馬耳東風

 
 今年の干支は午で,年男は643万人,年女は484万人,総人口の7.4%で去年の巳年よりともに少ないと.
 また去年1年の結婚は83万5千組(38秒に1組)で前年より5千組多いが,離婚も28万9千組(1分40秒に1組)で過去最高というから夫婦もあまり増えず,しかも晩婚化の傾向だそうでいよいよ少子高齢化か.
 ところで,今年は午年だから天馬空を駆けるがごとく,何かいいことありそうと期待していたが,蓋をあけてみたら新年早々ちっともいいことがない.言った言わないの政界茶番劇から族議員の暗躍,経済不況.それにも増して尾を引くBSE,畜産農家や関係業界も泣いているが牛も泣いている.もう少し早く危機感があれば,何千億の金を使わずに,また武部さんも汗かかずにすんだ.
 しかしもっと困ったのが雪印.関係者には古傷を逆なでするようで酷な話しだが,あれだけのことがバレたら救いようがない.昔仕事で雪印の人とつき合いがあったが,皆純朴でいい人たちばかりだったのに残念.
 北海道の農家に「牛飼三徳」を教えたのは宇都宮仙太郎という人で,先輩の福沢諭吉の勧めで大分から北海道に渡り,後に雪印グループの創始者黒沢酉蔵らと「北海道製酪販売組合」を起したのが1925年といわれる.
 この「牛飼三徳」とは,牛を飼うと第一に牛を相手に畑を耕せば,役人に頭を下げなくていい.第二に牛は嘘をつかないから一生懸命働くだけでいい.第三に牛乳を沢山飲んで牛肉を食べれば体にいいと.そして当時から畜産を支える獣医師が活躍していた.戦後も牛乳処理工場には酪農課があって,必ず獣医師がいて集乳から乳質改善,果ては嫁の世話までして貴重な存在だった.
 それが高度成長期になると機械化されて,雪印の経営者も労組もその功績を忘れ,60年代後半からもう獣医師は要らないと言ったのだそうだ.
 こうして酪農の本質を忘れ,畜産技術者の価値を忘れて拡張増産と収益に走った揚句,加工乳の食中毒事件となり,今回のBSEがらみの不正表示事件へと連がる.
 雪印は健土健民の創業精神を忘れ,郷土愛も失ったばかりか消費者を軽視したばっかりに,名誉あるあのブランドまで失いつつある.雪印の創業精神「牛飼三徳」は忘れられ,嘘をつかない牛にまで嘘をついてしまった.
 しかし開拓精神に根づいた雪印のこと,ふたたび北海道から元気に立ち上がるだろう.雪は一時融けてもまたその季節が来る.多分牛もそれを待っていると思う.

(寅)