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「フードファディズム」というのがある.fadは英語で熱狂的で一時的な流行を意味する.つまり,一般的にはマスメディアや食品・健康食品産業などから,日常大量に発信される健康・栄養に関する情報を,過大評価したり,過信したりすることを言うのだそうだ. 例えば,ある食品に含まれる物質の有益性などを,摂取量や頻度,実験の詳細をあいまいに表現したまま,これを食べると何々によいなどと過大に宣伝する風潮だ. このフードファディズムには3つのタイプがあるという.第1は健康効果をうたう食品の爆発的な流行である.例として,1975年頃紅茶キノコ,1988年頃酢大豆,最近ではニガリやアガリクスなど.第2は食品や食品成分の薬効を強調するものである.すなわち食品そのものや食品に含まれる特定成分を薬効と称してこれを強調し期待させて,その食品の摂取を勧め,元気になる.若返る,何々によいなど,抽象的表現の情報が該当する.第3は食品に対して不安をあおりたてるもの.これには食品を全体としてとらえるのではなく,特定の食品を体に良い・悪いと単純に評価し,あの食品は危険だからこちらをと,不安をあおっておいて高価な製品を勧めるという不安便乗ビジネスなどがこのタイプだといわれる. こうしてみると,これらフードファディズムは,消費者の食に対する安心・安全志向の心理を巧みについたものであるが,これが広がる社会的条件が要因として背景にあるといわれている.つまり十分過ぎる食料の供給があるからで,食料不足の社会にはこんな余裕はない. また健康関係の情報があふれ,過剰なまでの健康志向の観念が社会に根強いことである.一方最近BSEや原産地の偽装表示のように,食の安心・安全を求めるため食品に対する不安や不信の傾向が強くなっていること.そして,大量に流れる食品の情報やイメージなどを鵜呑みにしてしまう消費者心理がこれに拍車をかけている. そこで,消費者はもっと賢くなってもらわねばならないが,悪貨は良貨を駆逐する経済の理論のように,どうしても正しい情報が伝わり難い傾向になるのは残念だ. さて考えてみると,昔のように母親が限られた食材で献立を作り,一家揃って食卓を囲む風景は珍しくなった.食材も調理ずみ食品も自由に手に入れる.でも家族ばらばらの食事や外食も多くなり,そのうえ食べ物を粗末にして捨てている.つまり食に対する姿勢や感謝の念も失われつつある.昨年施行の食育基本法は,基本理念にのっとり生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努める国民の責務を規定している.フードファディズムに惑わされないように.食育が必要な所以だろう.
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