![]() やや時季はずれではあるが,干支に関する話を少々. 今年は辰年,新年会では何処でも,景気低迷の昨今何が何でも上り竜にあやかろうとする話ばかりであった.辰は竜,十二支の中でもただ一つ空想上の動物である.巨大な爬虫類で,胴体は蛇に似ているが空を飛ぶことができる.不思議なことにこの空想上の動物は洋の東西を問わず存在する.どうやら起源はメソポタミアあたりらしい.ただ面白いのは,インドから西では悪の体現であり,中国から東では聖なる動物で神に近い.中日ドラゴンズの竜はどちらの竜(ドラゴン)であろうか.西洋の神話・伝説では,ヘラクレスやジークフリートに代表されるように,火を吐く竜と戦ってこれを滅ぼす英雄の話が多い.もっとも日本にだってヤマタの大蛇の話はある. 竜と名が付けば誰でも竜宮城を連想する.その竜宮は竜神の住所であって,乙姫様の住居ではない.竜宮と聞くとどうも浦島太郎の印象が強く,どこか南方(だって,乙姫様はヴェトナムのアオザイ様の衣装を纏ってるではないか)の海の底にあるものだとばかり思っていたが,調べてみると,北は青森から南は沖縄まで実に広く分布している.多くは洞窟,湖沼や海の底にあり,たいていは竜宮淵で地上につながっている.山岳宗教で名高い戸隠山には九頭竜権現が祀(まつ)られているが,この社は竜の住居ではないらしい. ところで筆者の年代の多くは還暦を迎えており,一番近い年男(年女も然り)どもは赤いちゃんちゃんこ組である.その還暦,何故還暦が60年であるかご存知であろうか? たいていの人は,十二支十干の組み合わせで,60年経つと一回りするからだとおっしゃる.しかし,12と10の組み合わせでは120通りあるはずではないか.この疑問を抱いたのは,高校生のころ順列組み合わせを習った時である.実際に組み合わせを並べてみると確かに60で一巡する.どうしても組み合わせができない組があるからだ.これは面白いと思った.当たり前といえば当たり前だが. お気づきの方も多いと思うが,本欄の末尾には干支の記号が付してある.本来気楽かつ勝手気ままに書いてもらうエッセイ欄として,匿名にしてあるのだが,あまりにも無責任なことを書かれては困るので,一応著者の生年の干支を付して,責任の在処を残してある.したがって,話の内容,文体そして干支から判断すれば,著者は誰か類推できないこともない.まあしかし,よけいな詮索はしていただきたくない.(子) |