本稿が掲載される頃アテネオリンピックは真っ盛りだろうか.マスコミでこれほどアテネが話題になると,もうずいぶん昔のことになるが,アテネの街を一人で歩き回ったことを思い出す.世界文明発祥地の一つギリシヤの遺跡を見ておきたかったからだ.
ギリシヤと言えばアテネ,そしてアテネと言えばアクロポリスの丘のパルテノン神殿だろう.アテネ市内からはたいていの所からアクロポリスの丘は見えるから地図が無くともたどり着くことができる.パルテノン神殿らしき石柱をちらちら見ながら丘の上を目指して黙々と登った.途中石柱は見えなくなったが,丘の途中で円形劇場らしき遺跡等が望見できたり,いかにも都市国家らしい城壁の名残等がみられたりで,周囲には人っ子一人居なかったが興味津々少しも退屈な登り道ではなかった.そして丘の上にたどり着くと有名なドーリス式の石柱が目に飛び込んできた.パルテノン神殿跡だ.制止する人が居ないことを幸いに崩れ落ちた石柱等を避けたり乗り越えたりして神殿跡に入り込んだ.柱は思ったより太く,かつ梁までの高さは結構ある.しかも横向きに載せられた梁はこれまたかなりの重量がありそうな石である.クレーンのない時代にどうやって載せたのであろうか.2,500年前の作業に思いを馳せた.多くは崩れ落ちているが,梁のすぐ上,いわゆる破風の部分に素晴らしい彫刻が残っていた.2,000年以上の風雪によく耐えたものと思う.今あるかどうか知らぬが,4半世紀前のアクロポリスの丘にはプレハブ形式の国立博物館があったので覗いてみた.若干未整理ではあったが,神殿周辺から収集された小壁の浮き彫りを始め多くの品々が陳列されていた.確か医学関連の物品もあったように思うが,残念ながら獣医学関連の物はなかった.神殿では儀式として生け贄を供えたり焼いたりしたらしいから獣医学関連の道具があっても不思議ではないと思ったのだが.
当時アテネ市内には野良犬が多いのが気になった.これもオリンピックを契機に改善されただろうか.ギリシヤ料理には地中海産の魚介類が出てくる.一般に西洋人はタコは悪魔の使いとして食べないのが普通であるが,ギリシヤ人は気にしないらしい.もっともこれらを食べさせる店を「タベルナ」というから傑作だ.
アテネ市内の国会議事堂近くに無名戦士の墓がある.そこでは定期的に衛兵の交代が行われており観光客に人気がある.そういえばアメリカはワシントンDC郊外のアーリントン墓地にも無名戦士の墓があり衛兵の交代が行われている.アクロバティックな銃の取り扱いが呼び物だ.日本にも千代田区の千鳥が淵に無名戦士の墓があるが,自衛隊の儀仗兵等の影すらも見たことはない.衛兵の儀式ぐらいやってもよいのになあと思う.何も靖国神社に遠慮することはあるまい.
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