「カラス,なぜ鳴くの〜」と童謡は歌う.しかし,近頃のカラスには悩まされる.東京都内には3万7千羽いるといわれ,都はプロジェクトチームを編成して対策に取り組み,捕獲箱に4千万円を投入し,昨年暮れから始めた緊急捕獲作戦で半年で4千2百羽捕まえたという.
最近のカラスは山に棲まず,街に餌を求めるようになった.これも人間がそうさせたのだから仕方がない.
カラスは分類学上,鳥類綱スズメ目カラス科カラス属で,カラス科は世界に約100種類いて,日本には11種類がいる.この仲間には,オナガ,カケスなどがいる.日本のカラスは,ハシブトガラス,ハシボソガラス,ワタリガラス,ミヤマガラス,コクマルガラスの5種類がいる.よく見るのがハシブトとハシボソで,前者は嘴が太くて額が出ているが,後者は嘴が細く額がなめらかである.ハシブトは「カア,カア」と澄んで鳴き,ハシボソは「ガア,ガア」と濁って鳴く.
カラスの濡れ羽色というが,まっ黒な羽と鋭い嘴と,狡賢いような目で見つめられると寒気がする.まして頭の上をサッサッという羽音で飛ばれると不気味だ.
カラスは朝早い.落語の「明烏」にもあるが夜明けから鳴く.ある調査によれば日の出の35分前から鳴くといい,清少納言も枕草子で「からすあつまりてとびちがいなきたる」と煩く思っていたようだ.そして「夕焼け小焼けで日が暮れて〜」という頃塒に帰っていく.
カラスは3月下旬頃から巣作りを始め,これに23日を要し,産卵数3〜5個,抱卵期間20日,育雛期間が35日,孵化率90%,巣立ち率57%が平均で5月下旬に巣立つのがハシボソ.ハシブトは約1カ月ずれる.
餌は農作物の種や木の実が主で,昔から「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」といわれている.この他に野ネズミや蛙などの動物性のものも餌にする.特に動物の目玉が好きで,死んだ豚の目玉をよく突っつく.だから幼児を乳母車に乗せた母親が目を離したすきにカラスに襲われ,幼児が失明したという話を聞いたことがある.
「烏合の衆」といわれるように,カラスは群で生活し鳴き声で互いに知らせ合い集団で塒を持つ.平均寿命は10年という.カラスは頭がよく,九官鳥のようにものまねをする.ハシブトの脳は約10gで,鶏の約3倍.脳 1mm3当たりの神経細胞は約2万個で鶏の約6倍.脳細胞の配列も高密度で高等動物並.体重比脳の重さ(脳化指数)は,人間は0.86だがカラスは0.16で,サルには及ばないがイヌの0.14,ネコの0.12を上廻っている.カラスは偉いが恐い.どう共生するか.
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