【別 紙】 |
2004年(平成16年)9月4日(土曜日)
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〈私の視点・ウイークエンド〉 |
狂犬病:犬の登録と予防注射の徹底を |
日本獣医師会専務理事 大森伸男 |
家庭動物として犬の飼育が普及し,国内では1,100万頭を超えるほどになった.だが,市町村への登録と狂犬病の予防注射は,飼い主に義務づけられているのに,周知・徹底されていない.狂犬病は,国内で半世紀近く発生していないが,世界的にみると,蔓延している国は多い.グローバル化の時代に,狂犬病が日本にふたたび侵入する可能性は高まっており,危機管理を徹底することが急務だ.
狂犬病は,狂犬病ウイルスの感染による人と動物の共通感染症で,すべての哺乳類が感染する.多くの場合,狂犬病に感染した犬にかまれて感染し,発症すると100%死亡するとされる.それだけに不断の予防対策が重要である.
日本では,56年を最後に,犬の発生例はないが,世界では例外的だ.日本のような清浄国は13カ国・地域にすぎない.インド,中国,韓国などアジア諸国を始め,各地で発生.昨年,大流行した中国では,9カ月間に1,300人以上が死亡し,社会問題になった.
世界保健機関(WHO)のガイドラインによると,流行を防ぐには,感染源となる動物の少なくとも7割以上の頭数に十分な免疫力が必要だ,としている.
国内の狂犬病の予防注射の実施率は,厚生労働省の研究事業の報告によると,5割を下回る水準にある.一方で,犬にかまれる事故は,毎年6千件以上の届け出がある.万が一,狂犬病が侵入すれば,現状の予防注射の実施率ではパニックを引き起こしかねない.
飼育犬の登録と定期予防注射は,狂犬病予防法に基づいた社会防衛のための措置で,飼い主の義務だ.罰則規定も設けられている.
定期予防注射の実施時期は,毎年4月から6月まで.飼育者は,世界の状況に目を転じ,狂犬病を蔓延させない予防措置の大切さに気づき,責任を果たしてほしい.市町村も危機感をもち,飼育犬の登録を徹底させたうえで,犬の飼い主全員に狂犬病の知識を啓発し,予防注射実施の徹底を図ってほしい.
感染動物の侵入を防ぐために,輸入検疫の強化も必要になる.農林水産省は,[1]マイクロチップで犬や猫の個体識別ができるようにし,輸出検査証明書の偽造を防ぐ[2]輸出国での予防注射,血液検査を徹底させ,免疫力を示す抗体価の事前チェックを強化する,という検疫体制の見直しを,速やかに実施してほしい. |
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