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野生鳥獣保護活動としての釣り糸回収事業について
| 柴田真治†(岐阜県獣医師会常務理事) |
社団法人岐阜県獣医師会は,傷病野生鳥獣保護活動の一環として平成元年より釣り糸回収事業と清掃奉仕を毎年1回,実施してきた.平成15年度は,岐阜県内5カ所(岐阜地域は岐阜市長良川河川敷,西濃地域は大垣市広芝池,中濃地域は関市中池,東濃地域は恵那市阿木川ダム,飛騨地域は河合村下小鳥ダムで魚釣りがよく行われる場所)を対象とし,10月1日に釣り糸・釣り針拾いを(阿木川ダムは5日,広芝池は6日)行った.そもそもこの事業は,岐阜県下の動物病院獣医師で構成する「動物を守る会」のボランティア活動として立ち上がったものである.発足当時は,捨てられた釣り糸が水鳥の羽や足に絡みつき,ひどいものでは糸がくい込み羽や足がちぎれそうで飛べない状態になったもの,釣り針が嘴に刺さり餌を取れなくなり衰弱したもの,足に刺さって跛行している鳥等が,市民によって動物病院に搬送されており,中には全身麻酔下で処置を施さなければならなかった症例も少なくなかったようである.こうした状況に直面し,獣医師同志が検討を重ね,傷病野生鳥獣のボランティア治療だけでなく,獣医師自ら捨てられている釣り糸・釣り針を回収することにより,少しでも傷病野生鳥獣を減らすとともに,釣り人のマナー向上や県民への野生鳥獣保護の啓発を促すための活動が始まった.特に釣り糸回収事業を実施した釣り場に「釣り糸・釣り針捨てないで」と書いた看板を設置したり,啓発用語が書かれたポケットティッシュやステッカーを配布するなどアイデアを出しあい,啓発活動も積極的に行ってきた.このように環境保全も考慮した野生鳥獣保護活動は,人と動物が共生していくうえで重要なこととの認識から,社会の中の獣医療をめざす獣医師として獣医師会全体で取り組みを継続することとなった.最初の頃は,獣医師会員だけの活動であったが,毎年参加人数も次第に増え,現在では,獣医師だけでなく県・市町村職員,日本野鳥の会会員,漁業組合員,市民ボランティアと一緒に釣り場周辺の釣り糸・釣り針回収及びごみ拾いを行っている.本年度の事業終了後,各地域からの報告から捨てられた釣り糸・釣り針は,少ないところではコンビニのレジ袋程度であったが,多いところでは45リットルの市販のゴミ袋いっぱいに回収されており,中には擬似餌ワーム,ルアーの放置が目立った地域があった.また,どの地域も空き缶やごみの回収量が年々増加する傾向にある.先日も動物病院に,擬似餌ワームを飲み込んだことが原因で衰弱したと思われるシラサギやルアーが刺さったアヒルが運び込まれたとの報告を受けている.しかし,このような人に保護され動物病院に搬送される傷病野生鳥獣はごく一部であろうと推察される.野生鳥獣にとって生活の場所でもある水辺は,釣り人にとっても楽しい場所でもあり,大切にしなければいけない場所でもある.にもかかわらず,釣り糸・釣り針,擬似餌ワームが落ちていたところには,釣具の入っていたビニール袋や使えなくなった釣り具,折れた釣り竿までも捨てられていた.こうした一部の心ない釣り人がいるかぎり,被害を受ける野生鳥獣もなくならないと思われる.人と自然,人と動物との共生が叫ばれている今日,人は自然を大切にし,環境を守りながら動物愛護の心優しいゆとりある精神で生活できるよう心がけたいものである.釣り糸回収事業は,地味な活動ではあるが,より多くの釣り人に楽しく釣りをしながら,マナーが守られるように注意を促し,また,傷病野生鳥獣が少しでも減少するよう,この活動を続けていきたいと考えている.現在,岐阜県獣医師会は野生鳥獣保護活動について身近で,できることから取り組もうと岐阜県と協議し,本年度からは県が,県民から一般公募によりボランティアとして「野生鳥獣保護リハビリテーター」を育成することとなった.また,県内には岐阜大学のCOEプログラムによる野生動物救護センターが本年度から稼動しはじめた.獣医師会としてこれからも県,大学と県民ボランティアおよび関係団体と連携,協力して野生鳥獣保護,治療活動とその啓発活動を継続していきたいと考えている. |
![]() 参加者によりゴミ袋に回収される多量の釣り糸(長良川河川敷にて) |
| † 連絡責任者: | 柴田真治(岐阜県獣医師会) 〒500-8385 岐阜市下奈良2-2-1 TEL 058-273-1111 FAX 058-275-1843 |