|.方 針
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日本経済は,相変わらず低迷状態にあり,最近ではデフレ傾向のみならず,米国における経済悪化の影響等もあって,その先行きは予断を許さない誠に厳しい状況となることが懸念されている.
本会の財源の少なからぬ比重を占める基金の果実収入は,長期にわたる超低金利の大きな影響を受けて年々減少の一途を辿っており,平成13年度における果実収入は,過去において金利が最高水準にあった平成3年度における果実収入(1億1千百万円)の約18%,2千万円にまで落ち込むことが予想され,本会の財政事情は厳しくなる一方である.
このような中で本会では,事業規模,予算規模が年々拡大しているにもかかわらず,これまで可能なかぎり基金の適正かつ効率的な運用と事務の合理化・簡素化,諸経費の節減等に最大限努めながら対応してきたところであるが,これも限界に達しているのが現状である.
平成12年3月に出された組織財政委員会の財政運営に関する答申では,平成14年度から会費を値上げする必要性等が指摘されたところであるが,その反面,地方分権に伴う狂犬病予防事務の市町村への移譲,国における豚コレラ撲滅対策事業の推進等に関連して,地方獣医師会における財政事情が厳しくなっていることも否めないところである.
このため,平成13年度においても会費を値上げせずに前年度同様に基金会計の繰越金から所要額を一般会計の収入に繰入れるとともに,予算の全体規模については,下記事業を推進することとしておおむね平成12年度に準じて編成するものとする.
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||.事業の概要
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1.獣医師道の高揚に関する事項:
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獣医師道委員会の小委員会として平成12年11月に設置した「動物医療の基本姿勢の見直しに関する小委員会」において前年度に引き続き小動物医療分野における倫理規範について検討を行い,平成13年度内に「小動物医療の基本指針」を策定する.
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2.獣医学術の振興・普及および調査研究に関する事項:
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(1) |
日本産業動物獣医学会,日本小動物獣医学会および日本獣医公衆衛生学会の事業について,構成獣医師のニーズに合った学会活動を積極的に展開するとともに,平成13年度学会年次大会を平成14年2月9日から11日までの間,広島市で開催する. |
(2) |
三学会機関誌(日本獣医師会雑誌の学術誌部分)の発行については,学会誌編集委員会における投稿論文の審査を円滑に実施するとともに,国内外の学術動向に見合った総説等を掲載する等により学会会員等に対する学術関係情報の提供に努める. |
(3) |
獣医学術奨励賞については,引き続き産業界の協力を得て,平成12年度と同様に小動物,産業動物および獣医公衆衛生の三部門について,それぞれ学術賞,奨励賞および功労賞を授与して学会会員の学術研究活動を奨励するとともに,本賞のあり方について見直す. |
(4) |
獣医師生涯研修事業に関連して,三学会のあり方(地区学会のあり方を含む.)について検討する. |
(5) |
三学会と日本学術会議ならびに(社)日本獣医学会との連携を図りながら獣医学術活動の発展に努める. |
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3.獣医学教育の充実に関する事項:
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(1) |
学術・教育・研究委員会において,わが国の獣医学教育のあり方,理念について,国立大学獣医学科の再編整備問題の動向等を見ながら必要に応じて検討を行う. |
(2) |
平成9年度から3年間にわたり実施した新疾病等防疫体制強化事業の一つである「獣医師研修指針策定事業」における検討結果を踏まえ,卒後臨床研修制度について委員会を設置して検討する. |
(3) |
上記「獣医師研修指針策定事業」に関連して,専門医制度について委員会を設置して検討する. |
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4.獣医師の研修に関する事項:
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(1) |
前年度から試行をはじめた獣医師生涯研修事業の円滑な推進を図る. |
(2) |
次項「獣医事の向上に関する事項」中,監視伝染病等防疫体制支援事業の一環として,(2)の[3]および[4]の研修事業を実施する. |
(3) |
放射線被曝防護技術研修〔(社)全国家畜畜産物衛生指導協会委託事業,平成12年度および13年度の2カ年事業〕を前年度に引き続き各地区で開催して,診療業務に従事する獣医師に対して国際放射線防護委員会の1990年勧告に基づく新基準に関する必要な知識・技術等の研修を行う. |
(4) |
産業動物講習会,小動物講習会,公衆衛生講習会を例年どおり地区ごとに開催する(1地区当たり3つの講習会のうち2つを開催する). |
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5.獣医事の向上に関する事項:
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(1) |
平成13年度は,家畜伝染病予防法施行50周年に当ることから,12月4日に記念式典を開催し,家畜伝染病予防の重要性について啓発するとともに,これまで家畜衛生の発展,向上に功労のあった自治体職員ならびに獣医師会会員等の表彰(農林水産大臣および生産局長感謝状の授与)を行う.
なお,本事業の実施については,日本獣医師会を含む家畜衛生関係7団体で構成する実行委員会を設置して対応する. |
(2) |
(財)全国競馬・畜産振興会の特別振興資金畜産振興事業として,監視伝染病等防疫体制支援事業(平成12年度から14年度までの3カ年事業で,[1]家畜疾病総合情報システム開発検討事業および[2]監視伝染病早期発見対策推進事業の二事業からなる)を実施する.この内容は,次のとおりである(それぞれ検討会を設置して対応).
《家畜疾病総合情報システム開発検討事業》
[1] |
家畜疾病総合情報システム検討事業〜監視伝染病の早期発見や初動防疫の対応や診断に必要な海外の家畜伝染性疾病に関する総合的な情報を収集し,畜産や診療現場で簡便かつ迅速に活用できる家畜疾病総合情報システムについて体系的に検討,整理する(平成12年度は牛について実施.平成13年度は豚,いのしし,家きんおよびみつばちについて実施). |
[2] |
家畜疾病総合情報システム製作事業〜上記[1]に基づき策定した家畜疾病総合情報システムをCD-ROMソフト(馬および豚編)および畜産農家用インターネットコンテンツとして制作のうえ,その現場への普及,定着を図る〔本事業については,(社)日本農村情報システム協会に委託して実施する〕. |
[3] |
家畜疾病総合情報システム普及推進事業〜上記[1]および[2]に基づき,診断指針(解説書)を作成し,CD-ROMを活用した情報システム実地研修を47都道府県で開催する. |
《監視伝染病早期発見対策推進事業》
[4] |
保健衛生指導推進事業〜監視伝染病の早期発見や初動防疫の的確を期すため,診療獣医師が家畜飼養者を指導するうえで必要なノウハウを保健衛生指導マニュアルとしてとりまとめ,全国9地区で同マニュアルを使用して実地研修会を開催する. |
[5] |
疫学分析手法開発・普及事業〜事前対応型の監視伝染病防疫対策に必要な疫学的分析手法を策定し,これをCD-ROMとして製作のうえ,診療獣医師に配布する. |
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(3) |
(社)中央畜産会委託事業「小動物保健衛生情報作成事業」を前年度に引き続き実施するものとし,全国の家畜保健衛生所から寄せられた小動物疾病発生状況調査の集計を行って「小動物保健衛生情報」としてとりまとめ,獣医師に情報提供を行う.
また,(社)中央畜産会委託事業「動物由来感染症監視体制整備事業」についても,引き続き実施するものとし,本年度においては平成12年度における学校飼育動物に関する調査結果を踏まえて「保健衛生指導マニュアル」を作成する. |
(4) |
産業動物委員会において[1]産業動物医療体制のあり方および[2]家畜保健衛生所の今後の機能・あり方について前年度に引き続き検討する. |
(5) |
小動物委員会において[1]小動物診療の適正化(診療指針の策定等)および[2]小動物医療体制の構築(AHT制度等を含む.)について検討する. |
(6) |
公衆衛生委員会において本会と日本医師会との共催による人畜共通感染症等に関する講習会の開催,アニマル・アシステッド・セラピー(AAT)の支援等,日本医師会との情報交換,連携を図る方策について前年度に引き続き検討する. |
(7) |
野生動物対策委員会において野生動物保護等に関する日本獣医師会としての基本的な考え方,具体的な対策について検討する. |
(8) |
将来を見据えた獣医師の需給等に関する問題について,獣医師会,大学関係者等の有識者で構成する委員会を設置して検討をはじめる. |
(9) |
動物登録事業に関し,登録事務の管理・運営を動物愛護団体に移管することについて具体的な対応を図るとともに,福岡県獣医師会における実施状況等を見ながら今後の推進策について動物登録事業運営委員会等で引き続き検討する. |
(10) |
動物の愛護および管理に関する法律に基づく今後の対応等に閲し,動物愛護・福祉関係事業体制の構築を目指し,委員会を設置して検討する. |
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6.獣医学術および獣医事の国際交流に関する事項:
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(1) |
国際獣医師育成研修事業については,平成13年度は第9期生(研修生の総数は,18人)を迎え,研修委託先大学(5大学)において引き続き実施する. |
(2) |
前年度に引き続き,世界獣医学協会(WVA),アジア獣医師会連合(FAVA)と緊密に連携しながら獣医学術および獣医事関係情報の収集,交換に努める. |
(3) |
その他諸外国獣医師会等の関係者と交流して情報交換を図る. |
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7.獣医事関係の情報の提供に関する事項:
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(1) |
獣医師の活動および獣医師会の事業等については,マスコミを含め,一般社会の認識,理解が十分に得られているとは言いがたいことから,従来設置していた情報高度化検討委員会を発展的に解消し,平成13年度から新たに「広報委員会」を常設し,インターネットを活用した日本獣医師会のホームページの充実を含め,社会への発信活動について個別,具体的に検討のうえ,積極的な対応を図る. |
(2) |
日本獣医師会雑誌(会報部分)については,最新の獣医事関係情報および海外家畜衛生情報等を掲載するとともに,広く読者に本誌への投稿を呼びかけて親しみやすい誌面作りに努め,毎月発行する. |
(3) |
関係省庁の通達,獣医事関係情報等を地方獣医師会を通じて構成獣医師に速やかに提供する. |
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8.獣医学術関係書籍等の発行に関する事項:
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日本獣医師会で作成し,発行している獣医学術関係書籍等について,例年どおり構成獣医師等に頒布する.
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9.獣医師の福祉のための共済に関する事項:
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(1) |
構成獣医師の福祉の一層の充実,向上を図るため,平成13年度から発足させた獣医師総合福祉生命共済事業について,加入率50パーセントを目標として,引き続き地方獣医師会との連携,協力を密にしてその加入推進を図る. |
(2) |
獣医師総合福祉生命共済制度以外の獣医師福祉共済事業(医療保障保険,所得補償保険,獣医師賠償責任保険および獣医師年金保険)については,前年度に引き続き事業を円滑に推進する. |
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10.その他の事項:
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(1) |
日本獣医師会の事務室は,昭和53年に竣工した新青山ビルに入居以来,ほとんど当時のまま23年経過しているが,昨年10月から職員各自の事務机にパソコンを設置し,LANを敷設して事務の合理化,効率化を積極的に推進しているところである.
しかしながら,消防署の立ち入り検査においてパソコン等を含む電気のいわゆる蛸足配線が指摘され,防災上,その改善が求められている
このため,役員室を含む事務室全体の床面を5cmかさ上げし,その下に電気および電話の配線工事を実施するとともに,役員室を含む事務室全体の改修工事をあわせて行う. |
(2) |
獣医師生涯研修事業のポイント制度,構成獣医師の異動処理事務および獣医師福祉共済制度の加入推進に関連させて,獣医師会会員証(磁気カード式,顔写真印刷,獣医師免許登録番号,氏名,生年月日,所属獣医師会等を記載)を作成し,構成獣医師全員に配布する. |
(3) |
本会の重要な収入源である収益事業(不動産貸付)を引き続き適正に運営,実施する. |
(4) |
上記1〜9に掲げた事項以外の事項で緊急に対応する必要が生じた事項等については,理事会の承認を受けて別途実施する. |
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