資 料

ゴリラのエキノコックス症発症とその対策を振り返る

小菅正夫 坂東 元(北海道旭川市旭山動物園)

は じ め に
  1994年8月26日正午,「旭川市の動物園が,エキノコックス症発生のために閉鎖されました.」という衝撃的なニュースが全国を駆けめぐった.旭山動物園があたかもエキノコックスの巣窟であるかのような報道ぶりであった.エキノコックス症などという病名は聞いたこともないという壱岐の老女性は,「私は2年前に旭山動物園へ行き,トイレで手を洗いました.近くの観光地ではキツネと記念撮影もしました.エキノコックス症にかかっているかも知れないので,恐ろしくて夜も眠れません.」と不安でたまらない気持ちを訴えてきた.その他にも,多くの人々から,同様の手紙や電話が殺到した.マスコミの一部が流した「動物園の水が原因か?」という見出しが大きなエキノコックス症パニックを起こしたのだ.
 以下,ゴリラのエキノコックス症発症の経過と旭川市が実施したエキノコックス対策,およびそのことに対する社会の反応について振り返る.
1.ローランドゴリラがエキノコックス症発症
  エキノコックス(Echinococcus multilocularis)は,おもにキツネを終宿主とし,野ネズミを中間宿主とする条虫である(図1).中間宿主として,ヒトを含む霊長類やトガリネズミ,ブタ,ウマなどにも寄生する.最近では,中間宿主としてモモンガやヒメネズミなどからも寄生が見出されている.
北海道におけるエキノコックス症は,1937年に礼文島でヒトから発見され,その後,1965年からは,根室,釧路地区において次々とヒトへの感染が認められた.この時点まではエキノコックス症は,道東の風土病的な扱いをされてきたが,1982年東藻琴町でブタへの感染が発見されて以来,全道各地で感染したキタキツネや野ネズミ,ブタなどが発見され,それと平行してヒトの感染例も道内各地に拡がっていった.衛生対策を担当する 北海道保健環境部は,1993年4月より全道一円をエキノコックス汚染地域とし,ヒトの感染予防対策を講じていた.このような社会状況の中で,当園で飼育中のローランドゴリラがエキノコックス症を発症し死亡した.


図1 エキノコックスの生活環(多包条虫)
1)経   歴
  本個体は1972年生まれ(推定)のオスで,1975年動物商により輸入され,「おびひろ動物園」にて2年7カ月飼育されていた.1977年10月18日に当園へ入園し,メス1頭と同居飼育されていた.
 既往歴は,1985年より鼻の右横に頑固な排膿を伴う小膿瘍ができ,なかなか根治せずに経過していた他は,特筆すべきものはなかった
(表1)
2)臨床経過
  ゴリラが1993年6月29日朝,突然大きな音をたてて倒れ,しばらくは意識が不明瞭となった.起立しようとするが四肢に力が入らず,前肢はナックル歩行ができなかった.表情は堅く,唇をかみしめ,やや興奮気味であった.ジアゼパムを投与し経過を観察していたが,翌日には回復した.
 同年10月20日,朝から3回の発作を連続して起こした.転倒してから起立するまでに10分から15分ほどかかり,その間は意識の混濁が認められた.3回目の発作時に塩酸ケタミンで麻酔し,室内に収容後,低分子デキストラン1lの点滴を行った.翌21日朝には意識がはっきりしていたが,右上下肢と顔面,特に右側口唇の麻痺が認められたため脳血管障害と診断し,アスピリン1gを3回にわけ連日投与した.麻痺は徐々に回復し,1994年1月中旬にはほとんど消失した.
 1993年12月中旬より,左頸部の皮膚に鶏卵大の糜爛が認められ,次第に胸部にまで拡大してきたため,1994年2月11日よりアスピリンの投与を中断した.ところが,3日後の14日朝,寝室内に転倒した痕跡があり,動作も緩慢で軽度の顔面麻痺が認められたため,再度投薬を開始した.皮膚糜爛の悪化を懸念し,以後パナルジン(塩酸チクロピジン)に変更したが,嗜好性が悪く糜爛の改善もみられないため,3月17日よりアスピリンに再変更した.
 1994年6月6日夕方,突然大きな声を発し,前回までとは違った激しい痙攣発作を起こした.5分間程度で回復したが,1時間後に再度痙攣を起こし,一時的な口唇の下垂が認められた(図2).翌7日にも同様の痙攣を確認しているが,痙攣はいずれも唇,上下肢から始まり,全身に激しい癲癇様の痙攣を起こす,いわゆる「ジャクソン型痙攣発作」であった.発作は5分間程度で回復するが,軽度の麻痺を伴っていた.しかし,それも数日で回復していた.
 以来,機嫌のいい日と悪い日がはっきりとし,食欲にもむらが出始めた.同様の発作が6月25日午後,3時間の間に4回連発したため,抗痙攣薬(ヒダントール9錠×3回/日)の投与を開始した.
 7月に入り,痙攣発作は確認できなかったが,口唇の下垂が時折認められたので,数回の痙攣発作を起こしていたものと推察される.食欲の不振は続き,頭痛がするらしく,時折頭を抱え,頭部の毛をつかむような行動もみられた.起きている間も意識は半昏睡状態を示すことが多くなった.
 7月19日朝,鼾様の呼吸音がするため声をかけたところ,体を起こし大きな声をあげて,そのまま前方に倒れ,30分後に死亡した(表2).


図2 発作を起こしたゴリラ口唇の下垂が認められる

3)病理および細菌検査
(ア) 病理解剖所見
 肝臓は9,330gで,腹膜,横隔膜と強固に癒着していた.全体に硬度を増して腫大しており,被膜下および実質に直径1〜3cm大の灰黄色腫瘤が多数みられた.腫瘤内には,空胞や微細なシストが認められた.また,臓器面には14×13×8.5cm大の嚢状構造がみられ,内腔は緑色を帯びた黄白色やや粘調の水様物で満たされていた.リンパ節は腫大し,割面は灰白色のシストが充満していた.
 肺は2,500gで,点状出血がみられ,気腫および水腫を認めた.また,米粒大の硬い灰白色結節が散見された.
 脳は690gで,全体に水腫性で,左脳がやや腫大していた.左前頭葉の割面(中〜下前頭回)に25×22×前後30mm大の球状腫瘤が認められた(図3).
 心臓は1,550gで,退色やや腫大し,心外膜に脂肪が付着していた.また,左右心室は弛緩していた.
 腎臓は左625g,右520gで,暗赤色を呈し,やや腫大していた.
 脾臓は1,050gで,腫大し割面はろ胞不明瞭でやや泥状であった.
(イ) 組織学的所見
 肝臓の腫瘤は,多数の多包性のシストと,それを包む巨細胞を混えた類上皮細胞層と,厚い線維性結合織で形成されていた.
 シストは,外層のクチクラと内層の胚細胞層で構成され,ごくまれに石灰小体や原頭節の形成が認められた(図4).また,関門リンパ節にも肝臓と同様のシスト形成が認められた.
 肺の結節には少数のシストが形成されていた.
 大脳の腫瘤には肝臓と同様のシストが形成されていたが,シストを含む線維性結合織は薄かった.また,石灰小体や原頭節は認められなかった.
 心臓は,結合織の増生をともなった心筋線維の肥大と,血管壁の肥厚が認められた.
 腎臓の間質に軽度のリンパ球浸潤が認められた.
 脾臓では,白脾髄の萎縮が認められた.
(ウ) 細菌検査
 主要臓器および肝門リンパ節から細菌は検出されなかった.

図3 大脳内のシスト

図4 原 頭 節
4)診   断
  エキノコックスには,世界中に広く分布する単包虫と,おもに北方に分布する多包虫がある.いずれも人獣共通感染症で,公衆衛生上大きな問題となっている寄生虫である.
 ヒトの場合は,虫卵を経口的に接種することで感染し,10年前後の潜伏期を経て自覚症状を訴えるようになり(不定症期),続いて寄生部位の臓器機能障害が発現(完成期),全身症状の悪化を招き(末期),死亡するという経過をとるのが一般的である.多包虫のおもな寄生部位は,肝臓の他,肺,脳,脾臓,腎臓,骨などであるが,孵化した子虫が腸管を穿孔し,門脈の血流により最初に到達するのが肝臓であり,人やゴリラの場合では,門脈血が多量に流入する肝右葉が好寄生部位となる.多包虫の場合,包虫の一部が血流を介して転移することが知られており,肝臓から肺,脳などの各臓器へ転移し,二次包虫症を起こす症例がよくみられる.
 今回のゴリラの場合,[1]肝臓の嚢胞が古く,腫瘍を形成して古い病巣であったこと,[2]肺臓と脳の嚢胞は比較的新しい病巣であったことから,肝臓において一次包虫が形成され,宿主の抵抗を受けながらも増殖が続き,最近になって嚢胞の部分的な崩壊が起こり,多臓器転移を起こしたものと考えられる.
 なお,発症時期に新たな感染があり,肺臓と脳の嚢虫が一次包虫であったことも否定できない.
 臨床症状は,脳障害として発現した.肝臓が原発であるにも関わらず,肝左葉への侵襲が比較的弱かったため,食欲や一般状態からみて,肝機能は正常であったものと思われる.また,肺についても嚢胞がまだ小さかったためか,喘息様の発咳などは観察されなかった.今回のように二次包虫症の症状が発現したのちに,肝臓の包虫が発見された例がヒトでも報告されている.
 臨床経過からみて,最初と2回目の虚血性発作が,脳への転移時期だったと推察できる.虚血性発作を起こした塞栓がより先へ移動したため,一時的に右半身の麻痺は回復したが,移動先で包虫が成長したため,脳を圧迫しジャクソン型痙攣発作を起こしたものと考える.すると,脳での包虫の発育期間が9カ月程度と考えられ,脳内での包虫の発育は比較的速いものと推察できる.

 

2.感染経路の推察と対策
  エキノコックス症は人獣共通感染症であり,ゴリラが感染したということは,他の霊長類も感染している可能性があるばかりでなく,動物園職員や入園者にも感染する危険性がある.また,エキノコックス症が道東ばかりでなく,全道的な拡がりをみせていた時であったことから,今回の感染経路を特定し,その対策を講ずる必要性が論議された.
1)公表の決断
  エキノコックス症は,当時,伝染病予防法による届出伝染病ではなかったので,ゴリラに発生したとしても公表の義務はない.そのため,公表自体を否定する意見もあった.また,ゴリラにエキノコックスが感染した時期は特定できないため,「北海道はすでに感染地域とされているので,公表しても意味はない.」,「潜伏期間を考えても,早急に閉園する必要はない.」などの意見もあった.しかしながら,旭川市は入園者ならびに飼育動物の安全を守る責務があるとの認識から,ただちに旭山動物園を閉鎖し,徹底した調査と対策を実施を決定した.
2)感染経路の推察
  感染経路については,[1]飼料が虫卵で汚染していた,[2]キツネが獣舎周辺で排便し獣舎が汚染された,[3]園外から虫卵が獣舎に運ばれた,の3とおりが推察されるが,いずれかは特定できなかった(表3).
 [1]の飼料からの可能性として,当園では夏期間,動物園周辺の数カ所で栽培したクローバーを給餌していたことがあげられる.クローバー畑のある地域は,ヒトやブタに感染の報告があった場所から数kmしか離れておらず,キツネの行動圏から考えると,クローバー畑一帯が虫卵に汚染されていた可能性がある.
 [2]の直接汚染の可能性として,外周柵からのキツネの出入があげられる.キツネは園外に多数生息しており,外周柵を登ったりして侵入した形跡が認められた.
 [3]の虫卵が運ばれてきた可能性としては,水や風によって虫卵が拡散されることが指摘されている.動物園は旭山の中腹に位置しており,大雨の際には動物園外の草地からも濁流が流れてくるため,虫卵が水流に乗って獣舎近くまで運ばれる可能性は否定できない.ゴリラは檻の隙間から手を出して,地面に触れることができたので,感染する機会は十分にあったものと考えられる.
 また,虫卵は薬剤には強い抵抗性を持つため,通常の踏み込み薬浴槽では意味をなさず,飼育係の靴底に付着した虫卵が,直接獣舎内に運び込まれた可能性もある.
 国内では,当園の他にK動物園とO動物園でオラウータンとニホンザルに本症の発生がみられているが,当園同様感染経路の特定はできていない.
 なお,感染経路が明らかになった例として,ロサンゼルス動物園(アメリカ)で3種類の大型類人猿が発症した報告がある.動物園が展示動物として,Echinococcus vorgeli の寄生していたヤブイヌを導入してしまい,その放飼場と類人猿の臨時放飼場とが隣り合わせにあった結果,類人猿の放飼場が虫卵で高度に汚染されてしまい,集団発症したものである.
3)旭山動物園の対策
(ア) 飼育動物への対策
 推察した感染経路に基づき,それぞれの対応策を検討した.
 [1]の飼料については,すべての霊長類に野外栽培のクローバーを給餌しないことにした.
 次に[2]の対策として,キツネの進入を防がねばならない.キツネは地面を掘ることができ,菱形金網にも四肢を掛け容易に網を登ることができるため,外周柵に地下60cmまでステンレス板を埋め込み,忍び返しにも鉄板を取り付けた(図5).加えて,キツネを園内に誘引する原因となる残餌(生ゴミ)を廃棄物処理業者へ委託して処分することにした(図6).
 [3]の虫卵対策として,飼育係が動物舎へ虫卵を持ち込まないように,動物舎出入口での完全な靴の履き替えを実施した.また,園外から雨風によって獣舎附近に運ばれる虫卵が摂取されてしまうことを防止するために,檻の下部分にステンレス棒を溶接し,動物が檻から手を出して地面に触れることのないようにした(図7).
 また,当時飼育していたチンパンジーを始めとする霊長類の感染の有無を確認するために,Elisa法による診断を実施したが,陽性を示す個体はいなかった.
(イ) 人間への対策
 旭川市では,これまでも住民へのエキノコックス検診を実施していたが,これを機会に全庁的な「エキノコックス対策会議」を設置し,全市民を対象とした検診を集中的に実施し,自然水を飲用としている地区の水質検査も実施した.
 また,入園者への対策として,新たに6カ所の手洗い場を新設した(図8).これは,エキノコックスの虫卵が0.02mmくらいの大きさで,比重も1.118と水よりも重いので,エキノコックス症の予防には“手洗い”が最も効果があると考えたからである.人のエキノコックス対策は,一口でいえば衛生対策であり,その周知が予防に最大の効果を発揮すると考え,3カ所の手洗い場にエキノコックスの解説板を設置した(図9).
 次に,動物園職員への対策として,年1回の特別健康検診としてElisa法による検査を実施することとした.

図5 埋設ステンレス板と鉄製忍び返し

図6 残餌の処理
 

図7 檻から手が出ない動物舎対策

図8 手洗い場の増設
 

図9 エキノコックスの解説板
4)公表の結果
  公表後のパニックは,マスコミの無知に起因するものである.公表の記者会見において,われわれは資料を提供しゴリラのエキノコックス症感染について,科学的に説明した.しかし,マスコミ側の反応は「常日頃の衛生管理を怠っていた.」,「危険な疾病を放置し,なおかつ感染の事実を隠蔽していた.」,「感染したサルがいるかもしれないので,入園者に感染する危険性があるのではないか.」といった批判に終始した.公表の後,1時間以上もかけて説明をした記者が「よくわかりました.でも,動物園へ行くのは恐い.」といった言葉が忘れられない.
 また,感染経路についても,某新聞社が「園内の水が原因か?」と大きな見出しで報道した.園内の水はすべて水道水であり,汚染していたとすれば,すでに旭川市民に感染が広がっているはずであり,あり得ないことであるにも係わらず,新聞社は「記事の中で断定はしていない.」として断固訂正に応じなかった.
 数日して,某病院長から「感染源となるゴリラの糞便の処理はどうしていたのか.」との指摘を受け,エキノコックスの生活環を説明したが,わかってもらえなかった.
 当園では,安全対策を実施したうえで平成7年度には通常どおり開園したものの,40万人近くあった入園者数は約28万人と激減し,翌平成8年度にはさらに26万人にまで落ち込んでしまった.まさにエキノコックスによる風評被害以外の何ものでもない.われわれは,「よく知らない」ということが,社会としてこれほどまでの反応を引き起こしてしまうことを体験させられた.
 なお,この事例の3年後にO動物園がニホンザルのエキノコックス感染を公表したが,マスコミの反応は驚くほど冷静で,パニックを起こすようなことはなかった.

 

3.人間社会の責任
  エキノコックスは,キツネとネズミの食物連鎖を利用して生活している生物である.いわば生態系の一員として組み込まれた自然そのもので,それを“人間の生活を邪魔する奴は殺してしまえ”式の対策では,自然そのものを破壊してしまうことになる.そのことは,われわれの歴史が十分に証明してきたはずである.
 エキノコックスが全道に広がった原因は,キタキツネの生息数の増加が最も大きいことはいうまでもない.人が牧草地を造成することによりキツネにすみやすい環境を与え,畜産廃棄物や家庭から出る生ごみを投棄することによりキツネに食糧を提供してきたのである.そればかりでなく,人慣れしたキツネを観光の目玉として利用し,どんどん人の生活圏の中にキツネを呼び込んできた.自分でキツネの増える環境を用意し,自分で呼び込んでおいて,危険な病気をまき散らす動物だから駆除してしまえでは,何をかいわんやである.そもそも,エキノコックスが分布していなかった北海道にエキノコックスを運び込んでしまったのも人間なのである.礼文島では,町が野ネズミ退治と毛皮を採る目的で,千島列島の新知島からエキノコックスに感染していたキツネを持ち込んだのが原因だし,根室・釧路地方では,沖合いの歯舞諸島で養狐業者に放置されたキツネが,冬期間に流氷で陸続きとなる根室半島に上陸したことが原因とされている.
 エキノコックス対策のポイントは,エキノコックスの生活環から人が遠ざかればよいだけである.生ゴミの適正な処理によってキツネの食糧を断つことで,キツネは人間社会に頼らなくなり,自然が養える個体数にまで生息数が落ち込むはずである.さらに,観光客の給餌をやめさせれば,その効果はより大きくなる.
エキノコックス対策でもう一つ重要なことがある.それは畜犬の管理である.イヌもエキノコックスの好適な終宿主なので,放し飼いにされた犬がエキノコックスに感染した野ネズミを食べてしまえば,イヌの腸内に親虫が寄生するため,人との接触頻度から考えてきわめて危険な存在となる.
 野生動物に係わるさまざまな人間の被害は,多くの場合,人間社会の側に起因している場合が多く,われわれはそのことを動物の側に立って訴えていきたいと考えている.
お わ り に
  当園が,ゴリラのエキノコックス症をとおして経験した人間社会の動物に対する反応は,エイズのような感染症や今回のBSE(牛海綿状脳症)でも同様の反応であったと思う.このような場合,われわれ獣医師が科学者として科学的な解説をわかりやすく,そして根気強く続けることで,正しい知識を社会へ浸透させることがもっとも重要な対応策ではないか.
 稿を終えるに当たり,ゴリラの治療および病理解剖に関してご指導ご尽力を賜った佐古和廣医師と和田好洋獣医師,ならびにご協力いただいた多くの方々に改めて感謝の意を表します.

 


† 連絡責任者: 小菅正夫(北海道旭川市旭山動物園)
〒078-8205 旭川市東旭川町倉沼
TEL 0166-36-1104
FAX 0166-36-1104