「獣 医 師 の 職 場」(その82)

共立商事(株)つくば中央研究所

【名 称】共立商事(株)つくば中央研究所
【所在地】〒300-1252 茨城県稲敷郡茎崎町高見原2-9-22
      TEL 0298-72-3361 FAX 0298-74-1619
【組 織】
  共立商事(株)は6つの本部(財務,総合企画,研究,開発,営業および物流)で運営されており,役員を除く総従業員数は約270名である.つくば中央研究所は研究本部(研究部),開発本部(開発部,薬事業務部,製剤部および動物管理室)および研究所長直轄部署(試験研究管理室およびつくば総務部)から成り,所属従業員数は約120名である.このうち所長,研究本部長,開発本部長,薬事業務部長,薬事業務次長,品質管理課長,臨床病理室長,特別顧問,顧問,その他研究部3名,開発部2名,薬事業務部1名,製剤部1名,計16名が獣医師であり,当研究所の中心的な役割を担っている.
【施 設】
 つくば中央研究所はつくば研究学園都市という恵まれた環境に位置し,その設立は研究学園都市着工に先んじる昭和43年5月である.研究所の総敷地面積は約10,000坪で,鶏用ワクチンの製造・品質管理を当初の目標として第一製造棟が建築されたのが第一歩である.その後,業務の拡大とともに逐次建物が増設され,現在の主たる施設は,本館,第一製造棟,第二製造棟,製品棟,包装棟,冷蔵棟,検定棟,研究棟,第一実験動物棟,第二実験動物棟,第三実験動物棟,その他の畜舎である.現在,実験動物棟および製造棟の新築計画が進められている.
【目的,沿革,業務内容等】
  共立商事(株)の設立は昭和30年5月で,当初は諸外国の製薬メーカーと業務提携し,小動物のワクチンおよび薬品類の輸入販売会社として出発した.その後,業務は拡大し,現在の取扱製品は自社製品も含め約100品目であり,この間,一貫して動物薬専門メーカーとしての地位を築いてきた.研究所設立への大きな転機は昭和39年のニューカッスル病の大発生である.本疾病による死亡率はきわめて高く,近代化が進められていた日本の養鶏産業は壊滅的な打撃を受けた.当時,国内には不活化ワクチンはあったが,量的に不十分であった.さらに世界の趨勢は生ワクチン使用へと移行していた時期であったので,国内でもニューカッスル病生ワクチンの使用が認められることとなり,当社を含め2社が輸入認可を受けた.このような背景から,ニューカッスル病生ワクチンの輸入検定施設,さらに製造施設として設立されたのがつくば中央研究所の出発点である.当初は製品供給基地として製造,品質管理が主たる業務であったが,その後,人員,施設を拡充し,研究・開発体制の強化が図られた.現在は当社の技術的中核を担う研究所に育ち,各種製剤の研究,開発,薬事業務,製造および品質管理が主たる業務内容になっている.
【特 色】
つくば中央研究所の特色は第一に外国の製薬メーカー,あるいは大学との技術提携,共同研究が盛んなことである.当社は設立当初より諸外国製薬メーカーと業務提携しており,必然的に研究所の業務,また人員は,国際色が豊かである.実際,英国,オランダ,中国からの研究員も在籍している.「日本で使用する製剤は日本で研究開発,製造すべきである.」という国の防疫方針もかつてはあったが,今後の製剤開発には世界の趨勢に目を向けたグローバルな視点が不可欠である.諸外国の最先端の技術を導入しつつ,独自の技術と融合させた応用研究を製剤開発につなげることはきわめて重要なことである.国際色豊かな環境は若い技術者にとって大きな刺激となっている.
  第二の特色は国内の大学,研究機関との共同研究が活発であり,さらに国主導の種々の研究事業への参画も盛んなことである.その範囲は基礎研究から応用研究まで幅広く,これらを通して得られた成果は徐々に実を結びつつある.既存の製剤の改良のみならず,次世代の製剤開発に寄与する気運が高いことも特色の一つである.
  第三の特色は基礎研究と応用研究が分割されていることである.研究部で遺伝子組換え技術を駆使した次世代製剤の基礎研究が進められ,開発部および製剤部で製剤化,あるいは製剤改良の応用研究がなされている.現在の学界は専門分野が細分化されているが,学問の多様性に対応するために,当研究所でも業務の細分化を進めている.一般には研究開発は一括して語られることが多い.しかし,基礎研究と応用研究を分割し,それぞれの特色を生かした製剤開発を進めることは,当研究所の未来を担う大きな潮流になるものと確信している.