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新年号で子供の頃歌った「一月一日の歌」の替え歌の一部を引用した.正月の替え歌にはもう一つある.「♪もういくつ寝るとお正月,お正月には餅食って……早く来い来い救急車」.子供の頃歌った歌はメロディとともによく覚えて居るものだ.特に替え歌として愛唱したものは元歌よりも記憶は鮮烈である.最近の子供たちはどんな歌を歌っているか知らないが,替え歌はどんなものが流行っているのだろう. 私の子供時代は戦中戦後であるが,記憶に残る替え歌に「お手テンプラつない凸ちゃん,野道を行けばばちゃん」という単純なものから,「見よ東條の禿頭ハエが止まってツルッと滑る」(元歌は「愛国行進曲」見よ東海の夜は明けて……),さらには軍隊の消灯ラッパの音色にあわせて「新兵さんは可哀相だよ〜また寝て泣くのかよ〜」までいろいろある.誰が作詞したか知らないがよく日本全国統一した歌詞になったものだ.替え歌ではないが,小学生低学年の頃よく歌わされた歌に「海ゆかば」がある.カバによく似た先生の前で力を込めて歌ったものだ「♪海ゆカバ! 水漬くカバね,山ゆカバ! 草むすカバね……♪」.不遜きわまりない悪ガキの一人であった. 替え歌はパロディでありもじりである.パロディである以上元歌があり,そして時の権力や社会を風刺するものでなくてはならない.したがって替え歌は本来は子供相手ではなく大人が対象となるべきものであろう.歴史上時勢や権威を風刺する歌として狂歌がある.狂歌は本来替え歌ではないが,江戸時代には替え歌として花開いている.有名な大田蜀山人は私の好きな狂歌師であるが,彼は元々武士である.そして彼はよほどの酒好きだったらしい.彼の作品に酒を主題にして小倉百人一首をもじった「狂歌百人一首」がある.紙面に余裕がないので百首は無理だ.その中から二つほど紹介しよう.「世の中に酒といふものなかりせば何に左手使うべき」,「淡路島かよふ千鳥の鳴く声にまた寝酒飲む須磨の関守」.元歌は有名であるので紹介するまでもなかろう. 私が知る替え歌の中の最高傑作は「紀元二千六百年」である.以下に記憶に残る歌詞を記すが,元歌及び当時の社会情勢などを知らなければその本当の面白さはわからない.そのあたりの事情やメロディ(これは軽快でいいメロディだ)については70歳以上の先輩に是非お聞きありたい.必ず知っているはずである.
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