地方会だより

北 海 道 獣 医 師 会 だ よ り

森 田  彰(北海道獣医師会専務理事)

 北海道獣医師会は,平成14年7月現在2,792名でその構成は,ほぼ,産業動物関係950名,小動物関係500名,家畜衛生関係公務員200名,公衆衛生関係公務員450名,大学研究機関150名,その他500名となっている.
 年齢構成では,40歳未満28%,40歳代26%,50歳代20%,60歳以上26%となっており,職場をリタイアした後も会員として会に協力していただいている方が多く心強いかぎりである.
 このような中,会の運営も,会員の意向を反映しつつ,多様な職種間の連携と協調を軸に潤滑油の役割を果たすとともに高齢者の会務への参画を模索している.
 北海道獣医師会のおもな行事は次のとおりである.

 1.北海道獣医師大会・三学会の開催
   毎年9月に北海道獣医師大会と北海道地区三学会を併催している.
 北海道獣医師大会は,会創立以来毎年開催され,今年で53回目となり,9月12日旭川市で会員など700名が参加,開催される.
 大会では,それぞれの時代を背景とした獣医事関係の懸案事項を提案し,関係方面に建議要請を行っている.
酪農・畜産の発展,公衆衛生・家畜衛生の向上,伴侶動物・野生動物の愛護と保護管理,獣医学術の向上,国際交流など,会員それぞれの分野での幅広い活躍が認められ,関係者の理解と協力を得てこれら諸問題を逐次解決してきた.
 北海道地区三学会(産業動物獣医学会,小動物獣医学会,獣医公衆衛生学会)は獣医師大会に併せ開催され,9月12日の午後と13日の2日間に亘り旭川市で開催される.
 本年の発表演題は,産業動物64題,小動物51題,獣医公衆衛生では野生動物関係を含め18題で合計133題となり,年々充実した学会となっている.
 北海道は元来産業動物の発表が多かったが,小動物も年々発表題数が多くなり,小動物関係者の活躍が目立ち,昨年は産業動物を上回る発表があり,産業動物関係者の奮起を期待したが,本年はそれに応え活力を取り戻してきた.
 毎年,発表者の中から優秀な論文に対し,北海道地区学会長賞と北海道獣医師会長賞を授与している.その他,博士号を取得した会員の顕彰を行い,学術面での振興を奨励している.

 2.獣医学術講習研修会の開催
   北海道獣医師会は,本部と13支部で構成されている.
 獣医技術の進歩,口蹄疫・BSEなど新たな感染症の発生,小動物医学の専門化,狂犬病の侵入防止対策,野生傷病鳥獣の診療技術などに応えるための研修講習会を日獣,北獣,北獣各支部の主催で13年度は31回開催し,1,446名の会員が研鑽している.
 また,食肉衛生検査所と臨床獣医師と症例検討会を例年開催する他,14年3月にはBSEシンポジウムを札幌市と北見市で開催,牛肉の安全性を訴え消費者など450名が参加された.

 3.部 会 活 動
   本会会員数も年々増加し,職域も広汎となってきたことから広く会員の意見を事業に反映するための機関として専門部会が昭和47年から設置された.
 当初は大動物臨床部会,小動物臨床部会,学術部会,行政部会でその後国際協力部会,野生動物部会が設置され,それぞれ専門的な立場から意見をいただき会の事業運営に反映させている.
 その他特別委員会として,飼育動物診療に係るトラブル解決のための飼育動物獣医事対策委員会(狂犬病事故対策も含む),学校飼育動物の対応推進のための学校飼育動物専門委員会を設置している.

 4.国 際 交 流
   獣医学術の国際交流により獣医学知識の習得と技術水準の向上および国際親善を図るため次の事業を行っている.
ア.  ハノーバー獣医科大学などにおける産業動物臨床実習
 平成4年からドイツ獣医科大学において産業動物の臨床研修を実施している.
 平成14年度はドイツ・ハノーバー獣医科大学牛病クリニックを中心に8月14日から9月24日までの約1カ月間会員3名が産業動物の臨床技術研修を実施する.
 現在までハノーバー大学を中心に会員32名が参加し,会の中堅として活躍している.
イ.  JICA獣医技術研修の実施
 平成8年度から北海道獣医師会が国際協力事業団から業務委託を受け,開発途上国の獣医師を受け入れ,産業動物の診断治療技術を中心に「獣医技術研修コース」として予防衛生,食品衛生など獣医学知識と技術の向上を図っている.
 平成14年度は8月26日から11月22日の約3カ月間,ケニア2名・ボリビア1名・タイ1名・象牙海岸2名,合計6名の獣医師で,北海道大学,酪農学園大学,石狩家畜保健衛生所,早来食肉衛生検査所,北海道NOSAI研修所など会員の協力を得て実施する.
 これまで16カ国36名の獣医師を受け入れている.
ウ.  韓国慶尚北道獣医師会と姉妹提携
 獣医学術の交流と友情を深め,相互の発展を目的として昭和54年韓国大邱市で姉妹提携が結縁され,以来本会から5回訪韓し,慶尚北道獣医師会から4回訪日され,両獣医師会の友好交流が続けられている.

 5.北海道獣医師会雑誌(北獣会誌)の発刊
   昭和26年5月北獣会誌創刊以来50年に亘って今日まで実に608号,毎月休刊することなく続いていることは特筆すべきものである.
 会員の研究成果の論文(原著論文)・症例報告・資料・情報の提供,会員の投稿,会の連絡事項など北獣会誌を通じての相互の融和と研鑽に資している.
 なお,平成9年から優秀論文表彰制度を設けて,産業動物・小動物・公衆衛生(野生動物)の各分野1題ずつの原著論文につき,大会時に表彰して学術研究の奨励と投稿促進を促している.

 6.獣医学部卒業生の顕彰
   北海道には,北海道大学・帯広畜産大学・酪農学園大学があり,それぞれの獣医学部(科)の優秀な卒業生に,日獣会長賞にあわせて北海道獣医師会長賞と記念品を授与し会長あるいは副会長が出席し,獣医師会の啓発と勧誘活動を行い,新しい会員の入会推進を行っている.

 7.野生傷病鳥獣保護委託事業
   平成8年度から,北海道獣医師会が北海道から業務委託を受け,傷つきまたは病気にかかった野生鳥獣の保護活動を行っている.この事業は動物病院に持ち込まれた傷病鳥獣の治療費などを助成するもので,平成13年度は105動物病院などの協力を得て鳥など37科種1,182頭羽の治療費助成をし,野生動物の保護に努めている.(事業委託費約600万円・道費助成)