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熱帯獣医学に燃える男(国際貢献)
比留間一男†(埼玉県獣医師会副会長・比留間獣医科医院院長) |
埼玉県獣医師会会員である蒔田浩平氏は,イギリス北部スコットランドの首都にあるエディンバラ大学の医学獣医学部熱帯獣医学センターに,JICA(独立行政法人国際協力機構)海外長期研修員として獣医疫学博士課程に在籍中であり,本人より近況が寄せられたので概要を紹介する. |
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大学のあるエディンバラは羊,牛,馬の多い牧畜文化の土地で,珍しい肉牛のハイランド・キャルが飼われている.中世の石造りの町並みは,「北のアテネ」と呼ばれる建造物の美しさと,民俗衣装のキルトをまとったバグパイプ演奏とフェスティバルシティとしても有名である.大学は人文社会科学部,医学獣医学部と科学工学部の3学部構成の長い歴史を持つ総合大学で校舎は町中に点在する.近くに世界初のクローン羊,ドリーを生んだラザリン研究所がある.熱帯獣医学研究センターはロイヤルディック獣医学校イースターブッシュ校舎に併設されている.センターはアフリカ大陸での研究実績が多くありイギリスの中心的存在である.ここの担当教官は3名で,Dr. Susan Welburnはヒト眠り病にとっての動物宿主関連性の数量化とコントロールの政策提言に当っている.ウガンダでは 18%の牛がヒト眠り病に感染し,ツェツェバエでは 1000分の1にすぎないことから,動物宿主のコントロールが適した対策のようである.Dr. Mark Eislerはトリパノゾーマ病の研究にあたり診断手法の開発で貢献されている.Dr. Eric F竣reはトリパノゾーマ病と東アフリカの他のズーノーシスを専門とし生物学的システムと地理学のリンクに興味を持っている.多様な国籍の疫学グループの研究内容は,眠り病,ダニ媒介性疾病,ブルセラ病,牛結核病などの調査研究,対策の実施と評価,リスク分析,政策研究などで昆虫学者,分子生物学者,獣医師,医師,疫学者で構成され社会経済分野まで扱う.また,主要なグループは生産性の高い牛の導入障害となっている東海岸熱をはじめとするタイレリア症のワクチン開発に当たっている. |
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氏が疫学調査研究を予定しているウガンダの都市周辺部は,途上国にありがちな人口の都市部集中による人口増加と周辺部への都市拡大が新たな貧困層を生み出すとともに食糧問題を惹起している.氏は都市周辺の農業や畜産の地域立地・人と動物の共通感染症及び家畜伝染病の疫学調査を行う予定で,数年前のネパール派遣の貴重な実績と経験に基づき,ひき続いて専門家としての研究成果と力強い国際貢献に期待したい. |
![]() エディンバラの風景 |
![]() ハイランド・キャル |
† 連絡責任者: | 比留間一男(比留間獣医科医院) 〒358-0042 入間市大字上谷ヶ貫601 TEL 04-2936-0432 FAX 04-2936-0401 |