「獣 医 師 の 職 場」(その89)

兵庫県農業共済組合連合会家畜臨床総合研修所

【名 称】兵庫県農業共済組合連合会家畜臨床総合研修所
【所在地】〒651-2272 神戸市西区狩場台3-9-18
      TEL 078-991-4531 FAX 078-991-9352
【沿 革】
  昭和46年に連合会新任獣医師職員研修を主たる目的とした家畜臨床研修所を,県北東部の丹波家畜診療所(氷上郡柏原町)に併設し,50年には診療所整備計画に基づき丹波基幹家畜診療所を新築して研修機能の充実を図った.62年には畜産諸情勢の多様化に伴い,基幹家畜診療所職員の技術研修および調査研究の指導,損害防止等に関する事項を行うために,県中央部に位置する神戸市西区狩場台に家畜臨床総合研修所を新設し旧研修所業務を移行した.
【組 織】
  当研修所は現在,所長以下3名の獣医師で構成している.新任獣医師の研修期間(6カ月)は研修所付けとし,併設の阪神基幹家畜診療所とともに臨床研修を行う.機構的には県下の6基幹家畜診療所を所管している.
【施 設】
  敷地面積約2,000m2に鉄筋コンクリート2階建て,宿泊棟を含む延べ床面積は約1,254m2で,診断実習室,生化学室,病理室,細菌室,図書資料室,研修講義室,事務室等があり,高度医療器具機械を活用して多様化する疾病の発生態様の分析に当っている.
【業務内容】
  1.診療技術に関する研修
  (1)グループ研修会 家畜診療における診断および治療技術の向上ならびに事故の未然防止等の推進・普及を図るとともに家畜診療所相互の連携を円滑にすることを目的に,診療所長を除く全職員は自主的に6つのグループのいずれかに所属する.研修会は年間3回程度開催し,研修成果をとりまとめて報告するものである.
  (2)新規獣医師臨床研修(6カ月) 本会や関係団体が採用した新規臨床獣医師の基礎研修であり,臨床研修,保険業務,診療所業務,損害防止に関する実践的な研修を行う.また,家畜保健衛生所や食肉衛生検査所をはじめ,畜産関係機関の協力を得て関連する各方面の業務内容の理解を図っている.
  (3)その他の研修(学生実習) 全国の獣医大学の学生にNOSAI家畜診療所業務の実態を知らしめるとともに,大動物診療に係る技術研修を目的に全国農業共済協会から夏期臨床実習生を組織的に受け入れているもので,毎年5〜10名が宿泊または通学受講している.
  2.各種講習会・研究会・編集会等への参加
  県内外の講習会・研究発表会・会議等に参加して,その内容をグループ研修会等で復命することにより,本会の職員に普及啓発を行っている.また,毎年行われる「近畿獣医畜産技術交流会」の事務局として,近畿地区のノーサイ団体や関連機関との連繋に努めている.
  3.家畜診療技術者研究発表会
  毎年2月11日(祭)連合会獣医師職員全員(65名),OBならびに畜産関係団体獣医師等約115名の参加のもと「家畜診療技術者研究発表会」を開催している.この発表会は診療所業務の一環として行うもので,すでに開催も33回を数え,歴史もあり,他団体からの高い評価を受けている.演題は各診療所ごとに2〜3題とし,損害防止や診療技術に関する調査や研究成果を取りまとめた内容となっている. 4.事業の策定および調査・指導
  家畜の損害防止事業の策定,家畜診療技術の調査・研究,普及,畜産コンサルタント,家畜診療検診車の運行等,また,講師や審査委員として各種講習会・研修会に出席している.
【特 色】
  当研修所では平成6年から死廃事故低減体制整備緊急対策事業で,血液検査機器やコンピュータを搭載して畜産農家の庭先で牛群の健康検査を短時間で実施するための耐震・空調設備を装備した専用の移動検診車を導入して,県下畜産農家を巡回している.検診内容は,代謝プロファイルテスト,ボディコンディションの評価,飼料計算を行い,これらの結果を総合判断して,各牛群のかかえる問題点を分析し,改善,指導を行なう.改善対策の立案にあたっては地域の畜産関係機関(家畜保健衛生所,普及センター,JA等)と連繋を密にし指導の一本化を図っている.現在,わが国の畜産環境は多様化し,対策についても多面性が要求されている.おのおのの牛群の問題点を明らかにすることによって効果的な損害防止対策が導かれると思われ,検診車の運行はその基盤となっている.