地方会だより

救急獣医療を提供する体制の整備について

荻曽敏之(名古屋市獣医師会副会長)

 社団法人名古屋市獣医師会(駒崎精彌会長,会員139名)は,小動物緊急疾病及び健康管理に対する適切な保健衛生指導体制の確立をめざし調査,研究を重ねてきたが,特に,夜間の時間帯での個人から組織レベルでの対応,負傷動物の治療にあたっての所有権,予後等の対応について,公益法人による運営形態の中で如何に取り組むことができるのか検討をしてきた.
 また,長年,動物愛護という言葉の弱さを実感しながら一般社会に動物生命の尊重を絶えず啓発してきたが,その手応えの度合いをはかりたいとの思いは全国の獣医師各位と同様である.
 このたび,平成16年5月15日(土)午後9時から「夜間動物緊急診療所」を開設したので,その概要を次のとおり紹介する.

【趣   意】
  小動物獣医療の夜間診療は,全国で一部の会社組織が対応しているが,公益を目的に掲げて開設・診療をしているところは皆無である.さらに,所有者不特定動物の緊急診療対応は日曜日の日中であっても臨床獣医師のボランティアに頼ることが大半であり,ましてや夜間ともなれば,受診窓口は皆無に近い.
  本会は,動物生命の尊厳追求と動物愛護の啓蒙・啓発に永年にわたり公益事業として実践をしてきたが,救急獣医療体制の整備充実は公益法人の社会責務と位置付けて検討を重ねてきた.
  対象動物の所有者が特定,不特定を問わず,緊急で応急処置を必要とする動物を対象に電話による(テレフォンドクター)相談も加え,安心性と適切な診療をめざして夜間での緊急診療を実践することとした.
【目   的】
  不特定多数の動物を対象に所有者不特定動物であれ所有者特定動物であれ,夜間での応急処置を必要とする動物たちへの診療体制を整備,実践をすることで動物愛護の基本理念を追求し,さらに,「人と動物の共通感染症の早期発見と排除」の機会を増やすことにより,動物の健康管理に関する適切な保健衛生指導の強化を図り,また,小動物獣医療に関する技術の向上促進を図ることによって社会の要請に応えていくことを目的としてる.
 
【事業の概要】
1. 診療施設開設場所
名古屋市中区大須4-12-21
名古屋市獣医師会館内 伝染病室
2. 名称・電話
(社)名古屋市獣医師会夜間動物緊急診療所
専用電話 052-263-9911
3. 診療日と時間帯
毎日の午後9時から翌午前2時まで
テレフォンドクター 同時間内で受け付けている
(なお,日中は月曜日〜金曜日の午後2時から4時まで相談開設している)
4. 従事する獣医師及び看護士
雇用した専属獣医師:常勤2名
名古屋市獣医師会会員:有志会員の輪番(登録36名)
看護士:非常勤4名
5. 診療に係る費用
所有者不特定動物:対価を求めていない
所有者特定動物:夜間診察料一律5,250円の治療費が必要
6. 診療対象動物種
所有者不特定,特定を問わず,原則として犬,猫,(その他)とする
7. 事業予算等
特別会計(救急獣医療特別会計)として,予算総額35,950,000円
8. 運   営
理事会及び夜間動物緊急診療所プロジェクトチーム(チーム長:三浦春水副会長,会計実務担当:岩本篤司副会長)の協議によって,日々,検討を加えながら運営にあたっている.
9. 開設後の経過(平成16年7月末日現在)
来 院 数:379件
電話受付数:736件
10. そ の 他
後援:(社)日本獣医師会,(社)愛知県獣医師会,名古屋市獣医師協同組合
協賛・協力の会社,団体:32社,1団体

名古屋市獣医師会館全景

犬の診療風景

 



† 連絡責任者: 荻曽敏之(名古屋市獣医師会)
〒460-0011 名古屋市中区大須4-12-21 獣医師会館
TEL 052-263-0700 FAX 052-264-9381