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紹 介

宍道湖・中海がラムサール条約の登録湿地に

河内咲夫(河内獣医科院長・島根県獣医師会会員)

 ラムサール条約の目的は,水鳥の生息地である湿地やそこに生息,生育する動植物を国際的に保全し適正に保全し,利用することとしている.
 環境省は5月20日,新たな登録湿地としてサロベツ原野(北海道),名蔵アンパル(沖縄県)など12カ所の指定について地元自治体と合意した.さらに阿寒湖(北海道),仏沼(青森県),尾瀬(福島,群馬,新潟)も湿地登録を進めており,自治体と調整中のものと現在登録されている13カ所を含めると30カ所を超す見通しになる.
 島根・鳥取両県に在る中海も,ラムサール条約登録湿地指定に向け,準備が進められている.そのため,国指定鳥獣保護区が16年11月に更新されるのにあわせ,特別保護地区に格上げされた.
 宍道湖は県指定の鳥獣保護区であるが,これも国指定鳥獣保護区及び特別保護区に変更するため,地元関係者と協議中である.この指定に合わせ,自治体などの賛意を得,2005年11月の締約国会議の登録期限までに手続きを行うことになる.

  条約の正式名称―特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(日本は1980年に加入.規制の項目はないが,締約国の国内法で湿地の保全を図り,持続可能な利用を進めることとしている.)

  国は戦後,全土の開発で自然破壊が進んでいることから,自然保護が重要課題となり規制を設ける必要に迫られ,国際条約に加入し国独自の国内法を創り湿地等の環境保全とともに地域の活性化を図ることとした.
「日本の登録目標は2005年に22カ所以上」を目標にしている.

  国内の登録状況は下記のように,2004年12月現在・13カ所の湿地がラムサール条約に登録されている.
1.釧路湿原(北海道)1980年
2.伊豆沼・内沼(宮城県)1985年
3.クッチャロ湖(北海道)1989年
4.ウトナイ湖(北海道)1991年
5.霧多布湿地(北海道)1993年
6.厚岸湖,別寒辺牛湿地(北海道)1993年
7.谷津干潟(千葉県)1993年
8.片野鴨池(石川県)1993年
9.琵琶湖(滋賀県)1993年
10.佐潟(新潟県)1996年
11.漫湖(沖縄県)1999年
12.宮島沼(北海道)2000年
13.藤前干潟(愛知県)2000年

 穴道湖・中海の条約登録湿地指定に向けた事務手続き等は,以下の3つの項目が整うことを前提に進められる.

項目1: この条約による登録湿地指定の基準に8項目あるが,その1つの基準をクリアすること.中海・宍道湖の両湖はこのうち基準5(定期的に2万羽以上飛来する)基準6(水鳥の一つの種の1%以上が飛来する)を満たしている.
項目2: 両湖は国指定特別保護地区である.中海は完了,宍道湖は手続き中.
項目3: 関係都道府県及び市町村の合意が必要である.

 この3項目を満たせれば,外務省は条約締約国会議で条約事務局に申請し,事務局が登録簿に記載することとなる.



† 連絡責任者: 河内咲夫(河内獣医科)
〒690-0063 松江市寺町99-58
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