解説・報告

伴侶動物医療及び夜間救急動物医療の現状と
二次(紹介)診療システムの確立について

細井戸大成(大阪市獣医師会副会長)

1.は じ め に
 近年,「動物の愛護及び管理に関する法律」や「身体障害者補助犬法」など動物に関わる法律の施行,伴侶動物に対する社会の認知とその地位の向上,そして,「ヒューマン・アニマル・ボンド(人と動物との絆・HAB)」を大切にするという理念が社会に広がりをみせる中,人と動物とがより強く絆を深め,よりよい関係でともに生きることができる社会の実現に向けて,われわれ,獣医師の役割は非常に重要になってきている.
 人と伴侶動物とが安心して暮らしていくためには,人と動物双方の健康と福祉,生活の質の向上,そして,すばらしい教育が不可欠である.
 それらを実現するための一つの方法論として,各地域における夜間救急動物医療システムの整備(公的機関による夜間救急動物病院の運営など),二次(紹介)診療システムの確立,高度動物医療(二次・三次)センターの設立が急務であると考えられる.
 また,これらを活用することによって,多くのホームドクター(クリニック・アニマルホスピタルの獣医師)の役割が,より社会の要望に適応した形で発展していくことになるであろう.

2.ヒューマン・アニマル・ボンドの概論
 人と動物がふれあうことによって生まれてくる相互の精神的,肉体的な関わりのことを「ヒューマン・アニマル・ボンド(人と動物との絆・HAB)」(以下「HAB」と表示する)と呼んでいる.
 HABは,地球の歴史,人類の歴史とともに築かれてきたものだが,1970年代より,米国のデルタ協会が中心となり,獣医師,動物行動学者,精神医学・臨床心理学の医学者らによって,人と動物との相互作用を科学的に解明するための研究がはじめられた.
 その後,世界中に,人と動物との相互作用の正しい理解を促進させるため,世界各国のHABについての研究・活動をしている学会,協会などが国際的な連合体となって,「IAHAIO(International Association of Human-Animal Interaction Organization・人と動物との相互作用関係団体の国際協会)」が設立された.
 日本からは,1994年より(社)日本動物病院福祉協会がNational Memberとして,また,ヒトと動物の関係学会,日本介助犬アカデミー,コンパニオンアニマルリサーチ,日本ヒルズコルゲート社がAffiliate Memberとして参加している.(ヒトと動物の関係学会は,2003年IAHAO総会においてNational Memberとして承認された).
 この会の目的は,「人と動物との相互作用の研究」を世界中に広め,HABを「人と動物双方の健康と福祉と生活の質の向上,そして教育」に活用していくことにある.
 そして,発足以来,HABに関する研究発表とディスカッションの場として,3年ごとに世界各国で大会を開催している.
 1995年のジュネーブ大会では,HAB推進に重要な「IAHAIOジュネーブ宣言1995」が採択され,1998年のプラハ大会では,「動物介在活動/療法実施に関するガイドライン」が,2001年のリオデジャネイロ大会では,「動物介在教育に関するガイドライン」が制定された.
 わが国でも,1980年代後半より,HABに関する研究や活動が広がりをみせはじめ,現在では,全国各地で,多くの学会(ヒトと動物の関係学会など)や団体(地方獣医師会や日本動物病院福祉協会など公益法人や任意団体など)が,HABに関する研究や学会で発表や検討,そして,活動(広報・動物介在活動/療法・動物介在教育など)と,それぞれの役割の中で,積極的に取り組んでいる.
 ここにIAHAIO各大会での宣言内容を紹介する.
(1) IAHAIOジュネーブ宣言1995
 序   文
  近年の「人と動物との相互作用の研究」で,コンパニオン・アニマルが,人の健康,成長,生活の質,福祉にと,さまざまに役立っていることが証明されてきた.人が動物を安心して飼うことができ,かつ人と動物がお互いによい関係をもつためには,動物の飼い主と政府の双方に責任と義務がある.
この活動を推進するために,IAHAIOは,1995年9月5日に,ジュネーブで開催された大会において,5つの基本的決議を行なった.すべての政府機関,関係団体に,この決議を促進することを要請します.
[1] 「コンパニオン・アニマルの飼い主が,他の住民の権利を侵さない適切な飼い方をするかぎ,あらゆる場所でコンパニオン・アニマルを飼うことができる」という世界共通の権利を認める.
[2] 「人の生活環境を,コンパニオン・アニマルとその飼い主の特性とニーズに合うようにデザイン・設計する」ことを保証する.
[3] 学校の授業にコンパニオン・アニマルに関する教育を取り入れ,正しい動物とのふれあい方を通じて,子供たちの心の成長に欠かすことのできない動物の大切さを児童教育に活かす.
[4] 病院,老人ホーム,養護施設などの,動物とのふれあいが必要な人々のために,訪問動物として認められたコンパニオン・アニマルの出入りができるように保証する.
[5] 身体障害を克服しようとする人々のために,動物による有益な「介助」や「動物介在療法」を公的に認知する.
 また,健康や社会福祉に携わる専門家の養成プログラムに,動物による介助や動物介在療法に関する教育を取り入れる.
(2) IAHAIOプラハ宣言1998
 序文省略
  動物介在活動/療法実施に関するガイドライン
[1] 陽性強化法(自発的訓練法)で訓練された,野生動物を除く家畜化された動物で,過去から将来にわたり適切に飼育されている動物のみが活動すること.
[2] 活動する動物に悪影響を及ぼさないための予防的配慮が取られていること.
[3] 活動が真に有効である見込みがあるときにのみ実施されること.
[4] 関係するすべての人々のために,安全性,危機管理,心身の健康と安全,信頼と選択の自由,スペースと資金,適切な役割と仕事量,プライバシーと訓練の規定が基準として制定されていること.
(3) IAHAIOリオデジャネイロ宣言2001
 序   文
  近年,コンパニオン・アニマルとのふれあいが,子供たちや思春期の若者たちによい影響をもたらすことが明らかになってきた.これに伴い,子供たちに対して,適切で安全なコンパニオン・アニマルに対する接し方や種類によって異なるコンパニオン・アニマルの正しい飼い方を教えることが重要となっている.
  また,コンパニオン・アニマルを活用する学校でのプログラムが,子供たちの道徳的,精神的,人格的な成長を促し,学校を中心とするコミュニティに恩恵をもたらすことが認められてきた.さらに,さまざまな学校カリキュラムに動物を介在させることで,学習の効果を向上できることもわかってきている.
  このような背景を踏まえ,IAHAIOのメンバーは,2001年9月に開催された総会で,学校における動物介在教育に関する基本的ガイドラインを決議,採択した.
  IAHAIOは,学校でのコンパニオン・アニマルに関わる教育について,すべての学校の教師が以下のガイドラインに基づいてプログラムを実施することをすすめる.

【動物介在教育実施ガイドライン】
[1] 動物介在教育に関するプログラムでは,教室で動物に触れあえることが認められなければならない.また,学校の規則や施設によって,これらの動物は下記のいずれかの条件を満たしている必要がある.
a. 校内で適切な環境のもとで飼育されている.
b. 教師が学校に連れてくる
c. 訪問プログラムに則り,飼い主同伴で訪問する.
d. 障害を持つ子供に介助犬として同行する.
[2] 子供とコンパニオン・アニマルに関するいかなるプログラムも下記の条件を満たす必要がある.
a. プログラムに関わる動物が
i. 安全である(適正があり,正しく訓練されている)
ii. 健康である(獣医師の健康診断を受けている)
iii. 学校の環境に適応する準備ができている(子供に慣れ,移動に慣れているなど)
iv. 適切に飼育されている(学校でも,家庭でも)
v. 動物飼育に対して知識のある成人の管理下にある(教師または,飼い主)
b. 学級内の子供の安全,健康,感情が尊重されている
[3] 上の基準を満たす動物による介在教育の実施者は,教室で動物を飼育する前または訪問プログラムを実施する前に,学校当局と保護者の双方に対して,動物介在教育の重要性について理解を得ておく必要がある.
[4] 明確な学習目標を設定する必要がある.それには,以下の事項に留意する必要がある.
a. 学校カリキュラムのさまざまな面で子供たちの知識や学習意欲を向上させる
b. 生き物を尊重する心と責任感を育てる
c. 子供の一人ひとりがそのプログラムに関わっているかどうか.しかし,感情の表し方は子供によって違うことを考慮する.
[5] プログラムに関わる動物の安全と福祉は,常に保証されなければならない.

3.伴侶動物に対する社会認知と伴侶動物医療の現状
 HABに関する研究や活動が社会に広がり,HABを大切にするという理念が社会に定着するに伴い,伴侶動物が,家族の一員,また,社会の一員として,社会認知され,その存在は,より重要になってきている.
 そして,伴侶動物と暮らす飼い主の多くは,夜間救急診療,24時間対応,専門診療,高度動物医療を望むようになり,われわれ獣医師は,各地域における夜間救急動物医療システムの整備,二次診療システムの確立に取り組む必要に迫られている.
 一方,伴侶動物医療の現状を動物医療施設の名称という角度から分析してみると,施設名には,獣医科,獣医院,獣医科医院,動物医院,動物クリニック,ペットクリニック,アニマルクリニックなどクリニックを意味する名称や獣医科病院,愛犬病院,犬猫病院,動物愛護病院,動物病院,ペット病院などホスピタルを表す名称,そして,獣医科総合病院,犬猫総合病院,総合動物病院,動物総合病院,動物医療センター,アニマルメディカルセンターなどメディカルセンターを表わす名称など,多くの表記・表現が混在している.
 さらに,これらの施設名称が,人の医療のように一定のルールに則り使用されているのではないこと(たとえば,獣医師一人で診療している施設名が○○動物医療センターであったり,◎◎動物総合病院であったりする場合がある)が,社会に多くの混乱を引き起こしている.
 また,全国で20,000名を超えるといわれる動物看護士の存在は,臨床現場において,すでに,必須のものとなっているにも関わらず,最近になって,ようやく,伴侶動物医療における専門職スタッフとして,動物看護士という日本語の呼称が定着してきたにすぎない.しかし,まだ,略称としては,20数年前から使われているAHT(Animal Health Technician)という造語,米国でよく使われているVT(Veterinary Technician),英国のAN(Animal Nurse),ANT(Animal Nursing Technician)など,さまざまな表現が使われている.
 今後,動物看護士の環境整備と地位向上のためには,日本獣医師会が中心となり,関連団体や関係官庁と連携を取りながら,米国におけるVT, 英国におけるAN, 日本の医療における看護師を参考にした上で,わが国の伴侶動物医療の現状を考慮,検討し,まず,職域と呼称などさまざまな関連用語の統一を図ることが最優先事項と思われる.その上で,認定制度の整備,統一を行ない,一つの職業として,動物看護士が社会認知されるような方向に進む必要があると思われる.
 また,同時に,動物医療域におけるクリニック,ホスピタル,メディカルセンターの区別と役割の明確化,そして各地域における二次・三次診療システムの構築が必要になると思われる.

4.夜間救急動物医療への対応(開業獣医師のグループ運営による夜間救急動物病院の紹介)
 1980年代後半まで伴侶動物の夜間救急疾患に対する診療は,個々の診療施設が対応していた.
 1989年9月,日本で初めて開業獣医師のグループ運営による夜間救急動物病院が大阪市で開設された.
 当初は,大阪市獣医師会による運営も検討されたが,社団法人が夜間救急診療施設の運営をするには,会員間の意思統一,収支の安定,一般社会の理解,公益性など,多くの問題を抱えることとなり,それらを解決していくには,時期尚早と判断された.
 その結果,開業獣医師の有志(著者を含む)26名が一律出資して設立された株式会社ネオベッツが,夜間救急動物病院を開設し,運営にあたった.
 当時,グループによる診療施設の運営や紹介システムというものは,動物医療域の中であまり普及していなかった.そのため,動物の福祉と飼い主の安心を提供することだけでなく,常に多くの近隣獣医師の理解と協力,紹介システムの定着,公共性を心がけた運営が必要であった.
 夜間救急動物病院は,年中無休で,診療時間を午後9時半から午前5時までとし,翌朝,主治医病院が開院するまでのリリーフ診療とした.検査所見や処置(治療)を記録した文書を飼い主に渡し,翌日には,必ず主治医のもとに返すというシステムをとった.また,アンケートを同封し,主治医から,その後の経過や処置に対する意見を募って,運営の改善に努めた.株主病院へは,翌朝,FAXでデータを送信した.
 最初の頃には,主治医との意思の疎通を欠き,主治医や飼い主から誤解を受け,混乱するケースもあった.しかし,年月を重ねるにつれ,地域における夜間救急診療施設として定着していった.
 その後,地域における夜間救急動物医療への対応として,京都府,大阪府,神奈川県などで,獣医師会会員獣医師の有志が中心となって,夜間救急動物病院を設立し,運営にあたっている.また,その他の地域でも,獣医師会会員病院を利用した夜間診療当番制度などが導入されるようになった.
 最近では,兵庫県,京都府をはじめ各地獣医師会で,「獣医師会が主体となって運営する,公共性の高い」夜間救急動物病院開設にむけての検討が活発に行なわれている.

5.二次(紹介)診療システム確立への模索
(グループによる高度診断技術システム「CT・MRIなど高額医療装置」の運営)
 二次(紹介)診療システムを各地域で,定着させていくための方法論を模索していく上での,参考例として,(株)ネオベッツが2001年11月にオープンしたCTセンターについて紹介する.(2003年7月現在,ネオベッツの株主病院は134病院になっている.)
 個々の病院が,高度診断技術システム(CT・MRI・放射線治療など)に高額な設備投資を行ない,その維持や回収をすること,そして,地域動物医療の中で有効活用することは,困難なことである.
 ネオベッツは,CT装置を地域動物医療の中で,有効活用する方法の1つとして,グループ運営によるCTセンターを大阪市内に開設した.
 CTのオペレートは,グループ内のCT撮影や読影に興味を持つ臨床経験4年から20年の獣医師が,担当している.オープン前の2カ月間,メーカーによる技術指導講習会や勉強会を重ね,CTオペレートに関する知識と技術を養った.現在も講習会,検討会を継続して開催し,オペレーターのスキルアップと若手オペレーター獣医師を育成中である.
 麻酔管理補助には,グループ内から新卒獣医師の希望者を募り,一日1〜2名の人員を確保している.
 CTセンター利用方法の広報のために,
[1] オープン前には,近隣の獣医師会所属動物病院にポスター・パンフレット・各種書類の送付
[2] オープン後は,CTセンターのセミナールームにおいて,近隣獣医師に対するCTセンターの広報とグループ内病院の診療レベル向上を目的として,外部講師を招いたセミナー(脳神経系,脳外科,CT・MRI読影など)やCTオペレーター獣医師や主治医による症例の紹介と検討を,CT研究会として月1〜4回の開催(参加費無料,株主・株主外を問わず,自由参加)を行ない,獣医師間の交流とセンター活用の促進に努めている.
  撮影費用の設定,初期投資の回収,維持費など,収支バランスは,オープン時より順調に経過し,1年後には完全に好転した.(オペレーター・補助を担当する獣医師のボランティア精神が収支に,大きく貢献している.)CTセンターは,飼い主が,動物と一緒に,直接,来院するのではなく,主治医病院スタッフ(獣医師・動物看護士など)が動物を連れて来院するというシステムをとっている.
 飼い主がCT撮影を希望される場合,主治医がCT撮影を必要と判断した場合には,
[1] 主治医が電話,FAXで,ネオベッツの事務局に申し込みをする.
[2] 担当オペレーター(臨床獣医師)が主治医病院に,撮影日時,撮影における注意事項など,打ち合わせの電話を入れる.
[3] 主治医から「CT申込書」を事務局にFAXしてもらう.(予約完了)
撮影当日までに,
[4] 主治医が,飼い主にCT撮影についての説明を行ない,「CT撮影説明同意書」にサインをもらう.
[5] 飼い主がサインした「CT撮影説明同意書」を事務局にFAXで送信する.
撮影当日は,
[6] 主治医あるいは,主治医病院スタッフが動物を連れてCTセンターに来院する.(飼い主が希望する場合,飼い主の同行は認めている)
[7] オペレーター,麻酔管理補助者が協力して,麻酔導入,麻酔中の生体管理,CT撮影,覚醒を行う.
撮影終了後,
[8] オペレーターが,主治医(あるいは,主治医病院スタッフ)に対して,読影所見の概略を説明する.
[9] 撮影記録を整理して必要なデータをCDhRに入れて主治医に渡す.
[10] 主治医は,撮影記録を持ち帰り,飼い主に説明する.
[11] 撮影料金の請求は,事務局より,主治医病院に対して行う.(請求書と郵便振込書を送付し,後日,入金を確認する)
[12] 飼い主への請求は,主治医病院が行う.
  また,後日,オペレーターが集まり,各症例について検討会を行う.当日の読影所見と大きな違いがあった場合には,主治医と連絡をとり,報告する.
 難解な症例や専門医による読影を希望される場合には,専門医に相談した上で,回答している.(この場合,読影料は別途請求)
 以上が,ネオベッツが運営するCTセンターでの二次(紹介)診療システムの確立に向けての試みである.
 これは,あくまで,臨床現場にいる多くの開業獣医師が二次診療というものに少しでも慣れるための試みであって,今後は,獣医師会が獣医科大学との連携を今まで以上に強化し,獣医科大学の付属病院や動物医療センターが行なっている診療内容(専門診療や特殊診断技術など)や二次(紹介)診療システムを会員に広報していくことが重要である.
 そして,各大学病院が行なっている専門診療や二次診療システムを開業獣医師が十分に理解し,有効的に利用することが,二次診療システム構築に直結する第一歩になると思われる.

6.さ い ご に
 われわれ,獣医師にとって,大きく変化する社会の中で,「人と人との絆」,「人と動物との絆」を大切に育み,「人と動物双方の健康と福祉と教育」に対する充実した対応,また,「自然と環境の保全」のために,「個人として,また,組織として,獣医師が,いかに,関与,貢献できるか?」について,あらゆる分野の人々に協力を求め,いろいろな角度から検討し,自然と調和のとれた,人と動物とのすばらしい共生社会の実現にむけて努力していくことは,とても大切なことである.
 すでに,獣医師は,産業動物関連業務,公衆衛生業務,研究,教育,そして伴侶動物医療など多方面にわたり,食の安全と安心の確保,人と動物双方の健康と福祉の維持,医療・動物医療に関わるあらゆる研究,獣医科学生の教育と獣医師の育成,伴侶動物診療など,多くの具体的任務を担っている.
 しかし,個々の獣医師はすばらしい力を持っているにも関わらず,諸先輩方が重ねた経験と知恵,中堅の安定感,そして,若い感性と新鮮な力など,世代を超えた多くの力をうまく結集させた組織運営がなされていないと思われる.
 多くの力を結集するには,継続事業が安定すれば,すぐに,新規事業立ち上げに向けての準備と検討を始め,1年間ぐらいの討議期間を設ける.そして,多くの人々が共通認識を持つようになれば,事業を立ち上げ,役割を分担して受け持ち,その事業の安定にむけ,より多くの人々が運営に参画していることの認識を得る.これを普遍的に繰り返していくことが理想的であると考える.
 この見解は,あくまで,私見であり,推測でしかない.性質の異なる施設である夜間救急動物病院とCTセンターをそれぞれ,約14年と約2年の間,グループで運営し,その間に,多くの獣医師と飼い主に活用していただいた.その結果として,獣医師間のコミュニケーションが増加し,意思の疎通がよくなることを学び,また,共同運営の困難さと楽しさを経験した上での推測であり,見解である.
 各地の獣医師会は,主催もしくは,他団体との共催の講習会や研修会を頻繁に開催し,常に会員の参加と意思統一を促すことを心がける.そして,会員間の意思の疎通をより良いものとし,獣医師会の組織力を強化していく必要がある.
 さらに,獣医師会がリーダーシップを発揮して,獣医学系大学,行政,関係団体との連携をより強化し,夜間救急動物医療システムと二次診療システムの確立,高度動物医療センター(獣医科大学のある地域では,大学の協力と関与を期待できるが,獣医科大学のない地域では,獣医師会の役割がより重要になると思われる.)設立に向かえば,さらに組織力が高まるのではないだろうか?
 この問題については,日本獣医師会,地方獣医師会,獣医学系大学など各方面で,実施に向けての方法論などについて活発に検討されることを望みたい.



† 連絡責任者: 細井戸大成(ネオベッツ動物病院グループ・鶴見緑地動物病院)
〒538-0052 大阪市鶴見区横提3-2-28
TEL 06-6912-7604
FAX 06-6912-0944