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短 報

高カルシウム血症と赤芽球癆を併発した猫のIgA型
多発性骨髄腫の1例


下田哲也1)†  松川拓哉1)  水越健之1)  松本秀文1)  松村晋吾1)
安川邦美1)  長崎鉄平1)  山田隆紹2)

1)岡山県 開業(〒709-0821 赤磐市河本357-1)
2)麻布大学獣医学部(〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71)

(2004年10月14日受付・2005年2月24日受理)

要   約

 約2カ月前からの難治性貧血のため輸血による治療を受けていた12歳齢,雄の雑種猫が来院した.血液検査で汎血球減少症がみられ,血液化学検査では,血清総蛋白,血清クレアチニン,血清カルシウムの上昇がみられた.血清蛋白電気泳動では単クローン性ガンマグロブリン(M成分)血症が認められた.尿検査では,尿蛋白が認められ,尿蛋白の電気泳動でもM成分が認められた.免疫電気泳動において血清のM成分はIgA,尿中のM成分はベンス・ジョーンズ蛋白と確認された.X線検査では骨融解像は確認されなかった.骨髄検査では形質細胞の増加(59.8%)が認められ,赤芽球系細胞は他の血球系に比べて著しく低形成であった.これらの所見から高カルシウム血症と赤芽球癆を併発したIgA型多発性骨髄腫と診断した.
―キーワード:猫,免疫グロブリンA(IgA),多発性骨髄腫.
------------------------------日獣会誌 58,551〜554(2005)

 

† 連絡責任者: 下田哲也(山陽動物医療センター)
〒709-0821 赤磐市河本357-1
TEL 0869-55-1543 FAX 0869-55-9210