馬耳東風

 
 バーチャルウォーターが今問題になっている.仮想水のこと.日本人が1日に飲む水は,2リットルあれば十分というから,年間1トンで済む.また炊事・風呂・水洗トイレなど家庭での消費量は1日平均250リットル.事業所や公園など大規模施設では1日平均320リットルの生活用水を使っている.これらを直接水という.
 一方農産物生産の間接水を計算すると,可食部の重量比で,米が6千倍,トウモロコシが1千倍,大豆は2千4百倍,小麦粉は2千9百倍になると.畜産物では飼料生産や育成期間を含めた1頭当たりの肉量から水の消費量を計算すると,鶏肉4千倍,豚肉6千百倍,牛肉は実に2万5千倍にもなるという.牛丼1杯に2トンの水資源が必要だとも.この数値から推計してわが国が食糧の形で輸入している水,つまり仮想水の総量は年間744億トンにも及び琵琶湖の貯水量の2.7倍にも達する.
 主な輸入先は,アメリカから427億トン,オーストラリアから105億トンを始めカナダ,中国,東南アジアなど世界中に及ぶ.そしてこれから仮想水の総量は,国内の生活用,工業用,農業用などの年間使用量890億トンにも匹敵する程で,1人年間6百トンにもなると.
 わが国が輸入している農畜産物を国内で生産するとすれば,水が足りないのではなく農地面積が少ないからで,日本国土の半分の面積が必要だとの試算もある.輸入先の農業事情がいつまでも安定しているとは限らない.
 ところで地球は水の惑星といわれ,14億キロ立方メートルの水があるというが,このうち97.5パーセントは海水で,淡水は2.5パーセントにすぎない.しかしその大半は氷河で,人が生活に利用できる河川,湖沼,地下水はさらにその1割にも満たないという.そしてこのわずかな水を,地球上の64億人が使っているのだ.
 頼りになる天からの恵みの雨も,海面から9割,湖沼から1割の蒸発したものだが,陸地に降る雨はその2割で大半はまた海面に落ちる.そして陸地に降る雨も平均せず,地球陸地面積の4割は乾燥地帯である.中東紛争はヨルダン川の水を廻る攻防でもある.クェートでは年間1人わずか10立方メートルの水で生活していると.
 現在の水の消費パターンだと,20年後には世界人口の7割が水不足の地域に住み,27億人が水不足に苦しむだろうといわれ,今でも年間5百万人が水不足や汚染水で死亡している.なのに日本では天然水なるものが自由に買える.今年は異常気象で日本も東南アジアも洪水で大きな被害が出たが,一方黄河やコロラド州は水枯れだという.自然現象は仕方ないが,化石燃料も水資源も地球上に平等に存在せず,しかも無限ではない.

(寅)