基 調 演 説 |
ご来賓の皆様,議長,事務局長及びご列席の皆様 |
(冒 頭) |
私は,第71回OIE総会開会式典に出席し,日本国を代表して所見を述べる機会を与えていただいたことを大変栄誉に感じております.また,私は日本国農林水産省副大臣として農林水産行政に携わるとともに獣医師でもあり,本日,世界各国の獣医師の皆様方の前に立てることを心より喜んでおります.本会議の開催準備に携わってこられたヴァラOIE事務局長,マラベリ議長をはじめ,事務局関係者の方々に敬意を表しますとともに,本日,栄えあるOIEゴールドメダルを受賞されるヘイスタイン博士及び功労賞を受賞されるエンジェル・カーサス博士,ボアソー博士,マシュールキス博士には平素からのご努力に敬意をささげ,心からお祝い申し上げます. |
(現状認識) |
国際的に物流が活発化している中で,口蹄疫,牛海綿状脳症,豚コレラ,鳥インフルエンザ等の動物の伝染性疾病が世界各国で発生し,畜産業へ経済的な被害を与えるばかりでなく,社会不安を招いていることを深く憂慮しております.
このような中,動物衛生のみならず食の安全性に関するOIEの役割は今後,ますます多様化かつ重要なものとなってきており,われわれは,OIEの活動に積極的に参画していかなければならないと考えております. |
(わが国の状況) |
わが国の現状と照らし合わせてみますと,日本は世界最大の農畜産物の純輸入国であり,国民の食生活の多様化を背景に,動・畜産物の輸入は年々増加しております.また,輸入品目,輸入先国も多様化しており,海外からの動物の伝染性疾病の侵入の危険性はますます高まってきております.
これを裏付けるかのように,2000年3月には,わが国において92年ぶりに口蹄疫が発生しました.これに対し,ただちに感染家畜の殺処分,移動制限など厳格なまん延防止措置を講ずるとともに,原因究明のための対策を実施いたしました.その結果として,同年9月には,ふたたび口蹄疫清浄国として国際的に承認していただくとともに,その実績を評価いただいたところであります.
しかしながら,一昨年のわが国初の牛海綿状脳症の発生は,かつてないほど,国民に食に対する不安を与える結果となりました.このような中,昨年6月には,OIEの専門家を派遣いただき,わが国のBSE対策を実際に視察をし,専門家の立場から数々のご助言をいただき,大変感謝しております.私は,BSE問題を,食の安全・安心を確保するための最大の課題と受け止め,OIE専門家のご助言を踏まえ,今後ともそのまん延防止,検査体制の整備及び感染源の究明等の対策を推進し,食の安全・安心を確保するためのさまざまな対策を講じ,清浄化を図っていきたいと考えております. |
(わが国の貢献) |
国境を越えて急速にまん延する動物の伝染性疾病を考慮しますと,その防疫体制を成功に導くためには,世界各国が一体となって取り組むことが不可欠であります.OIEのリーダーシップによって,各国間の調整を進め,情報を収集・提供していくことが不可欠であると考えます.
このため,わが国は1930年OIEへ加盟し,加盟国としての義務を果たすことはもちろん,任意拠出金を提供するなどしてOIEの活動に積極的に参加することとし,OIE本部における情報収集活動,アジア太平洋地域事務所の活動,東南アジアにおける口蹄疫撲滅キャンペーンなどを支援しております.
また,新たな協力活動として,アジア太平洋地域関係国への牛海綿状脳症の知識の普及,技術者の育成及び専門家の派遣を行う牛海綿状脳症国際貢献事業を,本年度より実施することとしております.
本事業は,日本がアジア太平洋地域における最初のBSE発生国として,日本の経験をアジア太平洋地域関係国に提供し,本病のリスク管理の構築に貢献するものであり,このことはわが国の重要な責務の一つと考えております. |
(まとめ) |
最後に,尊敬いたします先人の「獣医師としてのあり方」についての考えが,長年,私の原点となっておりますので,それをこの機会にご紹介させていただきたいと思います.
それは,「科学者としての獣医師は人権擁護の立場に立ってこそ社会的な存在価値がある.」というものです.これは,科学者としての獣医師が,獣医学術をもって公共の福祉に努め,人類の未来を切り開くためには,人権擁護の上に立たなければならないというものであります.「科学者が自分の持ち場で少なくとも嘘をつかない」ということ,すなわち公正中立な立場を貫くことが科学者としての本質であり,この科学者としての本質をもって,科学精神からくる広い視野のもとで世の中の真実を明らかにしていくことこそ,科学者としての獣医師の真髄であり,これを決意して実行してこそ,人類の進歩に結びつくものと認識しております.
このような獣医師であり科学者の集団であるOIEが,科学者として獣医師の真髄を決意して実行していくことこそ,国際社会から求められているものであり,そうあることを強く望むものであります.
最後となりますが,世界の動物衛生に対して,国際獣疫事務局が果たしてきた多くの功績に感謝の意を表するとともに,わが国といたしましても,OIEの動物衛生状況の向上に向けた活動について,今後とも,積極的に貢献して行く所存であることを表明させていただきます. |
(参 考) |
来賓者: |
米国農務次官 |
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フランス農業・食品・水産・農村問題担当相 |
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ボリビア共和国農相 |
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ジブチ共和国農相 |
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インドネシア共和国農相 |
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モンゴル国農相 |
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パラグアイ共和国農相 |
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セネガル共和国農相 |
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ウルグアイ東方共和国農相 |
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バヌアツ共和国農相 |
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