年頭ご挨拶
社団法人 日本獣医師会

会長 五十嵐 幸 男

 2000年の新春おめでとうございます.会員の皆様には希望にみちた輝かしい新年を迎えられたこととお慶び申し上げます.今年は辰(龍)の年であり,「麟鳳亀龍之を四霊と謂う」との言葉もあり龍は瑞兆とされています.
  一方で変化の激しいことを「龍化虎変」と表現し,「竜頭蛇尾」は当初の勢にも似ないで終わりに元気を失うことであり,日本の世情もそろそろ瑞兆を見せてほしいと思い,竜頭蛇尾に終わらぬよう万事に対応したいものと考えるところであります.
  昨年は日の丸,君が代を国旗国歌とする法制化が実現し,一方では年金法案が継続審議となり,また,自自公のあり方に賛否両論がわくなど,話題となりました.
  また,隣国台湾では大地震の発生,国内では東海村の臨界事故や新幹線のコンクリート脱落事故等あってはならない事故が続き,社会不安を与えています.
  このような中で永年にわたり日本獣医師会発展のため偉大な業績を積み重ねてこられた杉山文男先生ご勇退の後を受け,平成11年7月1日新執行部が発足以来早いもので6カ月余りの歳月が過ぎました.新執行部も杉山前会長の栄光ある足跡を尊重しながら,21世紀の獣医界は如何にあるべきかを模索し,変革きわまりない時代に即応する獣医師像の構築に努力中でありますので,会員獣医師各位のご理解とご協力をお願いする次第です.
  第一に,これまで「獣医師の誓い―95年宣言」や「動物医療の基本姿勢」を定め,各地方獣医師会を通じてそれぞれ会員獣医師に対する徹底をお願いして参りましたが,一昨年来過剰診療,獣医療過誤,高額診療料金等小動物獣医療に対する週刊誌やテレビを通じてのマスコミによる批判が展開され,獣医師の信用を失墜させる不祥な事態となりました.そこで第56回通常総会においてインフォームド・コンセントを徹底すること等について記者発表することが重要事項であるとのご決定をいただきました.これを受け,昨年9月14日,動物愛護週間直前に銀座東急ホテルを会場として記者会見を実施いたしました.その後も引続き各地方獣医師会のご理解とご協力により診療施設内に診療料金表やポスターの掲示,動物医療相談窓口の設置等が進められています.すでに医療分野においては,東京都立病院で患者や家族の求めがあればカルテ等の診療情報を原則として開示する方針を発表し,薬剤師も処方の内容を説明する時代を迎えている今日,獣医療のみ閉鎖的であることは許されない時代を迎えていることをご理解いただきたいと考える次第です.