日本獣医師会の新役員 |
日本獣医師会会長就任にあたって |
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天候異変のせいか長くうっとうしい梅雨空が明け,ようやく夏の陽射しを迎える季節となりました.会員の皆様におかれましてはますます御健勝にて御活躍のこととお慶び申し上げます. 去る6月28日の日本獣医師会第62回通常総会における役員改選の結果,不肖私が第11代会長に,また副会長に藏内勇夫,中川秀樹両先生が選任されるとともに,専務理事,各地区及び職域理事ならびに監事がそれぞれ選任されました. 浅学非才な私にとりましては,身に余る光栄と同時にその責任の重さを考えます時,身の引き締まる思いであります. 7月にスタートした新体制の日本獣医師会は,前会長五十嵐幸男先生の築いてこられました路線を踏襲することはもちろんのこと,さらに新しい問題点の解決に向けても積極的に取り組む予定です.今後は,役員一同一致団結のもと会員の皆様のご期待に応え得るよう努めてまいる所存です. 前会長の時代に積年の念願でありました小動物領域の政策をカバーする「小動物獣医療班」が昨年の10月に農林水産省に発足しました.小動物分野に国民の関心が高まりつつあることを考えます時,誠に時宣を得たものではないかと大いに期待するところであります.今後も行政当局と緊密な連携をとり,内容を充実したものにするため努力を惜しまないつもりです. それと併行して獣医師の臨床研修,高度専門医療に向けての対応による,技術,設備両面における臨床レベルの向上に努めることは必要不可欠であります. さらに,本年6月にはやはり念願でありました「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」が制定され,この法律の改正により人と動物のよりよい関係を目指すことになり,それに違反した場合の罰則等も強化され,より動物サイドに立った愛護と適切な管理が義務づけられることになりました.中でもマイクロチップの埋め込みが規定され,危険動物へのマイクロチップ等を利用した個体識別措置が義務付けられました.当然現場の先生方にはマイクロチップの埋め込み等に対する動物医療の提供で尽力をいただくことになります. 一方,獣医師会にも平成17年度より職域別部会の設置が第61回通常総会で承認され,産業動物臨床部会,小動物臨床部会等の他計6つの部会が誕生しております.是非ともその各部会の中に懸案であります事項を審議し,具体的な企画を立案していただく委員会を立ち上げ,より実施可能な改革案を立ち上げていく予定です.具体的には産業動物臨床部会では,是非とも産業動物臨床獣医師の待遇改善が必要かと思います.決して世の中のしわよせが,獣医師に来るようでは困りますし,また,日本国から家畜を消滅させるわけには行きません.根本から家畜共済制度も時代に沿ったよりよい改善に向けての検討が必要かと思います.このことは公務員勤務獣医師の待遇改善においても同様であります. また,小動物臨床部会では各地区で多くの問題が噴出している狂犬病予防注射体制の検討が急務かと思います.国家的な事業として実施されている狂犬病予防注射は,当然責任の所在が明確な獣医師により実施されるものであり,また,劣悪な環境下での獣医師の品位を低下させるような集合注射は,その実施方法を検討する必要があります.当然のことながら地方獣医師会の運営に支障が生じるような方法は採用すべきではありません.そのためにはマイクロチップとの組み合わせでオーバーヘッド方式(賦課金)ではなく,注射に係る収入相当の一部を会費にあてる獣医師会運営方式へ移行すべきであります. その他にも動物看護士制度の確立,学校飼育動物に関する制度化への運動,さらに,最も将来の日本獣医師会の運命を決めるといっても過言ではない獣医学教育の問題,BSE,狂犬病,高病原性鳥インフルエンザ等の伝染病の侵入防止対策や,国民生活の健康・安全志向が高まる中での食の安全対策(生産から流通・加工・消費各段階)の確立等,解決すべき問題は山積みしています.日本獣医師会と致しましては,社会の期待に応え公益職能団体としての責任を果たし,社会に貢献することが肝要かと思います.社会は急速に大きく変化を遂げております.日本獣医師会もそれらの社会の変化に的確に対応することが必要不可欠であります. 今後,社会より期待される多くの懸案事項を解決するためには,地方獣医師会と日本獣医師会との連携を密にし,意志の疎通を計ることが重要であります.地方獣医師会の活性化があってこそ日本獣医師会の発展向上があり,その結果が社会貢献に継がることになるものだと硬く信じている次第です.いずれにしましても獣医師界こぞっての一致団結した力が必要です.厳しい社会情勢下ではありますが,役員一同気分を刷新し,これからの公務の遂行に努力を傾注することをお誓い申し上げ就任の挨拶とします. |
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(平成17年7月15日) |