会  議

 第59回 通常総会の概要

I. 日  時: 平成14年6月24日(月)13:00〜17:00
II. 場  所: 明治記念館 2階「蓬莱の間」
III.出席者:〔日本獣医師会〕
  会  長: 五十嵐幸男
  副会長 : 金川弘司,辻 弘一
  専務理事: 大森伸男
  地区理事: 坂井清治,大島寛一,中川秀樹,
手塚泰文,菅沢吉登(田代昇一代理),串田壽明,中間實徳,
湊  惠(大眉 博代理),藏内勇夫
  職域理事: 竹内 啓,小林悦夫,山縣純次,
藤沢忠世,長谷川昂史,森田邦雄
  監  事: 鈴木兵一,玉井公宏,原 京平
  事務局 : 朝日事務局長ほか
     〔会  員〕
  全国55都道府県市獣医師会(出席者104名)
     〔来  賓〕
衆議院議員: 北村直人議員,城島正光議員
農林水産省: 松原謙一・生産局畜産部長,伊知地俊一・畜産部衛生課長,新川俊一・衛生課課長補佐,谷 義人・衛生課獣医療係長,柴田 豊・経営局保険監理官,関谷順一・保険監理官補佐
厚生労働省: 尾嵜新平・医薬局食品保健部長,高谷 幸・食品保健部監視安全課長,中谷比呂樹・健康局結核感染症課長,桑崎俊昭・結核感染症課情報管理室長,中嶋建介・結核感染症課課長補佐,加藤政治・結核感染症課獣医衛生係長
環境省: 小林 光・自然環境局長,黒田大三郎・自然環境局野生生物課長,神田修二・自然環境局総務課動物愛護管理室長
社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会:今井正夫・副会長
財団法人全国競馬・畜産振興会:織田信美・管理部長
社団法人全国動物薬品器材協会:田中正三・専務理事
社団法人畜産技術協会:林 茂昭・専務理事
社団法人中央畜産会:香川莊一・専務理事
社団法人動物用生物学的製剤協会:堤 孝正・常務理事
社団法人日本獣医学会:土井邦雄・理事長
社団法人日本動物保護管理協会:鈴木一則・会長
社団法人日本動物薬事協会:貝塚一郎・理事長
社団法人日本獣医師会:中村 寛・顧問(元会長)
IV. 事務局: 朝日光久事務局長ほか
V.議 事:
  第1号議案 平成13年度事務事業報告及び決算報告の件
  第2号議案 平成14年度事業計画及び収支予算の件
  第3号議案 平成14年度会費及び賛助会費の件
  第4号議案 役員の補欠選任の件
総会議場(明治記念館)
VI.概 要:
  【開  会】
   朝日事務局長から出席会員数が定足数を満たしており,本総会が成立する旨の報告が行われて開会する.
 また,5月14日,獣医師としての強い責任感から自ら命を絶たれた,BSEの検査に従事されていた北海道獣医師会会員獣医師に対し,哀悼の意を表して黙祷が行われた.

  【日本獣医師会 五十嵐幸男会長挨拶】
 

五十嵐幸男会長
  皆さん,こんにちは.今日は梅雨の中休みと申しますか,まあまあの天候に恵まれまして総会が開催されるに至りましたことを心から感謝申し上げるとともに,日ごろの皆様のご苦労が天まで幸いしているなというように感じているわけでございます.
 きわめて政務ご多忙の中に来賓として,日ごろ要請活動等を中心に大変お世話になっており日ごろ尊敬しております北村代議士にお越しいただきました.また,関係の農林水産省からは松原畜産部長,ご承知のとおり獣医師を理解していただき,私たちは頼もしく,また大変頼りにいたしております.また厚生労働省のほうからは,やはりこれもお忙しい中で尾嵜部長にお越しいただきました.それから環境省からは自然環境局の小林局長にご臨席いただいております.またさらに,友好団体である中央畜産会からは香川専務理事,それからわれわれが非常に慕っておるところの日本獣医学会からは土井理事長さん等々,多数のご来賓のご臨席をいただいて,この総会が錦上さらに華を添えていただいております.
 もう一つ申し上げますのは,かつて日本獣医師会長として敏腕をふるわれました中村先生が,わざわざ大阪から皆さんのお顔を見たいということでおいでいただいております.すでに皆さんにご報告のとおり中村基金も創設していただき,また,絶版になっておりました『科学者としての獣医師のありよう』という著書を1万5,000冊増刷をして,若い会員の方々にぜひ見ていただきたいということで,近く各県にご送付申し上げることになっております.
 そのように,非常にわれわれ獣医師会が各官庁,団体等からいま期待をされており,BSEの発生を境にしまして,獣医師のこの集団に対しての注目と申しますか働きに対して,関係の皆さんからご期待とともに重い使命を与えられているなという実感をしております.BSEに関しましては,先ほども尊い犠牲者が出たということは残念でございますが,これを機会に私たちはお互いに力を合わせて,BSE対応をはじめ危機管理に対するしっかりとした働きをしていきたいと思っております.
 また,各関係官庁が鋭意努力しましてBSE対策を急いでおられます.それから今日おいでの北村先生が自民党の特別委員会の幹事長という立場もございましたので,私たちはわれわれの会員の皆様の期待するご意見を申し上げて,その委員会に反映させていただき,着々とその実績が表れてきております.また,一方においてはわれわれにBSE関係に対する連携動作の強調というものを求められてきておりますし,獣医師法の一部改正につながって責任が明確になってまいったという認識がございます.
 また,一方におきましては狂犬病,これは古くて新しい病気でございますけれども,防疫については一部登録等が中央から地方委譲,市町村委譲になったということで,私たちは国民を守るこの大事な注射の率の減退,あるいは登録の減少ということにならないように,それぞれ各県地方獣医師会におきまして対応をしっかりとしていただきたい.私たちも中央に対してお願いすることは積極的にお願いして,国民を守るというこの大きな予防注射事業を衰退させないような努力をしたいと決心しているわけでございます.
 また,学校飼育動物に関しましても,すでに学術会議もこれを取り上げまして研究に入っているわけでございまして,群馬県をはじめ各県それぞれの真剣なる対応をしていただいていることに感謝いたします.今後子供たちの情操教育の一環をしっかりと担っていくんだという努力をしていきたいと思っております.
 また,一方におきましては介助犬法と申しますか,長い名前で「良質な身体障害者補助犬の育成及び利用の円滑化に関する法律」というものが,これも北村先生はじめ関係官庁のご努力によりまして日の目を見た.同時に,獣医師がしっかりとその介助犬の健康を守る,健康検査をするというような責任も出てきているということでございます.
 いろいろ申し上げることはございますが,BSEのシンポジウムを各県それぞれの趣向において開催していただいたということ,あるいは名称に関する報道機関に対する要請等々,皆さんの努力によって一般の国民に獣医師会というものがこのような問題にも尽力しているんだという認識をしていただいたと思います.各県の会長さんたちを中心として23カ所においてのシンポジウムを開催したこと,あるいは小動物医療機関においてPRのパンフレットを配布し,食の安全性の説明をしていただいたことに感謝申し上げます.このことはきわめて好評であるので,農水省はさらに今年度も予算化されましたので,また各県それぞれに特色あるシンポジウムなりBSEならびに肉の消費に対する安全観と申しますか,そういうPR活動を続けていただきたいと考えておるわけでございます.
 いろいろあとでまた事務局のほうから,あるいは担当理事のほうからご説明申し上げますが,今日はとにもかくにも来賓の先生方がこれだけ忙しい中でたくさんお見えいただいたということには,本当に心から感謝いたしたいと思います.なお,中村前会長もますますこれからもご健康で,われわれのためにご指導いただくことを心からお願いし,また会員の皆様のご健康,ご健闘,そしてご家庭のご幸福を祈りながらご挨拶を終わります.ありがとうございました.

  【来賓ご挨拶】
  【獣医師問題議員連盟 北村直人衆議院議員】
 

北村直人議員
  大変高い席でございますけれども,本来でありますと三塚先生が出席をされ皆様方に親しくご挨拶をするところでございますが,海外出張ということでございます.皆様の仲間の一人でございます北村が,三塚先生になり代わりましてご挨拶を申し上げますことをお許しいただきたいと思います.59回目の定期総会,五十嵐会長さんはじめ役員の皆さん,そして都道府県のそれぞれの会長さん,あるいは代表の皆さん方が一堂に会しての今日の総会,このように盛会に開催できますことを,改めてお祝いとお礼を申し上げる次第でございます.
 先ほど五十嵐会長さんから,この1年間のいろいろなことについてご報告の中にございました.まさしくO- 157から始まり口蹄疫,そして昨年は9月11日に,日本ではまず出ないであろうと言われていたBSEが1頭発見されたわけであります.全部で4頭いまのところ発見されているわけであります.その中において,痛ましいこととしてわれわれの仲間であります彼女が命を絶たれた.私も同じ北海道の釧路市に住んでいる者としまして,そしてまた昨年10月のあのBSEが発生したときに,釧路のこの食肉センターで彼女の手を握って頑張ってくださいよと言って激励をした一人としまして,本当に身の詰まる思いをしているところでございます.
 あの当時,学術・学問的には非常に大きな問題があったわけでありますが,われわれ国政に参加するものは正義的な判断ということで,疑わしきものはすべて焼却処分にするという判断をしたところであります.今日ご出席の農林水産省,あるいは厚生労働省には本当によくやっていただきました.寝る暇も惜しまず,そして何よりも全頭検査ということでは都道府県の現場で働いておられる同じ仲間の獣医師の先生方に大変なご尽力をいただきました.それも,発生から1カ月という短い中でその体制を取っていただいたということでございます.頭の下がる思いがいたしましたし,また獣医学というこの学問を学んだ獣医師の先生方が天職だ,国民消費者の皆さん方に自分たちが前面で努力するんだという気迫のもとでこの体制を取っていただいたことは,私は頭の下がる思いをしているところでございます.それがいまの消費回復につながってきたというように考えているところでもございます.ぜひ,このBSEを日本獣医師会がOIEに向かってさらにデータを蓄積されながら,日本がBSEの大家になるんだという思いの中で研究機関の皆さん方や,あるいは今日ご出席の先生方のご指導をいただきながら,世界に発信できる日本獣医師会になっていただくことを重ねてまたお願いを申し上げる次第でもございます.
 そのことを契機に,「食の安全に関する特命委員会」というものが小泉総理の指示で自由民主党の中に発足いたしました.リスク分析,その中にリスク評価,リスク管理,リスクコミュニケーション,これらをどうしていくか.評価と管理を明確に分けていく.そしてその中で,消費者やいろいろな方々を交えたリスクコミュニケーションをどう作っていくか.このことを私は事務局長として,野呂田芳正元農林水産大臣特命委員長のもとで議論に議論を重ねて,総理にその提言をまとめて先般この?官邸でその提言を総理に提出したところでございます.それが,いま新聞,マスコミから流れてくる食の安全委員会につながっていくわけであります.これはこれで私は大変素晴らしいことであるということで,その後のリスク管理をする農林水産省,厚生労働省,われわれは獣医師の一元化ということに大変苦労してきているわけであります.またぞろ,瞬きになるようなそういう行政の仕組みになるとするならば,この食の安全委員会ということがちょっと違ったことになってしまうなという思いを持ちながら,今回松原部長,そしてまた厚生労働省の尾嵜部長等々のご指導もいただきながら,このそれぞれのリスク管理をする場所での獣医師としての働く場所を大きく,そして力強いものにしていただきたいと思っているところでもございます.
 最後に補助犬のことが出ました.聴導犬,盲導犬,介助犬と,これらがまとめて補助犬としてこの法律を作ってまいりました.一にも二にもそういった補助犬のきちっとした健康管理をするのはわれわれ獣医師の役目でございます.そういったことを,省令ではありますが明確にその省令の中に組み込ませていただきながら,今後もこの補助犬に関する小動物を含めたわれわれの大切な人生の伴侶となり得る,こういった補助犬のそういうあり方について獣医師の先生方のさらなるご指導をいただきながら,日本獣医師会が前面に立ってこの厚生労働省の省令に立ち向かっていただくことを,また重ねてお願いを申し上げる次第でございます.
 最後になりましたが,本当に現場で働いておられるわれわれの仲間,獣医師の先生方がこの司,司で大変なご尽力をいただき,またそれを統括していただいておりますそれぞれの役所のポストについている皆さん方が,力強いご指導とご協力をいただいたその賜物でございます.どうぞ都道府県の代表の皆様方も,それぞれの立場でこういった私たちの仲間が頑張っていることに誇りを持ちながら,日本獣医師会が打って一丸となったこれからの国民に向かってのいろいろな面でのご指導を重ねてお願いを申し上げながら,長くなりましたが,三塚会長になり代わりまして今日のお祝いとお礼のご挨拶とさせていただきます.本日は誠におめでとうございます.

  【農林水産省生産局 松原謙一畜産部長】
   農林水産省生産局の畜産部長の松原でございます.6月11日付をもちまして畜産部長を拝命いたしました.先ほど来,会長あるいは北村先生からお話がございましたとおり,昨年9月のBSEの発生以来,食肉の偽装表示問題でございますとか大変獣医畜産を取り巻いて多難の時期でございます.日本獣医師会ならびに会員の先生方のご指導,ご支援なくして本務を尽くすということはなかなか難しかろうと思ってございます.先生方の絶大なご支援とご協力をお願いする次第でございます.
 本日,生産局長がまいりましてご挨拶申すべきところでございますが,よんどころない用務でございまして,私が生産局長の挨拶を預かってまいってございます.誠に僭越でございますが代読をさせていただきます.お許しを願いたいと存じます.
 「本日ここに,社団法人日本獣医師会第59回通常総会が開催されるにあたり,一言ご挨拶申し上げます.本日ご列席の皆様方におかれましては,日ごろから獣医療の提供を通じ,わが国畜産の健全な発展,飼育動物に関する保健衛生,および公衆衛生の向上にご尽力をいただき深く敬意を表する次第であります.
 ご承知のとおり昨年9月10日,わが国で初めて牛海綿状脳症,いわゆるBSEの発生が確認されました.この件につきましては皆様方に多大な心配をおかけしておりますが,農林水産省といたしましては厚生労働省と連携し,昨年10月18日以降,安全な牛以外は食用としても飼料原料としてもと畜場から出て行くことのないシステムを確立したところであります.5月13日には北海道で国内4頭目のBSE感染牛が確認されましたが,これはBSE全頭検査体制が引き続き有効に機能していることを示すものであります.今後とも国民の皆様に安心していただけるようBSE検査等を的確に実施していくとともに,信頼回復に向けて万全の取り組みを期してまいる所存であります.
 このような情勢を踏まえ,農林水産省としても行政を消費者に軸足を移して展開することとし,このために設計図として食と農の再生プランを提案いたしました.今後もこのプランに基づいて,食の安全と安心を何よりも中心に考え,人と自然が共生する美の国づくりを進めていく所存でございます.このような中,小動物医療関係につきましては,小動物の家庭,社会における役割の変化を背景に社会的関心が高まっております.農林水産省といたしましては,小動物についての保健衛生情報の収集,提供等を通じ,適切な獣医療の促進に努めています.
 獣医師皆様方におかれましても,診療現場のみならず食品産業等さまざまな分野において,質の高い獣医学の知識および技術の提供がより一層求められており,社会における役割もますます重要なものとなってきております.今後とも獣医学の知識,および技術の提供,獣医学術の研究を通じ,日本獣医師会が引き続き主導的な役割を果たされるとともに,より一層のご尽力を賜りますことをお願い申し上げます.結びに,社団法人日本獣医師会のますますのご発展とご出席の皆様方のご健勝を祈念し,本大会の開催にご尽力された関係者の皆様方に敬意を表しまして,私の挨拶といたします.平成14年6月24日,農林水産省生産局長・須賀田菊仁.代読」.本日は誠におめでとうございます.

  【厚生労働省医薬局 尾嵜新平食品保健部長】
   ご紹介いただきました厚生労働省の尾嵜でございます.本日は通常総会にお招きをいただきましてありがとうございます.祝辞を用意しておりますので読ませていただきます.
 本日ここに,第59回社団法人日本獣医師会通常総会が盛大に開催されることを心からお喜び申し上げます.皆様方におかれましては,平素から公衆衛生行政の推進に多大なご協力を賜り厚く御礼申し上げます.
 さて,昨年9月に千葉県において国内初の牛海綿状脳症,いわゆるBSEの発生が確認され社会的に大きな問題となりました.厚生労働省といたしましては,農林水産省と連携を図りながらと畜検査における全頭のBSEスクリーニング検査の実施,いわゆる特定部位の除去,焼却の義務付け,牛由来原材料を使用した食品の自主点検,さらに背割り前の脊髄除去の推進などの対策を講じてきたところでございます.
 また,農林水産大臣および厚生労働大臣の私的諮問機関として設置されたBSE問題に関する調査検討委員会が4月に取りまとめた報告書においては,と畜場におけるBSE全頭検査をはじめとする厚生労働行政の施策に一定の評価がなされている一方,縦割り行政の弊害や厚生労働省と農林水産省との連携不足などのご指摘をいただきました.これを受けて,食品安全行政に関する関係閣僚会議が設置され,先般リスク評価の実施を中心とした食品安全委員会を内閣府に設置するとともに,食品安全基本法を制定することが決定されたところでございます.厚生労働省としましても,新組織の設置や基本法の制定を踏まえて組織のあり方,食品衛生法改正等の検討を進めているところであり,国民の皆様の食品の安全に対する信頼の回復に努めてまいる所存でございます.
 また,狂犬病対策につきましては飼育犬の登録,予防接種の実施等につき長年にわたりご協力をいただいた成果として,周辺国を含む多くの国々で狂犬病が発生している中で,40年以上発生防止が図られていることは,皆様方のご協力の賜物と感謝申し上げる次第です.昨年,健康局において貴会の要望も受けて狂犬病発生時の危機管理マニュアルや,動物由来感染症ホームページを作成したと聞いております.また,今国会で成立いたしました身体障害者介助補助犬法で,補助犬の衛生の確保等について規定されたことから,健康局においては貴会のご協力を得てそのためのガイドラインを作成しているところでございます.今後とも,さらなる動物由来感染症対策の充実強化を図る所存であり,引き続き貴会のご協力を賜りたくよろしくお願いを申し上げます.
 さらに,獣医学分野が他の分野と連携を図ることにより,内分泌かく乱化学物質やダイオキシンなどの環境汚染物質,バイオテクノロジー応用食品等の問題など,食の安全をはじめとする公衆衛生分野においてご貢献いただくことがますます期待されております.今後とも食品の安全確保対策,動物由来感染症対策など種々の施策の充実に努めてまいる所存でございますので,これら施策の推進にあたり日本獣医師会のご理解とご協力を引き続きよろしくお願い申し上げる次第でございます.
 最後になりましたが,今後の日本獣医師会のますますのご発展と,本日お集まりの皆様方のご健勝を祈念いたしまして私のご挨拶とさせていただきます.平成14年6月24日,厚生労働省食品保健部長・尾嵜新平.本日はおめでとうございます.

  【環境省自然環境局 小林 光局長】
   皆さん,こんにちは.環境省の自然環境局長の小林と申します.本日は第59回の日本獣医師会の総会がこのように盛大に開催されますこと,本当におめでとうございます.実は私ども21世紀の初頭,昨年の1月に環境省が発足いたしました.その際に従来の野生生物保護に加えまして,動物の愛護に関する法律を所管するようになりまして,ペット行政,その他の行政も合わせて担当することになりました.日ごろより獣医師会の皆様方に大変お世話になっております.
 具体的に申し上げますと,たとえば私ども従来,絶滅の恐れのある野生生物,野生動物の保護ということで取り組んでまいりましたが,ツシマヤマネコですとかイリオモテヤマネコとか,そういう野生の猫に対する家猫からの感染ということが心配されている中で,獣医師会の皆様方のお力添えをいただきまして,家猫の不妊手術だとかそういうことをやっていただくとともに,たとえば日本海におけるタンカー事故はナホトカ号のタンカー事故がありましたが,そういったなかで油汚染による水鳥の救護というような体制の整備が求められておりましたが,東京の日野市に鳥類の救護センターを設置するにあたりましては,絶大なるご支援を賜りまして本当にありがとうございました.
 最近ではペットの飼養に関しても,基準を定めるにあたりまして獣医師会の皆様方からいろいろなご意見を賜りまして取り組んでいるところでございます.この中でいちばんわれわれとしてこれから力を入れていかなければならない問題は,ペットに対する識別をしっかりするということでございます.たとえば,マイクロチップを導入してしっかりとした飼い主責任を明確にしていくことが大事だと考えているところです.と言いますのは,ペットが野生化をして在来の野生生物にいろいろな影響を与えるような事態,輸入種の問題というようなことで総括されて言われておりますが,そういった問題が非常に多発しております.在来の野生動物を保護していくためにもペットのしっかりした管理ということが必要でございまして,そのためのマイクロチップとか識別の方法というのをこれから普及させていくということが大事かと思っています.そういう意味で,日本獣医師会の先生方のご協力,ご支援を今後ともいただくようなことになるかと思います.そういういろいろな諸々の日ごろからのご支援,ご協力に今日はお礼を申し上げまして,また今後とものご協力をお願い申し上げまして,私のご挨拶といたします.本日は本当におめでとうございます.

  【社団法人中央畜産会 香川莊一専務理事】
   中央畜産会の山中会長にご招待いただいたわけでございますが,本日国会等の関係で会長は出席できませんで,私は専務理事の香川でございますが,代りましてお祝いの言葉を述べさせていただきたいと思います.
 畜産関係の問題等につきましては,先ほどもすでにいろいろお話がございました.私どものほうからあえて申すことはございませんけれども,昨年新しい世紀の出発ということで私ども大変期待をしておりましたけれども,畜産におきましてはご案内のような今までにない厳しいBSEの発生という問題が起きましたし,また世界的に見ましても多発テロの発生とか,非常に激動の幕開けになったというふうに思っております.このBSEの影響につきましては,大変大きな影響を畜産は被りましたけれども,幸いに非常に敏速な対応を種々の対策として打っていただきました.お陰様でやっと最近では落ち着いてきた.世論もご案内のように非常に落ち着いてまいりました.幸いに畜産物の価格,牛肉の価格も回復の方向に向かっております.何とかこれからまた建て直しができるのではないかというふうに思っております.
 私どもの山中会長も,先週私どもの総会もございましてそのときの挨拶にも,このBSE問題を一つのわれわれの大きな問題としてとらえて,それにこだわるのではなくてこれを乗り越えて新しい畜産を築いていかなければならない.それは単なる生産だけではなくて,やはり消費があっての生産でございますので,そういうものを含めて一緒に頑張っていこうではないかというふうな話がございました.そういう意味で,私どももこの問題を乗り越えながら取り組んでいきたいと思っております.
 それにつきましても,このBSEについては獣医師会の皆さん方の全面的なご努力があったということが,こういうふうな早い段階での問題解決に向かったというふうに思っておりまして,改めて感謝申し上げたいと思う次第でございます.ただ,残念なことには先ほどお話がございましたように,このために若い命が失われたということで,改めて心からお悔やみを申し上げてご冥福をお祈り申し上げたいと思う次第でございます.
 私ども,これから畜産につきましては,食料の問題としては先ほどからお話がございましたような大きな問題がございます.これにつきましてはさらに一層私どもも努力しなければなりませんし,そのための新しい対応,たとえばトラサビリティーの問題で牛一頭一頭に標識を付けていくとかこういう問題もございます.これを克服しなければなりませんし,また消費者の信頼をどうやって回復するかという大きな課題も持っております.それについてはこれからの努力が大変とは思っておりますが,頑張っていきたいと思います.
 また,そういうものに加えましていろいろ新しい問題等出てきております.アニマルセラピーの問題は皆さん方のほうが先輩でございまして,いろいろとまた教えていただきながら私どもも努力しなければいけませんが,最近の問題といたしまして学校のほうのカリキュラムが変更になり体験学習というものが取り入れられるようになりました.最近徐々に牧場,あるいは農場というところを学校の生徒が訪れるようになっております.そういう中で命の大切さ,あるいは自然の大切さというものを学んだということで,先般も新聞に中学生が投書しておりましたが,はじめて動物に触れ命の大切さを教わったというふうなことが書かれております.こういうものも,私どものこれから取り組むべき仕事だというふうに思っております.新たな委員会を設けたり,あるいはそういうための体制整備をどうするかということを考えており,そういう意味では獣医師会の皆様方のほうがはるかに先輩でございますし,普段いろいろと私どもにご指導をいただきご協力をいただいております.これからもその面で,改めてご指導,ご協力をお願いする次第でございます.
 本日は,第59回の獣医師会の総会ということでこういうところでご挨拶をさせていただきまして,大変光栄に思っております.獣医師会の一層のご発展と,会員の皆様方のご健勝,ご発展をお祈り申し上げ,粗辞でございますが私のお祝いの言葉に代えさせていただきます.今日は本当におめでとうございます.

  【社団法人日本獣医学会 土井邦雄理事長】
   ただいまご紹介にあずかりました,日本獣医学会の土井でございます.本日は日本獣医師会第59回通常総会にお招きいただきまして,五十嵐会長はじめ会員各位に心からお礼を申し上げます.
 ご存じのとおり,わが国ではこの3年ほどの間に口蹄疫,およびBSEの発生に遭遇いたしまして,特に後者に関しましては生産者,消費者双方に深刻な事態を引き起こしております.このような不幸な出来事が繰り返されることがないように,われわれ獣医療に携わるものといたしましては,今後二,三の点について考え直していくことが必要ではなかろうかと考えております.
 まず,現在の獣医学の教育研究というものは,動物医療から生命科学まで実に広範な分野をカバーせざるを得ない状況下に置かれております.しかし,ここでもう一度獣医学の原点に立ち返って,畜産を支える基盤としての獣医学というものについて真剣に考え直す必要があろうかというふうに思っております.
 次に,獣医学教育の今後の大きな柱といたしまして,家畜生産から畜産物消費に至るまでのすべての過程を見通すことができる危機分析,危機管理の専門家を早急に養成していく必要があるのではなかろうかというふうに考えております.さらに獣医学,獣医療に関与している各団体間の緊密な連携が,これからはもっともっと必要になってこようかと思っております.幸いに日本獣医師会と日本獣医学会は五十嵐会長のご理解とご協力を得まして,数年前から学術交流の場を増やすべく努力を積み重ねてきておりまして,少しずつではございますが,その成果が上がってきているものと感謝いたしております.
 最後に,日本獣医師会のますますのご発展を祈念するとともに,日本獣医師会と日本獣医学会との間で今後より活発な学術交流ができるように希望いたしまして,私の挨拶に代えたいと思います.どうも今日はおめでとうございます.

  【来賓の紹介】
   朝日事務局長から来賓の紹介が行われた.
  【祝電の披露】
   朝日事務局長から祝電が披露された.
  【日本獣医師会会長感謝状贈呈】
   日本獣医師会会長感謝状が以下のとおり贈呈された.
平成13年度学会年次大会の開催を受託して獣医学術の振興・普及に貢献した者
    社団法人 広島県獣医師会
  【獣医師会職員永年勤続表彰】
   さらに獣医師会職員永年勤続者に対して以下のとおり表彰が行われた.
・20年勤続表彰
   松田 良子(茨城県獣医師会)
・10年勤続表彰
   田鎖 京子(岩手県獣医師会)
   寺田 淑子(滋賀県獣医師会)
   宗  武司(奈良県獣医師会)
   名久井友子(和歌山県獣医師会)
  【議長・副議長選出】
   会長が仮議長に就任し,仮議長一任の声を受け,以下の2名を議長・副議長に選出した.
   議 長 中川平八郎(奈良県獣医師会長)
   副議長 桑島  功(千葉県獣医師会長)
  【議事録署名人の選任】
   議事録署名人については,議長一任の声を受け,議長が以下の2名を選任した.
   安保 佳一(宮城県獣医師会長)
   野田 周作(大阪府獣医師会長)
  【議  事】
  ≪第1号議案 平成13年度事務事業報告及び決算報告の件業務概況等の件≫
   本議案については,大森専務理事から重点事項等について報告が行われた後,金川副会長からBSE対策に関する補足説明がされた.決算報告では予算と決算の差異の大きな項目のみその理由とあわせて大森専務理事から報告が行われた(別記1.平成13年度決算報告書).続いて,原代表監事から平成13年度の業務執行,会計処理について適正に実施されていることを認める旨の決算監査報告が行われた.質疑応答では,基金会計における建物減価償却引当預金支出の計上と,今後の基金運用について質疑があり,これに対し大森専務理事から監督官庁の指導により建物の減価償却分について,これまでに積み立てを要した額を一括して13年度に計上したが,今後も毎年一定の所要額を計上する必要があること.基金管理については,この減価償却分を含め,法人の不測の事態に備えた資金準備の観点からの対応が求められると考えること.また,基金については,低金利が継続する中で運用益収入が大きく減少してきているが,ペイオフの解禁も踏まえ,一層の気配りをしていきたい旨等が回答された.続いて,現在,開業獣医師に配布されている狂犬病予防注射普及啓発ポスターは院内の掲示に限られているため,広報推進のためにも広く屋外へ周知できる掲示物作成の要望があった後,原案どおり承認された.

  ≪第2号議案 平成14年度事業計画及び収支予算の件≫
≪第3号議案 平成14年度会費及び賛助会費の件≫
   第2号議案,第3号議案は関連議案として,一括上程された.まず,平成14年度事業計画(別記2.平成14年度事業計画書)及び収支予算の件(別記3.収支予算書)について大森専務理事から要点について説明が行われ,ついで平成14年度会費及び賛助会費の件についても同様に説明が行われた.
 主な質疑応答としては,BSE関連知識普及事業の実施に関し,「牛肉需要回復事業」という名称の使用については,一般消費者にも事業を正しく理解できる名称に変更してほしい旨等の要望があり,大森専務より本名称は助成先である農畜産業振興事業団から指定された事業名であるため,事業名そのものの変更は困難であるが,シンポジウムの開催にあたっては従来どおり「正しい知識の普及・啓発等」のアピールは差し支えない旨等が回答された.続いて,狂犬病予防注射業務について,注射料金等の引下げを求める一部の市町村もあり,事業の運営に大きな影響を及ぼす可能性があることから,本会の対応について要望があり,本件については,大森専務理事から注射料金の全国一律設定は困難であるが,予防注射事業については,本会の働きかけもあり,今回,厚生労働省から地域における犬の登録,予防注射の実施に当たっては,都道府県が獣医師会への協力を求め,市町村と連携した運営体制を整備するよう通知されたところであり,1つの大きな柱ができたと考える旨等が回答された後,原案どおり承認された.

  ≪第4号議案 役員の補欠選任の件≫
   中部地区および四国地区選出の田代昇一理事および大眉 博理事からの役員の辞任届の提出を受けて,両地区から推薦された菅沢吉登氏(中部地区)および湊 惠氏(四国地区)を補欠選任とすることについて,承認を受けたいことが栗原役員選任管理委員長から説明され,異議なく承認された.

  【閉  会】
   議長・副議長が退任した後,中村 寛顧問(第7代会長:昭和48年4月〜昭和53年3月)元会長から現在の会の発展状況に感謝したいことを内容とする挨拶が行われた後,五十嵐会長から中村元会長の著書である「科学者としての獣医師のありよう」が再販され,ご自身の負担で各地方獣師会へ寄贈される予定であることの報告を兼ねた挨拶が行われ,閉会した.