行政・獣医事

環境省における動物愛護管理行政について
柴垣泰介

 今般の省庁再編に伴い,動物の愛護及び管理に関する法律は平成13年1月6日に環境省が発足することに伴い,その所管が総理府から同省に移されることとなった.環境省設置法(平成11年7月16日法律第101号)においては第4条(所掌事務)第17号で「人の飼養に係る動物の愛護並びに当該動物による人の生命,身体及び財産に係る侵害の防止に関すること」が規定されている.環境省においては,環境省組織令(平成12年6月7日政令256号)に基づき自然環境局総務課がこの法律の所管課として,法令の施行をはじめとする動物愛護管理行政を担っていくことになっている.
  この動物の愛護及び管理に関する法律(以下「改正動管法」という.)は,動物の保護及び管理に関する法律(旧動管法)が,平成11年12月に行われた一部改正により名称等が改められたもので,政省令の制定等の準備作業を終えて,平成12年12月1日から施行されている. この改正動愛法の制定に向けた検討作業は,平成10年の1月に自由民主党政務調査会の環境部会に「動物の愛護と管理に関する小委員会」が設置されたことで開始され,(社)日本獣医師会を含め,関係者からの7回にわたるヒアリングを行った上で進められた.
  この動きと並行して,中央省庁等改革推進本部事務局においては,動物愛護管理行政の環境省への移管も含めた省庁再編の詰めが行われていた.このような自由民主党と政府の方向に関し,(社)日本獣医師会は平成11年2月,獣医師問題議員連盟等に対し,地方自治体における環境衛生主管課の獣医師職員の業務の実態を踏まえ,国においても狂犬病予防業務と動物保護管理業務が一元的に所管されるようにして欲しい旨の要望を行い,あわせて自由民主党の行政改革推進本部等へも同様の要請を行った.また,(社)日本獣医師会は,平成10年7月に設置した「動物福祉の増進に関する検討会」の検討結果 を同年12月に報告書としてとりまとめ,これを基にした「我が国の動物福祉法制のあり方」に関する要請書を,平成11年1月に自由民主党環境部会・動物の愛護と管理に関する小委員会に提出した.
  これらの働きかけに対し,動物の愛護と管理に関する小委員会においては,要請書の趣旨をできるかぎり尊重した方向で動管法の改正案づくりが進められるとともに,同法の所管は省庁再編後の環境省とすることが適当である旨再確認された.また,中央省庁等改革推進本部事務局においても,諸般の事情により省庁再編後の環境省に同法を移管する方針を変えることはできないとの立場であった.これらのことから,環境庁は(社)日本獣医師会と話し合いを行った結果 ,平成11年6月14日,(社)日本獣医師会会長から環境庁長官に対し,環境省として獣医師職員の配置を含め,動物保護管理行政における組織定員および予算措置の面 で万全を期して欲しい旨の要請書が手渡されたことにより,この問題の決着が図られた.
  改正動管法の小委員会案は同年6月16日に環境部会の了承を得て,7月末には自由民主党の党内手続きを終え,全会一致を目指した各党との協議,調整が進められた.その結果 ,12月の臨時国会の会期末に至り原案に一部修正が加えられた上で全会一致で改正動管法(新動愛法)の制定を見た.
 環境庁としては,動物保護管理行政の環境省への移管に伴う総理府からの定員移管が1名であることから,前記の(社)日本獣医師会の要請も踏まえ,総務庁に対して2名増の定員要求を行ったところ,年末に至り新動愛法の制定もあって平成13年1月の環境省発足時に1名増が認められた.さらに,平成13年度の動物愛護管理担当の定員について,さらに1名増を要求しているところである.
  新動愛法では,ペットショップや動物園など動物取扱業者に対する全国一律の規制措置が盛り込まれ,また,飼い主責任の強化にあわせてその適切な確保のため民間の有識者を活用していく動物愛護推進員とその委嘱の推進および活動の支援のための協議会の制度も新設された.これらを含め新動愛法を適切に施行,運用していくための業務を環境省として積極的に担っていくため,前記定員要求とともに,平成13年度予算において新たに動物愛護の推進のためのモデル協議会活動推進事業およびペット動物流通 販売実態調査を行うための経費を要求している.また,これら定員および予算要求の結果 を踏まえ,環境省自然環境局総務課に訓令により動物愛護管理室等を設置することも検討し,総理府管理室からの行政の適切な移管に万全を期すこととしているところである.

(平成12年11月末現在)