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解説・報告

動物愛護管理法の一部を改正する法律案の国会提出


 現行の動物愛護及び管理に関する法律の(動物愛護管理法)については,平成11年の抜本改正において,人と動物の共生概念に基づく「飼い主責任」の考え方をわが国の動物愛護・福祉対策の原点として位置づける等の改正がなされたところであるが,改正法施行5年を経過するにあたり,改正法の附則第2条の規定に基づく施行5年目の見直しの検討が,昨年3月以降自由民主党政務調査会の動物愛護に関する小委員会(委員長:北村直人衆議院議員(本会顧問・獣医師問題議員連盟幹事長)において鋭意・精力的に進められてきた.本会においては,自由民主党における検討と併行して既報のとおり,自由民主党をはじめ公明党,民主党,さらには環境省当局に対し,本会動物愛護福祉委員会の検討報告結果に基づく改正7事項を要請してきたところである(本誌第58巻5号286頁,本誌360頁参照).
 今般,自由民主党の北村直人委員長が終始,率先リードされ,各党一致により,【別紙】を内容とする動物愛護管理法の一部を改正する法律案が取りまとめられ,今通常国会に議員立法として提出されることとなった.
 今回の改正案においては,前回の改正において積み残し事項とされ,衆参両院の附帯決議においても今後の検討課題として示された,[1]動物取扱業の登録制への移行,[2]インターネット販売を含め,動物取扱業の規制範囲の見直し,[3]個体識別措置の特定動物への義務付け,[4]実験動物等,動物を科学上利用する場合の3R概念の適用とともに,動物愛護管理施策を総合的に推進するための基本計画制度の実現を目指すとされている.


【別 紙】
動物愛護管理法の一部を改正する法律案について
 
1 基本指針及び動物愛護管理推進計画の策定
[1] 環境大臣は,動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するため,基本的な指針を定める.
[2] 都道府県は当該指針に即して,動物の愛護及び管理に関する施策を推進するための計画を定める.
2 動物取扱業の適正化
(1) 「登録制」の導入
[1] 現行の届出制を登録制に移行し,悪質な業者について登録及び更新の拒否,登録の取消し及び業務停止の命令措置を設ける.
[2] 登録動物取扱業者について氏名,登録番号等を記した標識の提示を義務付ける.
(2) 「動物取扱責任者」の選任及び研修の義務付け
[1] 事務所ごとに「動物取扱責任者」の選任を義務付ける.
[2] 「動物取扱責任者」に,都道府県知事等が行う研修会受講を義務付ける.
(3) 動物取扱業の範囲の見直し
 動物取扱業として,新たに,インターネットによる販売等の施設を持たない業を追加する.また,「動物触れ合い施設」が含まれることを明確化する.
(4) 生活環境の保全上の支障の防止
 動物の管理方法等に関して,鳴き声や臭い等の生活環境の保全上の支障を防止するための基準の遵守を義務付ける.
3 個体識別措置及び特定動物の飼養等規制の全国一律化
(1) 人の生命等に害を加えるおそれがあるとして政令で定める特定動物について,個体識別措置を義務付ける.なお,動物の所有者を明らかにするための措置の具体的内容を環境大臣が定める.
(2) 特定動物による危害等防止の徹底を図るため,その飼養又は保管について全国一律の規制を導入する.(現行制度は,必要に応じた条例規制)
4 動物を科学上の利用に供する場合の配慮
 動物を科学上の利用に供する場合に,「科学上の利用の目的を達することができる範囲において,できるかぎり動物を供する方法に代わり得るものを利用すること,できるかぎりその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮するものとする」を加える.(現在は,「できるかぎりその動物に苦痛を与えない方法」と規定)
5 そ の 他
[1] 学校等における動物愛護の普及啓発:動物の愛護と適正な飼養に関する普及啓発を推進するため,教育活動等が行われる場所の例示として,「学校,地域,家庭等」と明記する.
[2] 動物由来感染症の予防:動物の所有者等の責務規定として,「動物に起因する感染症の疾病の予防のために必要な注意を払うよう努めること」を追加する.
[3] 犬ねこの引取り業務の委託先:都道府県知事等が実施する犬又はねこの引取りについて,「動物の愛護を目的とする団体」が委託先になりうることを明記する.
[4] 罰則:登録制への移行,特定動物の飼養等規制の全国一律化等に伴い設けられた措置に関し,必要に応じて罰則を設ける.愛護動物に対する虐待等について,罰金を30万円以下から50万円以下に強化する.
[5] 検討条項:この改正法案の施行後5年を目途として,必要に応じて所要の措置を講ずる旨の検討条項を設ける.