「獣医師の職場」(その97)

東京大学医科学研究所実験動物研究施設

【名 称】
  東京大学医科学研究所実験動物研究施設
【所在地】
  〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1
TEL 03-5449-5497 FAX 03-5449-5379
【目的・沿革】
   実験動物研究施設は獣医学研究部実験動物繁殖室と動物管理室を母体として1965年に発足した.これ以後,全国の国立大学医学部に動物実験施設が設置され,本研究施設はその第一号にあたる.1970年に国立大学で最初の本格的実験動物研究棟として動物センターが建設された.1979年に国立大学動物実験施設に最初の教授ポストが認められ,初代の専任教授として山内一也教授を迎えた.それに伴いこれまでの実験動物の開発,生産供給,飼育といった研究支援業務に加え,研究部として実験動物学を背景とした自由な基礎医科学研究が開始された.その後,実験動物学に革命的な変化をもたらした発生工学の技術を取り入れ,遺伝子操作動物の作出と解析や維持系統の受精卵凍結等が岩倉洋一郎教授,勝木元也教授のもとで行われた.1999年10月より,甲斐知恵子教授が東京大学農学部から本研究施設教授として異動になり,ウイルス感染症の病原性発現機構を中心とした研究を開始し,現在に至っている.2000年4月から施設長を兼任し,動物センターの運営も行っている.
【組 織】
   本施設の構成は施設長(教授)の下,研究部門に講師(1名),助手(2名),技官(1名),補佐員(5名)で,動物センターには技官(7名),補佐員(3名)である.施設長,講師,助手の1名(計3名)が獣医師である.大学院生・研究生・学部学生14名が研究部門に所属し,うち獣医師は4名,獣医学科学生が4名である.
【施 設】
  実験動物センター(地下1階,地上5階,延面積3,808m2)がある.これとは別 に研究部門は2号館2階東側に275m2の研究室がある.
【業務内容】
   医科学研究所で動物飼育や動物実験を行うすべての研究者を対象として,実験動物学や実験動物技術に関する教育・講習や研究指導を行う.また,実際の動物実験に際し,動物福祉に十分配慮し,科学的で洗練された手法で行われるように獣医師として適切な助言をする. 動物センターは研究者や学生への研究支援を行う共同利用研究施設として位置付けられており,獣医師(施設長および教官)が責任者・指導者として他の職員とともに施設の管理・運営に携わる.動物センター内ではマウス・ラット,ウサギの飼育管理が行われ,ほぼすべてがSPFで維持されている.マウス・ラットは年間延べ7万匹が飼育管理されている.また,感染実験や化学発癌実験,腫瘍移植実験等の管理・運営を行う.その他に,受精卵・配偶子の凍結保存などの系統維持を行っている.
  研究部門では,教官は所属学生に対して,獣医学教育を行うとともに,獣医学・実験動物学のみならず広く医学・生物学・農学に関連した基礎的研究を推進し,基礎医学・生物学の研究者の育成を行っている.
【特 色】
  当研究施設の教官は東京大学大学院の教官であることから,大学院の研究室運営による学生の教育と自由な研究の推進を主要な職務としている.それとともに獣医学の知識を背景として実験動物施設の管理業務にも携わっており,獣医学的および実験動物学的な見地から実験動物を適切に飼育・管理し適切な動物実験が遂行されるよう運営している.ここ10年余りで実験動物および動物研究施設を取り巻く環境は大きく様変わりし,数多くの遺伝子操作動物が生み出され多種多様な実験方法が行われるようになった.当動物センターもこうした動物の飼育・実験により適したスペースを提供するために1998年全面 改修された. 研究部門の現在の主要研究テーマはモービリウイルス感染症である.特にイヌジステンパーウイルス(CDV)については世界で初めて組換えウイルスの作出に成功して基礎ウイルス学の先端的研究を行っており,さらに多価ワクチンやウイルスベクターの開発などの応用研究を行っている.また,牛疫ウイルス(RPV)の研究ではウシでの感染症状にきわめて近いウサギ感染実験モデル系を確立し,先端的なウイルス学の手法を駆使して種特異性決定機構や病原性発現機構の解明等を進めている.