられ,貯まった雨水は砂利を利用し土に自然に吸収される仕組みであった. |
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未来に残す理想の森
院長の山村先生は日頃から理想の動物病院のあり方を,森という自然に例えて解り易く話されていた.その一部を紹介させていただく. 「素晴らしい森であれば,そこを訪れた人はそこで体験した素晴らしい森の体験を友達に伝え,次から次へと語り継がれ広がるであろう.森の1本の木だけを見てその木の必要性の有る無しを考えるのではなく,全体の森を見てその木のことを考える必要性がある.これからの動物病院の役割は,『動物の身体の修理工場』から『すべてに対しての癒しの環境』へと変化しなくてはならない.機能的な動物医療施設の実現を目指すあまり,ときに『修理工場』となってしまう.クライアントの心の側面も考えた環境づくりをしなくてはならない.つまり『癒しの環境』,森である.そこでは動物たちが必要な治療を受けることができ,オーナーは心までも癒され,スタッフの一人ひとりが成長し,そして森は理想の姿に向かって未来へ生き続ける.」 Pet Clinicアニホスのロゴマークには落ち葉と動物の足跡が配されている(図3).山村先生は常日頃から「自分は森の木になるよりも,木や花を育てる土壌になりたい」といわれている.動物病院という森の中には,木や草,昆虫,そして時には小動物もいる.この森を形成するすべてが重要であり,一人ひとりのスタッフを意味し,これらの森の木が秋には葉を落とす.その落ち葉はスタッフたちの知識をあらわしている.その知識である落ち葉を踏みつけることにより窒素になる.すなわち森を育てる土が多くの養分を含むことにより,より豊かになることで,また新しい木を育てることができるという自然の循環を表している.その結果,飼い主さんや動物たちにより多くの先端情報や治療が提供できるようになるという想いを込めている.また,病院の名前もAnimate(生命),Animation,(命をあたえる)など生命との関わりと,Hospitality(親切なもてなし),Hospitable(手厚くもてなす)といった,一貫したコンセプト「命に対する真剣な対話と心のこもったふれあいを」を意味して名づけられたとのことである. 私は四国の中の人口10万人ほどの市で開業している.はたして私の病院には人に語れる理念があるだろうか.院長の想いがスタッフにどれほど伝わっているだろうか.スタッフ間のコミュニケーション,役割の分担と責任の所在は明確だろうか.このように考えるとPet Clinicアニホスと私の病院の差は,単に病院の規模の違いだけではないことが納得できてしまう. 近年は設備の整った立派な動物病院も沢山できてきている.山村先生は「建物も設備も素晴らしい,しかしそこでどれだけよい仕事ができるかはスタッフにかかっている.動物病院の真の唯一の資産はやる気のあるスタッフと,満足したクライアント.建物が古くてもサービスでカバーできるが,サービスの悪さは立派な建物ではカバーできない.」と話されている.どんな時代が来てもこのことは変わらないであろう. 新動物病院Pet Clinicアニホスを見学し,沢山の物を見て学ばせていただいた.そこで働くスタッフの皆さんのはつらつと働く様子から,Pet Clinicアニホスと生命の宿った森の姿が私の中で重なって見えはじめた.
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† 連絡責任者: | 宇野雄博(宇野動物病院) 〒799-0112 四国中央市金生町山田井181-3 TEL 0896-58-7321 FAX 0896-58-2137 |