紹  介

 ドイツ,フランスおよびイギリスにおける野生動物研究と保護施設
(研修と視察報告)

河内咲夫(松江市 開業)


 2000年を記念してフランス・コルシカで予定された第1回野生動物救護国際シンポジウムに出席案内を受けていたが,1年延期されたために2000年10月ヨーロッパ主要国の保護施設の視察と研究所での研修を目的に訪問したので報告する.


 ドイツ国立動物学野生動物研究所研修

 当所ではDr. KroneをはじめDr. 2名から飼い鳥,野鳥の研究について特に鳥で難しい雌雄鑑別 にPCR法(遺伝子増幅)・野生動物のエコー診断(象,サイ,クマ,ペンギン等生殖判定等)・新開発のファイバースコープによる鳥の雌雄鑑別 と腹腔内検査,また哺乳動物の腹腔内検査等次々と新しい研究業績を見聞できた. Dr. Kroneの研究室では疾病鑑定を専門に行っている.年間120件前後が持ち込まれ,国外からも野鳥と飼い鳥の寄生虫,細菌,ウイルスの感染症のほか,広範囲の死因の検査等依頼があり実施していた.国際的に共同研究をしているものもあり,持ち込まれ剥製となっているオオワシのほかタカ類の病因についても解説があった.
 Dr. Petoritukuの研究室.私が昨年ウイーンの獣医科大学を訪問した時にドイツ製の雌雄鑑別 器に初めて接した折の説明では,専用ピペットで鳥の肛門から総排泄腔の内容物を吸引し,試薬を混合して検査器を通 すとモニターに性別の判定が出ると解説を受けた話をしたところ,Dr. Petoritukuはそれはもう古い,この研究室では鳥の羽を一本抜いてもらえば検体として充分でPCR法によって鑑別 している,との説明があった.日本から鳥の羽を送られたら雌雄の判定をすぐに回答すると話された.ただし検査料はドイツMARKで2,000(約10万円)と聞き安易に送れないと思えた.
 

PCR法の説明を聞く
(写真左からSchillr女史(通訳),筆者,Dr. Petorituku).

 Dr. Frank Goritzの研究室.ここでは全動物の性別 検査を新しく開発したファイバースコープによって行っていた.鳥の直腸から腹腔内を撮影して卵巣と睾丸,副睾丸,膵臓まで鮮明に識別 できていた.また,超音波診断装置(エコー)による性別判定を始め,中国からの依頼でパンダの人工授精の画像,象やほかの動物まで広範囲に技術を試みられていた.(画像による)

ファイバースコープで撮影した鳥のオスの精巣.