「獣 医 師 の 職 場」(その91)

宮崎県農業共済組合連合会 家畜臨床研修センター

【名 称】宮崎県農業共済組合連合会 家畜臨床研修センター
【所在地】 〒889-1406 宮崎県児湯郡新富町新田 18802-3
TEL 0983-35-1116 FAX 0983-35-1137
【沿 革】
 昭和35年(1960),県下診療獣医師の技術研修と臨床検査を重点実施することを目的として,宮崎県家畜衛生試験場(宮崎市御舟町)内の一室を借用し家畜臨床研究所として発足した.同年,連合会(宮崎市高千穂通)内に移設し,国庫補助により器具器材を取り揃え実質的な活動を開始した.昭和49年(1974),会館新築にあたり生化学・細菌検査施設等を整備し本格的に稼動しはじめた.昭和58年,畜産情勢の多様化に対処できる診療技術研修や効率的な損害防止を実施するため,現在地(児湯郡新富町)にて,家畜臨床研修センターとして再スタートし,平成6年機構改革により部署名をリスク管理指導センターとした.
【組 織】
  職員は所長以下獣医師6人,臨床検査技師1人,庶務1人の計8人である.県下4 NOSAIに設置された24診療所,92名の獣医師と連携をとりながらリスクマネージメント(RM)の拠点として活動している.
【施 設】
 県中央の畜産・畑作複合経営地帯に位置し,敷地面積約13,300m2に鉄筋コンクリート平屋建て,延床面積は1,312m2(宿舎棟を含む)である.研修室,生化学室,細菌室等があり,高度臨床検査器具等を活用し迅速な検査の実施と疾病対策によって生産性向上に努力している.
【業務内容】
 家畜のRM指導の強化を目的として,各種の研修会や臨床現場でのRM活動を実施している.家畜診療における診断および治療技術の向上やRMによる事故低減を目的とした診療獣医師講習会
 これらの活動状況・実績については当センターの診療機関誌「大草原」として毎年とりまとめ19号を発刊している.
○養豚農家コンサルティング
 特に大規模集約化が進む養豚では,各種感染症が短期間に突発的に発症することから,定期的なモニタリングを実施しその予防あるいは初期対応によって最小限の被害に留めるよう巡回指導している.感染症対策(抗体検査,細菌検査),ワクチネーションおよび繁殖管理まで総合的なコンサルティングをモットーに実施中.本県独自のNOSAIDOCK(有料管理システム)として現在,種豚20,000頭,肉豚295,000頭を対象に実施している.
○肉用牛リスクマネージメント
 肉用牛の生産性向上を目的として,主として血液プロファイルテストと超音波肉質診断機を駆使し,データを用いた科学的なアプローチを行っている.肥育期間が長く,さまざまな飼養形態をとり,農家間,地域間格差の大きい肥育技術についてのマネージメントは大変根気のいる業務となっている.これらの各種アプローチ法,成果,問題点等は県下NOSAI獣医師で組織する肉用牛研究会等で積極的に情報交換し,県下の農家指導に活用している.
【特 色】
 宮崎県は日本有数の食糧供給基地として,畜産,施設園芸の盛んな地域である.特に,畜産は農業粗生産額の52%,1,700億円を占め,文字どおり本県農業の基軸をなしている.NOSAI加入頭数は肉用牛190,000頭(加入率約85%)[繁殖牛(子牛を含む)138,000頭,肥育牛52,000頭],養豚315,000頭(同率26%)[種豚20,000頭,肉豚295,000頭]である.不慮の事故・疾病に対しては共済で補償しながら,生産現場での諸問題をRMという視点でとらえ,農家の良きアドバイザーとしてそれらの解決に当たっている.
 国内外との産地間競争がますます激化する中,牛では年間約33,000頭を出荷する「宮崎牛」ブランド確立,豚では同130万頭出荷される豚肉のおいしさ・安全性確保のため,生産現場を預る獣医師(NOSAI)への期待と責任はますます大きくなっている.
 (1)農場の高生産性状況をモニターする「メンテナンス」,(2)飼養管理方法の変更による生産性への効果をみる「チャレンジャー」,(3)突発事故または生産性低下時の対策を助言する「トラブルシューター」など農家ニーズにあったNOSAIDOCKの内容充実が要求されている.情報過多の時代にあって,臨床現場のコーディネーターとして農家の信頼を得て盤石なRM体制づくりに邁進中である.