まったく困ったもんだ.宗男クンも清美チャンも泣きだすし,紘一クンは渋々,裕クンはふんぞり返って辞めた.みんな悪いことをやって職を失うことになった.
過日呑み仲間の暑気払いでの話題.一人が話を続けた.永六輔の「職人」という本にあったと.職人とは仕事に生きる人で,人間訓に満ちたものをもっている.彼らは職業に貴賤はないが,生き方に貴賤はあると自負し,自らの職業に徹している.つまり,自分なりの感動的人生訓をもって生きている.だから,貰った金と稼いだ金ははっきり区別し,何だか分からない金は決して貰ってはいけないと自らに厳しく,そうした規律を心得ている.
職人さん達は,高学歴とか資格試験とかに縁のない人も多いだろうが,長い現場経験と修行を積んだ結果到達した世界をもち,その間に多くの人達とのつき合いから生まれた人生の機微と哲学をもっているのだという.
そして職人さんは,いつも自分の仕事の仕方に改良を加え,腕を磨き,不測の事態にどう対応し修復するかの術,つまり危機管理の方法を心得ている.このことを今の政治屋に是非話さなけりゃいけないと仲間は嘆く.
さて,ひと口に職人さんといっても色々な職種の人がいるが,一方では今の社会は資格社会である.単に経験の社会ではなく,何でも資格化の傾向に向っている.資格化しずらい職種まで名称をこじつけて資格化し,その養成と称して学校や通信教育が顔をきかせている.経験の世界は極少化され,近代化,合理化,機械化,単純化の風潮は,職人さん達の世界を亡ぼすかも知れない.
仕事に生き,仕事によって鍛えられ磨かれた人間性と人情が失われていくことを心配するのだ.国会にも職人肌の議員は少なく,政治資金に名を借りて金を集める.
最近,資格化の傾向にあるとすれば,議員にも資格制度を設け,資格試験に合格しなければ立候補できないようにすると良い.でも誰がその試験をするかが問題だが.
堅い話で恐縮だが,道徳,倫理を意味するmoralという語があるが,モラルはもともと習俗,習慣を表すmosというラテン語からきているという.モラルは単にこうしなさいという題目ではなく,人々にしみ着いた良習慣で,正しいと思われることが身に着いていなければ役に立たず,普段の生活に根づいてなければならない.
その限りでは,国家社会のために働く気概も,モラルも見当たらない議員がいるように見受けられるのは残念.
昔の代議士は,一期やると井戸と塀きり残らないといわれながら清貧に甘んじたと聞く.今では歳費も秘書給与も受けているのに,まだ政治献金といって金を集める.なぜそんなに金が要るのか庶民には分からない.
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